「雇用拡大」を公約に掲げて当選したトランプ次期米大統領が、早々に国内製造業へ圧力を強めている。隣国メキシコでの生産を検討する自動車大手フォード・モーターなどを標的に、ツイッターを介して国内生産を維持するよう迫り、企業は対応に追われる。米国民が家族と過ごす24日の感謝祭の祝日。トランプ氏の唯一のツイートは、空調機器大手に対する「脅し」ともとれる発言だった。世界有数の空調機器メーカーで日本に東芝との合弁会社も持つキヤリアは2月、2019年をめどにインディアナ州の工場を閉鎖し、生産をメキシコに移すと発表した。従業員への移転通告の模様が動画サイトで流れ、約1400人の解雇が米国内で話題になった。トランプ氏は選挙戦中の4月に「大統領になれば計画を100%撤回させる」と述べ、労働者の不満の象徴として同社の名前を使い続けた。同様な攻撃を受けるのがフォードだ。トランプ氏は17日、ツイッターに「(会長の)ビル・フォード氏と電話で話した。ケンタッキー州のリンカーン工場はメキシコには行かない」と書き込み、メキシコ移転の翻意を勝ち取ったと誇示した。 ケンタッキー工場のメキシコ移転計画はもともとなかった。移るのはミシガン州の小型車生産だが、別の車を造るため国内の雇用は減らない。フォードのメキシコへの生産移管を巡る議論は2015年末の労使の賃金交渉にさかのぼる。リンカーンなど複数車種の生産をメキシコに移す案が議論された。組合はメキシコ生産を阻止しない代わりに、10年ぶりの賃上げと19年までの米国工場の維持を勝ち取った。ミシガンからの小型車生産移管はこの議論を踏まえて決まったものだ。 フォードは少なくとも19年までは米国工場を閉鎖せず、米国内の雇用を守るとみられる。事実を知ってか知らずか、トランプ氏は代表的な米企業をたたいて労働者層の支持を取り込んだ。
「メキシコからの輸入関税を35%にする」。トランプ氏は企業を悪役に仕立て、NAFTA見直しなどの保護主義を正当化してきた。だが、キヤリアの場合、インディアナ州で時給20ドル(約2300円)の人件費がメキシコでは同3ドルだ。米議会の資料によると、メキシコへの直接投資の累計額はNAFTAが発効した1994年に170億ドルだったが、約20年後の15年は928億ドルと5.5倍に膨らんだ。自動車や機械の関連工業の集積が進んだ。
問題は企業がどこまでトランプ氏の意向をくむかだ。キヤリアは「次期政権とは議論を続けている」との声明をツイートした。同社が移転を取りやめれば「禁じ手」だった個別企業への政治介入に前例ができ、影響は米製造業全体に波及する。
米企業も防戦一辺倒ではない。「リンカーン工場はメキシコにはいかない」というトランプ氏のツイートに対し、フォードは「そもそも計画がない」とは反論せず「国内生産を続けられるよう、米国の競争力を高める取り組みに期待している」とコメントした。
トランプ氏は現在35%の米連邦法人税の15%への引き下げや、10年間で1兆ドルという戦後最大のインフラ投資を公約に掲げた。米農機・建機大手ディアのサミュエル・アレン最高経営責任者(CEO)は保護主義をけん制しつつ「政府が建機を買ってくれるならありがたい」と財政出動に期待を示した。
「NAFTAからの脱退または再交渉」を公約に掲げたトランプ氏も、当選後はNAFTAに言及していない。「米自動車ビッグ3が反対する政策はとりにくい」と読む業界関係者は多い。(日本経済新聞)
新自由主義が世界経済を成長路線に戻す政策として、先進国で採用されている。自由化、民営化、規制緩和、小さな政府化、究極的にはモノ、ヒト、カネの国境を越えた移動の自由を最大化していくという。誰のために?・・・グローバル投資家やグローバル企業のために。
労働者の実質賃金は上がらなくなり、製造業から衰退していった。そして、新自由主義の採用で、市場の硬直化・寡占化が進んでいく。深刻なのは新自由主義の構造改革が目先の株主利益を最大化させるために腐心するから、研究開発投資や人材投資、設備投資などが削られていくことだ。「新自由主義は経済を成長させる!」という命題そのものが怪しく、むしろ寡占化による独占が進み、成長率を低下させてきたのではないか。
