2016年7月18日:シリアのアレッポ県では、シリア人権監視団によると、西クルディスタン移行期民政局人民防衛部隊主導のシリア民主軍SDFが包囲するマンビジュ市内西部および北部で、シリア民主軍とIS:イスラム国の戦闘が続き、シリア民主軍の戦闘員9人が死亡した。またマンビジュ市郊外に位置するカルドゥーシャーナ村、ハムダーナート村では、ISがシリア民主軍の拠点に対する自爆攻撃を行い、戦闘員50人あまりが死亡した。一方、米軍主導の有志連合は、トルコでのクーデタ未遂事件により一時使用が中止されていたインジルリク空軍基地(Incirlik AirBase)からシリア領内のIS拠点に対する空爆を再開し、マンビジュ市一帯などで空爆を実施し、民間人21人が巻き添えなり死亡した。
トルコでクーデターが起きた際、トルコ当局は、米軍も使用するインジルリク空軍基地へのアクセスを遮断し、電源を断った。その後、基地の敷地内で、トルコ軍の空軍基地責任者ベクィル・エルジャン・ヴァン将軍(General Bekir Ercan Van;左の右)と9人の軍人が逮捕されたことが明らかとなったとロシア側が報じている。クーデターでの空爆を警戒してのことだろう。すでに、トルコ空軍前総司令官ex-commander of the Turkish Air Forceオズトゥルク将軍(Akin Ozturk:上の左)がクーデター企てで罪を認めたと報道されている。
またロシア紙は、この基地にはNato軍や米軍の核兵器も貯蔵されていると書いていて、このことが、トルコ側が基地の電源を切って、一時的に基地を機能不全にし、物の移動を防ぐための処置だったとも説明されている。 参照記事 参照記事 英文記事 過去ブログ:2016年7月追記:トルコで軍の一部がクーデター失敗
クルド主導でマンビジュManbij( Menbej)開放が言われて約1ヶ月後の今も、ISとの戦闘が市内や周辺地域で継続されているようだ。クルド側は、イラクからシリア西部をつなぐクルディスタン国家創設を目指しており、クルド系メディアの2016年1月の、上の右の地図で緑色部分が、現在大体のクルド人支配地域となっている(クルド側の地図なので誇張はある)。マンビジュは赤い丸の位置で、トルコが主張するセーフゾーン地域に位置しているが、クルドがその主張を容認するはずも無く、この地域をクルドが制圧すれば、トルコと新たな紛争の種になる可能性がある。クルドの未来図から、この地域のIS制圧にシリア政府軍が積極介入することをクルドは望まず、スンニ派系シリア民主軍がクルド支援体制で戦闘を継続し、米国も空爆支援している。空爆では、多くの市民が犠牲(56人とも)になっていると監視団体が指摘しているが、ISが、市民を盾にしているともいわれる。米主導のフランスなど有志連合は7月15~18日までの4日間でISが籠城するマンビジュ市一帯を45回空爆したと発表している。参照記事 参照記事 参照記事 過去ブログ:2016年6月シリア軍ラッカ奪還で苦戦 シリア民主軍マンビジュを制圧 シリア軍、ラッカへビラで最後通告
2016年7月19日:シリア北部で激戦が続き、市が長いこと東西に分断されたアレッポAleppoでは、シリア人権監視団によると、図の赤い矢印の方向へシリア軍がパレスチナ人の民兵組織*クドス旅団などとともに進撃し、アレッポ市北部の、市の東側反政府組織(IS、シャームの民のヌスラ戦線、アレッポ・ファトフ軍などイスラム系)の唯一の生命線(Life line、兵站路)であるカースティールー街道(赤い線で表示:Castello Road)を完全制圧し、シリア軍が同地の支配とアレッポ市東部の反体制武装集団支配地域へ
の包囲を強化する勢いだと2016年7月19日報じられている。この結果、東部に孤立する住民約30万人に、餓死や飢餓の恐れがあると言われている。アレッポ北部のシェイフ・マグスド(Sheikh Maqsood)クルド人地区:地図の黄色 には、ISなど反政府組織と敵対するクルド軍(YPG)が居て、反政府組織攻撃には、シリア軍と共闘している。反政府側地域には、米国主導の有志国軍、さらにシリアの広範囲に継続してシリア、ロシアによる無差別的空爆が行われ、多くの住民が犠牲になっていることが国際問題化しているが、最近ロシア、欧米諸国はそのことを非難しなくなってきた。早い時期の紛争終結には、犠牲は已む無しとしているのか?シリア国内の戦況から明らかなのは、米国がクルドPYDと連携してISとの「テロとの戦い」を、ロシアがシリア政府と連携して「反体制派」への「テロとの戦い」をそれぞれ強化したことであるとされる。 参照英文記事 参照記事 *シリア国内のパレスチナ人により構成される民兵組織、本拠地はアレッポ:Liwa al-Quds、または Jerusalem Brigade 主にシリアの難民キャンプにいたスンニ派パレスチナ人により2013年結成。シーア派イランの特殊部隊「クドス 部隊:Quds Force」とは無関係。
アレッポ市北部でシリア軍、クドス旅団と戦闘中の穏健派反政府組織ヌールッディーン・ザンキー運動Nurredin Zinki rebel group の兵士が、まだ少年(
記事によっては10歳から12歳)のパレスチナ人の子供を クドス旅団Al-Quds Brigades兵士だとして斬首処刑する映像が流されたと7月19日報道された。穏健派反政府組織へは欧米諸国が支援している。クドス旅団は、少年は兵士ではないとしている。参照記事 参照記事 参照記事と映像