言うまでもなく、株式相場の上昇と景気回復とは直接的な関係はない。株価が「ITバブル」を超えても庶民の懐が温かくなるわけではないのだ。
昔から証券界には「不景気の株高」ということわざがあるが、物が売れなければ設備への投資は細り、「余ったカネ」を金融市場へ回すからだ。日銀の黒田東 彦総裁が推進してきた「量的・質的金融緩和(異次元金融緩和)」は金融/投機市場へ大量の資金を流し込む政策であり、日銀はETF(上場投資信託)買いで 相場を押し上げてきた。一種の相場操縦。日銀を本尊とする仕手戦だとも言える。「官製」という意味では、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が株 式の運用比率を倍増させるのも相場テコ入れという点では同じことだ。
仕手戦には「提灯買い」がつきもの。日銀が相場を引き上げるなら、それを利用して一儲けしようとするのは当然。外国の投機家も買ってくるだろうが、天井 が近いと思われたら引き上げる足は速い。つまり暴落。日銀は相場を引き上げ続けなければならないが、そんなことは不可能だ。つまり、早晩破綻する。そんな ことをしているから「狂っている」と言われるのだ。
いわゆる「リーマン・ショック」も投機が破綻した結果で、巨大金融機関の不正も発覚した。本来なら、相場での損は取り引きに参加した投機家の責任であ り、違法行為があれば厳罰に処す必要がある。投機とは博奕だが、イカサマを許さないというのが賭場の掟。イカサマを許したら博奕は成り立たないからだ。
ところが、アメリカの当局は「大きすぎて潰せない」だけでなく、「大きすぎて処罰できない」という姿勢。つまり違法行為を放置した。FIFA(国際サッ カー連盟)の幹部を収賄の容疑で起訴する暇があるなら、金融機関にメスを入れるべきだ。FIFAに限らず、大きなカネが動く国際団体では賄賂は噂されてき たが、金融機関が行っていることに比べればかわいいものだ。
巨大金融機関は国も食い物にする。ギリシャやウクライナが財政破綻した原因を作り出した勢力の中枢にも金融機関は存在している。ギリシャで問題になって いるのは、庶民から身ぐるみ剥いで西側支配層が儲けようとしているから。IMF、欧州中央銀行、欧州委員会のトロイカの政策で問題は解決しない。闇金が返 済させないのと同じで、解決しては困るのだ。だからこそ、問題を解決しかねないロシアの提案を嫌がっている。
その一方、IMFは
ウクライナが破綻しても資金を投入するとしている。そうしないと支配層が儲けられないからだ。例えば、国が破綻していることから下落したウクライナ国債をロスチャイルドのファンド、フランクリン・テンプルトンは買い占めている。
安値で国債を買いあさり、満額で買い取らせるというのが「ハゲタカ・ファンド」のやり口で、フランクリン・テンプルトンも同じ手口を使うと見られてい る。IMFが融資した資金でウクライナ政府は国債を満額で購入し、債権者になったIMFはウクライナ政府に対して緊縮財政で庶民へ回るカネを減らすように 命令、規制緩和や私有化の促進で巨大資本を大儲けさせようとしているのではないかということ。ギリシャでも似たことが行われているようだ。
こうしたアメリカ支配層のカネ儲けを批判する人は少なくないが、各国政府や国際機関の要人はアメリカに逆らわない。アメリカ支配層は自分たちの影響力を 拡大するため、各国政府の要人やメディアの人間を買収したり脅迫したりしてきたのだが、脅迫の材料を集めることは電子情報機関NSAの重要な役割のひと つ。個人的な体験から言わせてもらうと、この問題に触れることを日本ではマスコミも「活動家」も嫌がった。
このNSAは四半世紀近くの間、その存在自体が秘密にされていた。明るみに出たのは1972年のことだ。ランパート誌の1972年8月号に元NSA分析 官の内部告発が掲載され、その中でNSAは全ての政府、つまり「友好国」の政府も監視していると語っている。ドイツやフランスの要人を監視していると最 近、報道されているが、こうしたことは40年以上前から知られていたのだ。
NSAはイギリスの電子情報機関GCHQとUKUSAという連合体を組織、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの機関が「第2当事国」として参加 している。この第2当事国はNSAとGCHQからの命令で動き、事実上の「国家内国家」だ。つまり、その3カ国を操るための道具になっている。日本は「第 3当事国」に含まれているようだが、アングロ・サクソン系5カ国とは根本的に違う。
このUKUSAは全世界の通信を傍受するためにECHELONというシステムを張り巡らせている。このシステムの存在を初めて明らかにしたのはイギリスのジャーナリスト、ダンカン・キャンベル。1988年のことだ。
キャンベルは1976年にマーク・ホゼンボールとふたりでGCHQの存在を明るみに出したことでも知られている。その結果、アメリカ人だったホゼンボールは国外追放になり、キャンベルは治安機関MI5から監視されるようになった。
UKUSAは相場に関する情報を集め、操作し、相場も動かしていると見られている。生産力が衰えたアメリカは基軸通貨を発行する権利だけで生きながらえ ている存在。ドルを発行して物を買い、払ったドルを産油国経由で回収する仕組みがペトロダラー。最近は相当額が石油取引を経由しないで金融市場へ流れ込ん でいる。一種のマルチ商法だ。
そうした商法へ日本も組み込まれている。日銀の黒田総裁が行っている政策を高橋是清のそれに準える人もいるようだが、当時と現在では金融環境が全く違 う。巨大資本や富裕層へ富が集中しても当時は資産を隠す手段が限られ、資金を運用できる金融/投機市場も今とは比較にならないほど小規模だった。ブラック ホール化した金融/投機市場は資金を飲み込んでいく。そうした流れを作る上で重要な役割を果たしているのがロンドンを中心とするオフショア市場のネット ワーク。巨大企業、富豪、犯罪組織などがその恩恵に浴している。
金利が低いから金融/投機市場へ資金が流れるのではない。人間が実際に生きている世界で資金を使う環境にない。つまり不景気だから金利は低く、相場は上 昇しているのだ。庶民から富を搾り取り、金融で資産を増やしている巨大企業の儲けを示して景気が回復していると言うことはできない。