グローバリズムによって、米国はもちろん、EUにおいても、労働分配率は低下し、実質賃金が下落、反対に金融資産を運用するグローバル投資家たちの投資収益が増え、「1%」 対 「99%」の超格差世界が誕生したというわけだ。
この衰退のシステム、新自由主義に基づく構造改革は人々を幸せにはしない。特に先進国の国民を新興国並みの貧困層に引きずり込むシステムだと言ってもいい。今、注目の人類学者エマニュエル・トッドが、トランプ現象は教育格差によって這い上がれない白人労働者の反乱というとらえ方をしていたが、どうも彼の言うことはピンと来ない。誰もが大学に行けるようになり、エリ-トになる人材が増えても企業はそんな人材を多くは必要としないからだ。企業が必要としているのは機械より安い労働力と少数のエリ-トだ。
トッドはEU統合に反対して「通貨の統合によって国民や国をなくそうとしている。言い換えれば、民主主義の時代から受け継いだ帰属意識は、砕け散った。共同的信念の崩壊、とりわけ国民概念の崩壊は個人の解放や開花をもたらさず、逆に、無力感で個人が砕けてしまう」と言う。
「民主主義の危機は、(グローバル化した)経済の帰結ではない。根源には高等教育の広がりがあります。民主主義の前提は、誰もが読み書きができるようになることでした。そして高等教育を受けるのはごく少数。この人たちが社会でエリートとして生きていくには人々と話ができなければならなかった。ところが今では、高等教育を受ける人が急増し、受けていない人たちとのつながりなしで存在できるようになりました」
「高等教育を受けた人たちが階層を形成するまでになったため、受けていない人たちの不平等感が高まり、社会に緊張が生じているのです。二つの出口が考えられます。高等教育を受けても、グローバル化で苦しむ人は少なくない。ならば、高等教育を受けていない同胞とつながっているのだという理解にたどり着くことです。そうすれば、民主主義は地に足のついたものになる。でなければ、グローバル化どころか無秩序への回帰です」
エリ-ト層の心の持ちようで世界が変わるなら、こんな無縁社会にはならなかったはずだ。見方がナイ-ブ過ぎる。
家族の関係性は文化や伝統ではなく、その家族の資産の状況によって形成される。資産家は財産を守るために子供をつくり、脱落者が出ないように支え合い、結束する。中途半端な小金持ちや貧乏人は助け合う余裕がないから、親族とは疎遠にする。核家族は農業の低迷と工業化で若者たちが都会に出て来たからだ。親まで呼び寄せる余裕はないし、親たちも迷惑をかけないように地元にとどまる。貧乏人の家族制度なんて経済構造で簡単に変わるものだ。日本会議よ。国のため家族のために命を投げ出す国民を増やしたいのなら、まずは国民の生活を豊かにし、守るものを築かせることですよ。困窮させ、守る家族も作れなくて国を守る気概が生まれるはずもない。
トランプの強引な手法が頼もしく思える今日この頃だ。
英国のメイ首相が経済政策の大胆な転換に乗り出した。法人税率を先進国最低の水準まで引き下げるほか、企業だけでなく低所得者層への助成など歳出の拡大によって離脱後の国内経済を下支えする。サッチャー元首相からキャメロン前政権まで、「小さな政府」を志向してきた保守党政権の路線と一線を画し、労働者や弱者保護を意識した政策にも手を広げようとしている。「私のスタイルは前政権と異なる」。
