東京都知事選(14日告示、31日投開票)で新たに増田寛也元総務相(64)が8日、立候補する意向を固めた。
10日に出馬表明する。自民党都連は増田氏を支援する方針だが、同党では小池百合子元防衛相(63)が立候補を表明済みで、分裂選挙に突入することが確実となった。
増田氏は11日に正式に記者会見し、公約の説明などを行う予定。公約は、(1)2020年の東京五輪・パラリンピックの成功(2)五輪後の東京の持続可能な成長(3)東京から地方再生―を柱とする。
増田氏は人口減による「消滅可能性都市」を提唱し、東京一極集中に警鐘を鳴らしていた。都知事を目指すことが批判を浴びかねないため、地方と東京の共存共栄の方策を掲げる。首都直下地震対策や待機児童対策も盛り込む方向だ。
統一地方選、知事選の結果、47名の知事のうち29名をキャリア官僚出身者が占めるようになった。実に62%の比率である。もっとも関東8都県に限れば、官僚出身者は茨城県の橋本昌知事たった1人しかいない。東京都にいたっては昭和54年4月から平成7年4月まで4期、16年間務めた元内閣官房副長官の鈴木俊一知事を最後に官僚出身者は誰もいない。要するに官僚出身の知事は都市部では少なく、どちらかといえば「地方」に集中している。地方では東大や京大に進み、国家公務員I種試験に合格し、中央省庁に採用される者は尊敬され、県のトップになるのは自然の成りゆきだ。
ところが都市部ではそうはいかない。政治的資質や行政手腕よりは「知名度」があるという理由で、青島幸男、石原慎太郎、猪瀬直樹、舛添要一、横山ノック、黒岩祐治(神奈川県)、森田健作(千葉県)、橋下徹などに好感を抱き、票を投じる。
政府は「地方創生」など耳障りの良いことを言っているが、安倍政権が目指すのは中央集権国家だ。特定秘密保護法の制定、集団的自衛権の行使容認、原発推進――国民的な議論を排除し、安倍の一存ですべてが進む政治状況では、官僚が一番だ。地方自治体の元締めともいえる旧自治省やその流れをくむ総務省出身が多い。原発があるのは北海道、青森、宮城、福島、茨城、新潟、静岡、石川、福井、島根、愛媛、佐賀、鹿児島の13道県だが、うち8県の知事が霞が関官僚出身。新潟の知事を除き、いずれも積極的な原発再稼働容認である。佐賀県の古川康前知事は、玄海原発3号機のプルサーマル発電を認め、知事辞職の直前には新型輸送機オスプレイの佐賀空港配備を実現するための路線を敷いた。川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の立地県・鹿児島では、総務省出身の伊藤祐一郎氏が川内原発再稼働を巡って、同意権限を求める周辺自治体住民の声を無視、避難計画不備のまま、再稼働への同意を表明した。
軍備強化といった政策も地方自治体の知事を取り込むことが必要だ。安倍は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡って、沖縄の仲井眞弘多前知事を、毎年度3,000億円の沖縄振興予算と引きかえに抱き込み、埋立承認を認めさせた。仲井眞氏は元通産官僚。本籍は霞が関にあった。沖縄の誇りをいとも簡単に売り渡した背景には、国益を優先させる官僚特有の考え方があった。
身勝手なのも、上昇志向が強いのも、霞が関官僚に共通する性癖だ。
47都道府県の知事のうち、6割が霞が関出身者、知事の座が官僚の天下り先になっている。沖縄、佐賀や鹿児島のように、元官僚が政府の方針に逆らうことはない。東京都知事も従順な官僚にやってもらいたいのは見え見えだ。
小池氏は出馬会見で(1)都議会の冒頭解散、(2)利権追及チームの新設、(3)舛添要一前都知事(67)の問題に関する第三者委員会設置――の公約を掲げた。
「自民党は家族的ですばらしいが、都連は改革が必要。都連はどこで誰が何を決めているのか不透明でブラックボックスでした」と都連批判。さらに「猪瀬(直樹)氏と舛添氏が短期間で辞めたのはなぜか。誰かにとって不都合になったときに捨てられるのではないか」と宣戦布告した。
相手は“都議会のドン”といわれる内田茂都連幹事長(77)。「私が都知事にふさわしくないというなら、議会は不信任案を出す。分裂選挙というが、分裂しているのは都議会と都民の間ではないか。都民の声を聞いてみる必要がある」。
小池氏は公約で東京五輪・パラリンピックを含めた都にはびこる利権構造にメスを入れるとも宣言した。
犬猿の仲といわれる五輪組織委員会会長森元首相への宣戦布告だ。話は2008年にさかのぼる。福田康夫首相(79)が辞任を表明し、総裁選で小池氏は手を挙げた。これに派閥の長老だった森元首相が「俺は聞いてないぞ!」と激怒し、それ以来、2人の仲は修復されることはなかったという。
都知事選が面白くなってきた。
岩手県知事時代の増田県政を知る斉藤信岩手県議はこう言う。
「知事在任中に何をしたのかと言えば、自民党政治に乗っかり、大型開発、公共事業をどんどん進めて莫大な借金をつくった。その額は12年間で1兆4000億円です。知事就任前と比べ2倍ですよ。そして借金をそのまま残(県から)去った。『知事経験』なんて、単に『やったことがある』ぐらいと思った方がいい」
税金をしゃぶり尽くす自民党政治が体に染みついた男に、年間予算13兆円に上る都政運営を任せたらどうなるか・・・・・都民にとっては大変なことだ。膨らみ続ける東京五輪の予算も見て見ぬフリだろう。
あまり知られていないが、増田が総務大臣だった2007年には、都の法人事業税の一部を国税に回し、地方に配るように税制を改定している。それ以降、特例として都の予算が無理やり地方に回されているのだ。損失は決して少なくない。都によれば、08年10月から特例が適用され、毎年1000億~2700億円のカネが地方に配られている。来年4月まで続ける予定で、このままいくと、約9年で1兆5000億円近い都の税金がマイナスとなる見込みだ。「増田氏が特例を作った当時、都議会自民党は猛烈に抗議しています。その後も、毎年、特例を廃止するよう国に訴えていました。舛添知事の代でようやく廃止されることになりましたが、増田氏が都知事になると、また都の税金が召し上げられ、地方への配分が始まるのではと都庁の役人は戦々恐々としています」(都庁関係者)
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