6月中旬、自民党に所属する国会議員のところに、謎の本が送られてきた。『フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識』という冊子だ。
冊子は、「トンデモ野党のご乱心」「フェイクこそが本流のメディア」「安倍政権の真実は?」の3章で分けられている。
安倍政権の経済施策「アベノミクス」について、厚生労働省の毎月勤労統計調査の不適切処理によってその効果が偽装されていると野党が批判したことに対して、
「不適切処理があったことは事実であっても、この間のアベノミクスの効果は疑う余地はありません」
「もし、野党がアベノミクスの効果に疑念を抱かせるような指摘をするのなら、それはフェイクニュースでしかないのです」
「『統計』『統計』と声を張り上げる野党議員は、職務を放棄しているに等しい」
立憲民主党の枝野幸男代表については「革マル派に近いといわれてます」とあり、社民党については「間違いなくオワコン(終わっているコンテンツ)」、共産党に対しては「壮大な虚偽」などと記している。
トランプ大統領が「日米同盟破棄の可能性を側近に示唆」というニュースには、「安倍首相は今やトランプ大統領をはじめとする海外の首脳からも頼りにされる存在」「安倍内閣は、極めて危機管理に長けています」と賞賛。
メディアに対し「批判というより、もはや難癖レベルといわざるを得ない」とし、東京新聞や沖縄タイムス、琉球新報の社説に「視野狭窄」「言葉遊び」「もはや地元メディアとすらいえません」などと非難、「トンデモ新聞」などと揶揄していた。読売新聞や産経新聞についての非難は書かれていなかった。
自民党本部によると、
「様々な資料をお送りしており、こちらもその一環です。特に参院選のためというわけではなく、ご参考になるものとしてお送りしました」
「インターネットメディア「テラスプレス」は、1年ほど前から、すでに広く一般にネット上で閲覧されており、そのときどきの時局テーマについて、わかりやすく具体的に数字を示しながらネット上で解説し、他の大手新聞の社説やコラムのように説得力のある内容であることから、これらの記事をまとめた冊子があるということで、通常の政治活動の一環として、参考資料として配布したものであり、テラスプレスの運営等には関与しておりません。」
発行元の人物も不明、同名のサイトは検索にかからず広告もないということだ。
自民党議員からも疑問の声が上がっている。
「ひいきの引き倒しもいいところです。 扱いに困ります」
「 アフリカ出張のあいだに妙な本が届いていました。数ページ読みましたが、とても活用できるようなものではありません。」
「活用したい人もいるのかもしれないが、ひどい中身。この内容を活用するなど、まっとうな保守がやることではないでしょう。どういう経緯でこれが配られたのかも全く分からない、怪文書に等しいものです」