法人税を現在の20%から2020年までに17%に引き下げるほか、ロボットやバイオテクノロジーなど企業の先端技術に年20億ポンド(約2700億円)を助成。大規模なインフラ投資による景気刺激策も打ち出した。法人税を巡っては、トランプ次期米大統領も税率を35%から15%に下げる方針を示している。メイ首相は21日に行った演説で「税率をG20(主要20カ国・地域)で最低水準にする」と表明。トランプ氏が15%にした場合はさらに引き下げる可能性を示唆した。英国はもともと国内総生産(GDP)に占める対内投資の割合が高く、海外から呼び込むカネは経済成長のエンジンでもある。だが、EU離脱が決まった6月の国民投票後に英経営者協会が行った調査では、経営者の5分の1以上が「英国外への事業移転を検討中」と回答。このため、企業向けの減税や助成を通じて国外移転を食い止めたい考えだ。
一方、メイ政権は労働者や低所得者向けの政策も重視。「労働者はEU離脱を支持することで企業に変化を要求した」として、労働者の声を企業経営に反映する企業統治(コーポレートガバナンス)改革も目指している。財政報告でも最低賃金の引き上げや安価な住宅投資の促進が盛り込まれ、ハモンド氏は「これ以上、福祉(予算)はカットしない」と述べた。ただ、この日示された経済見通しでは、17年の経済成長率が1.4%増となり、従来の2.2%増から減速。目先の歳出拡大は財政を悪化させる懸念もあり、英財政研究所(IFS)の報告書によると、離脱に伴う経済成長の減速で20年度の財政赤字は約150億ポンドに膨らむ。ハモンド氏は前政権が掲げていた財政赤字を解消する目標にはこだわらない姿勢を強調し「我々の責務はEU離脱に向かう英国経済を弾力あるものにすることだ」と述べた。( 毎日新聞)
英国のメイ首相はEU離脱にあたり、良好な通商をめぐる合意と同時に移民のコントロールの双方を確保しようと奮闘中である。また、英経済にとり金融サービス部門が重要であると認識しており、EU離脱に伴う不利益を最小限にしようとしている。
それに比べて、国民を煽ったEU離脱派は無為無策で逃げ出したままである。ドナルド・トランプ米次期大統領はツイッターで、英国の欧州連合(EU)離脱キャンペーンの中心的存在だったナイジェル・ファラージ氏が駐米英国大使になることを多くの人が望んでいると述べ、同氏は素晴らしい大使になるとコメントした。ファラージ氏はトランプ氏の選挙活動を支援したほか、トランプ氏の当選後に面談している。トランプ氏の発言について質問された英首相府の報道官は、「既に優秀な駐米大使がいる」と述べた。
内政干渉になりかないトランプのツイッタ-だが、トランプは思い付きで放言する考えの足りない人間である。しかし、自由貿易協定で職を失ったラストベルト地帯の労働者に向け、グローバル化を批判することで支持を得た。TPP離脱通告は、当然である。日本の政府や財界は、「トランプ氏に翻意を促す」と言うが、トランプが従うわけもない。さらに呆れるのは安倍政権がこの期に及んでも、今まで通り、大企業や富裕層を優遇し、子供達や貧困層を放置する政策しか行わないことである。
今回のアメリカ大統領選は史上最悪のトランプ氏が支持を集めている。
反民主主義的、差別的、政策のないトランプ氏が熱狂的に支持されている不思議。そこにはアメリカの中産階級の崩壊、超格差社会による白人労働者の困窮がある。
大越キャスターが各地を取材した。
経済の規制緩和、グローバル企業の巨大化により、格差が拡大すると、かつての中間層が貧困層に転落し、富裕層が政治を動かす。少数の特権階級に有利な政策だけが採用され、民主主義が機能しなくなる。大多数の貧困層の不満や怒りは弱者(移民など)へ向かい、差別主義が横行する。
トランプ氏の過激な言動は白人労働者を代弁していると見なされ、共感を得る反面、クリントン氏は「特権階級の代弁者」と見なされる。
オバマ氏が訴えた「change」という言葉は結局何も変化しないで終わった。
オハイオ州ヤングタウンは伝統的に民主党優勢の州だが、今回は共和党支持者が急増している。
かつては鉄の産地として栄えていた白人労働者の多い地域だが、グローバル化により安い輸入品が中国から入り、工場は閉鎖された。工場で働いていた60代の白人男性は仕事に誇りを持っていたが、工場が閉鎖されると、生活が苦しくなり妻とも離婚、3人の子供は故郷を離れた。グローバル化により仕事だけでなく、生活の全てを失われたという彼の絶望感は悲壮だ。
