シリアとトルコの国境近くでロシア軍のSu-24が撃墜された。 ロシア側はシリア領空を飛行中、地上からの攻撃で撃ち落とされた可能性が高いと発表、トルコ側は領空を侵犯した「国籍不明機」をF-16が警告した上で撃 墜したと主張している。現段階ではSu-24がどの地点を飛行していたか明確でないが、ロシア側は記録が残っているとしている。
本ブログでは何度も書いているが、現在、ロシア軍の空爆で壊滅的な打撃を受けているIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)と最も密接な 関係にあるのはトルコ政府。これまでISを含む反シリア政府軍に拠点を提供、兵站ラインはトルコからシリアへ延び、その兵站ラインをトルコの軍隊や情報機 関が守ってきた。
ここにきてロシアはISの石油関連施設や燃料輸送タンカーを破壊、アメリカ軍も警告つきながら、攻撃を始めた。その石油を扱っている会社としてサウジア ラビアのARAMCOやアメリカの会社でカタールに大きな影響力を持っているエクソン・モービルといった名前が挙がっているが、盗掘から業者まで運んでい るのがトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の息子が所有するBMZ社だと言われている。トルコのジェイハンからタンカーでイスラエルへ輸送 し、そこで偽造書類を受け取ってEUで売りさばくという仕組みだともいう。ロシア軍やアメリカ軍の空爆でエルドアンは個人的にも厳しい状況に陥っている可 能性が高い。
これまでもトルコはNATO軍対ロシア軍という構図を作ろうとしていた。言うまでもなくトルコはNATO加盟国であり、トルコとロシアが戦闘になれば自 動的にNATO軍対ロシア軍という構図ができあがる。撃墜した相手がロシア軍機だということはトルコ軍がわからないはずはなく、報復攻撃を誘うためにロシ ア軍機を撃墜したのかもしれない。トルコ政府はギャンブルに出たのかもしれないが、そうした展開になる可能性は小さいだろう。ギャンブルは失敗することが 圧倒的に多い。
その後、ロシアのウラジミル・プーチン大統領は、撃墜されたSu-24が飛行して いたのはシリア領空、トルコとの国境から1キロメートルの地点で、高度は6000メートルだったと説明した。ロシア軍機はISを攻撃してから帰還する途中 で、トルコのF-16が発射した空対空ミサイルで撃ち落とされたとしている。トルコに対して何ら脅威になるようなことは行っておらず、撃墜は許容できない とも発言した。
FSAを名乗るグループによると、撃墜されたSu-24のパイロットは脱出に成功したが、地上でFSAの戦闘員が殺害、救出に来たロシアのヘリコプターをアメリカから提供されたTOWミサイルで破壊した。なお、撃墜現場の周辺にFSAは勢力圏を持っていない。また、FSAの幹部、アブデル・ジャバール・アル・オカイディによると、FSAの約10%はアル・カイダ系のアル・ヌスラである。
ネ オコンのジョン・マケイン上院議員を中心とするグループがトルコのエルドアン大統領に対し、国防総省はバラク・オバマ大統領と対決する用意ができていて、 これを知っているロシアはシリアから手を引くと伝えたとする情報がアメリカから流れている。この話が事実で、エルドアンがマケインの話を信じた場合、世界 はきわめて危険な状態になる。マケインはアル・カイダ、IS、ネオ・ナチと結びついている好戦派で、精神的に不安定な人物だともされている。
西 側のメディアが いつ「社会の木鐸」だったのかは知らないが、2001年9月11日以降は公然と嘘をつくようになった。勿論、政府も同じ。イラクを先制攻撃する口実に使わ れた「大量破壊兵器」の場合、嘘をついた本人も嘘を認めているが、その後も嘘をつき続けている。BBCにしろ、CNNにしろ、アル・ジャジーラにしろ、 FOXにしろ、勿論日本のマスコミにしろ、まず疑ってかかる必要がある。にもかかわらず、今でもそうしたメディアや西側の政府(特にアメリカ)の流す情報 を信じる人がいるとすれば、相当の健忘症なのか、嘘の共犯者なのだろう。
ト ルコやアメリカ、つまりNATO側はロシアのSu-24が領空を侵犯、警告を無視したと主張しているが、ロシア政府はロシア軍機はトルコ領空へ入っていな いだけでなく、トルコのF-16戦闘機が撃墜の際にシリア領空を侵犯していることをシリア側のレーダー記録で確認したとしている。警告もなかったという。 そうした状況を踏まえ、ロシア政府はミサイル巡洋艦のモスクワを海岸線の近くへ移動させ、何らかの敵対的な行動が予想された場合は攻撃すると警告した。こ の海域にはフランスの空母ド・ゴールとアメリカの空母ハリー・S・トルーマンが向かっているので、軍事的な緊張はさらに高まりそうだ。ロシアは脅しても屈 服しないということをネオコンはまだ理解できていないのか、世界大戦/核戦争を臨んでいるのだろう。