「仕事ってのはお金を稼ぐだけのものじゃないんだ。家族を養い、友情を育み、困っている人を助けるためのものなんだ。私はみんなが幸せになるよう祈っていたのに」
リーマンショック前と比べると、アメリカの製造業の労働者のうち1/3が失業した。所得の上位1%の平均所得は残り90%の平均所得の3倍になる。ヤングタウンでは、失業者の増加に伴い麻薬使用者も増えている。検死のための遺体収容所では、1日7人以上収容することもあるという。検死官は「働きはじめてからこんなひどい状態は初めてだ。この町には絶望感が漂っている」と言う。
工場労働者の男性の妹の夫は失業後、アル中になり亡くなった。彼女自身も幻聴に悩まされている。
「中間層はもういない、今は富裕層と貧困層しか存在しない。アメリカにはchangeが必要だ。失うものは何もない。トランプなら昔のよき時代を取り戻してくれる」
トランプ陣営は、有権者の詳細なデータ、住所、家族構成、過去の投票行動などを分析し、敢えて投票に行ったことがあまりない層を狙った。生活が苦しい人が多く、格差を無くすというトランプ氏の主張に共感してくれるという。政治に無関心だった貧困層を洗脳して取りこむ、そんな戦略だったのかもしれない。
一方、トランプ氏の対立候補であるクリントン氏は若者にも貧困層にも支持されていない。
トランプ氏は「特権階級の資本主義」と呼び、クリントン氏をその象徴としている。
確かに、クリントン氏の応援演説をしているのは著名な資産家のウォーレン・バフェット氏など富裕層だ。e-mail問題もあり、「信用できない」というイメージが付きまとう。
一方、そのクリントン氏と民主党内で争ったサンダース氏は若者に人気があった。
「お金を持っていない人でも、よい教育を受けることができる。それが格差を縮める」という主張が支持された。イリノイ州シカゴ、サンダース氏の支持が多かった町だ。若者たちが集まり、学費高騰へ抗議する集会が開かれた。クリントン氏は学校の授業料を下げるなどの政策を打ち出しているが、若者には信用されていない。「クリントンは若者の意見を代弁していない。クリントンは将来を大胆には変えられない」
リーマンショックのあと、高学歴者でも低所得の仕事にしか就けないケースが増えている。名門大学に進学しながら、親が職を失い、授業料を払えなくなり大学を中退した男性は、仕事を掛け持ちし、生活費を切り詰めるため親戚の家を転々としながら暮らしている。
「借金すれば大学を卒業できるけど、借金だらけの人生になる。それでは社会の階段を上っていけない。こうして特権階級のシステムは巧妙に俺たちを押さえつけるんだ。」
若者の間には、今のシステムではどう頑張っても上には上がれない、チャンスすら回ってこないという絶望感が広がっている。「アメリカンドリームなんて、愛国者に仕立てあげるためのプロパガンダに過ぎない。何年も何も変わっていない、むしろ悪くなっている」
大統領候補者同士の討論会の日、若者たちが集会を開いた。司会はコメディアン。どうせ変わらない政治なら笑いにしてやろう。
クリントン氏とトランプ氏の討論会では若者の未来についてはほんの少ししか触れられていなかった。
「保育園を増やし借金しなくても大学に行けるようにしましょう」(クリントン氏)
「どうせ二人は俺たちのことなんか真剣に考えていない。いい余興だったよ」(若者)
サンダース支持層もトランプ支持層も「ビッグマネーによる民主主義の崩壊」に危機感を持ち、「資本主義はエリートのためたけのもの」と主張している。これからは「保守」対「リベラル」とか「小さな政府」対「大きな政府」ではなく、「反特権階級」という軸ができるのかもしれない。
しかし、今のシステムでは生活を変えられないという不満は移民排除に向かう。イギリスのEU離脱でもそうだった。移民を排除すれば、自分達の生活がよくなると思っている。
確かにオバマ氏が移民寛容政策をとった結果、メキシコ移民が増えた。しかし、移民が増えなければ、企業は安い労働力を求めて海外に工場をつくる。産業の空洞化が進むばかりだ。新自由主義で経済の発展を願う限り、産業を国内にとどめておこうと考える限り、安い労働力として移民を受け入れるしかない。国民の貧困化、超格差社会を受け入れるしかない。
「私たちの税金の5分の1が移民に使われているのは納得行かない。白人の子供が逆に差別されている現実がある。移民はアメリカのお荷物だ」トランプ氏支持者が言う。トランプ氏の発言に刺激され、白人至上主義者がヒスパニック人に暴行を働く事件も起きた。トランプ氏が「メキシコ人は犯罪者」という演説をしたあとに起きたという。
排外的な考え方は、アメリカだけでなく世界に広まっている。世の中を変えようとする気すら沸いてこない絶望感は深刻だ。特権階級のための資本主義という不信感は深刻だ。民主主義では世の中を変えられないという無力感は深刻だ。
「貧困になるのは努力していないからだ。」という意見や「格差が広がっても優秀な人間が活躍する方が社会全体は良くなる」と考える人も多い。
日本の高度成長期、一億総中流という意識を皆が持っていた時代が一番安定し、国民も希望に燃えて勤労意欲も高まった時代だったと思う。グロ-バル企業が国を訴えて莫大な賠償金を奪う世の中だ。歴史の歯車は逆回転しない。巨大企業国家が実際の国家を破たんさせてしまう時代がやってくる。誰もそれを止めることができないのだろうか?
過去最高のメダルを獲得したリオ五輪も終わった。卓球女子と男子、男子リレ-など、感動のおすそ分けを享受した競技もあり、それなりに楽しめたが、4年後に東京で開かれると思うと、今から憂鬱である。
安倍総理がス-パ-マリオに変身のパフォ-マンスで閉会式を終えたが、あのような軽い乗りで戦争を始めてしまいそうなことが、空恐ろしい。幕張メッセの自衛隊ブ-スで三原じゅん子などと一緒に迷彩服で戦車から上半身を出して手を振っていた姿は3年たった今も忘れられない。
昭恵夫人に「戦争をするときには、私を殺せ」とまで発言させる・・・・・戦争をすぐ始める総理大臣と言うイメ-ジは消えない。
「政治家にならなければ、映画監督になりたかったという人なんです。映像のなかの主人公をイメージして、自分だったらこうするっていうのを、いつも考えているんです。だから私は、主人は安倍晋三という日本国の総理大臣をある意味演じているところがあるなと思います」・・・・・そう、アニメの主人公になった気分で戦争ごっこをやり始める・・・・腹心は美少女稲田ちゃん。
安保法制を強行し、憲法改正にひた走る。ヒロイックな自己陶酔から覚めたら、持病がひどくなって、逃げ出す。そのあとの責任を取る政治家は見当たらない。
「今や超大国」メダルラッシュに英国沸く 「金」27個で2位 2016年8月23日 東京新聞
リオデジャネイロ五輪で各国が獲得した金メダルの数は、スポーツ大国で明暗が分かれた。米国は前回のロンドン五輪と同じ46個で首位を維持。2位は英国で27個。ホスト国だった前回の29個から大きく減らすことなく、好成績を収めた。一方で中国は前回の38個から26個へと大幅に減らして3位に転落した。日本はレスリングで4個、柔道で3個、体操、競泳で各2個と基幹競技での活躍が目立ったほか、バドミントンで初めてとなる金メダルを女子ダブルスで獲得。前回より5個多い計12個で6位につけた。ドーピング問題で揺れたロシアが、5個減らした19個で4位。ドイツが17個で5位だった。
米国は陸上、競泳で量産したほか、体操女子のバイルスが団体総合も含めて4冠と健闘。英国は自転車、ボートの得意競技での活躍が光った。中国はバドミントンと競泳で大きく減らし、ロシアはドーピング問題で前回8個だった陸上の選手がほとんど参加できなかったのが響いた。
【ロンドン=小嶋麻友美】英国は金メダル獲得数で2位となり、前回のロンドン五輪を上回った。英メディアによると、五輪を開催した国が次の大会で開催時より好成績を遂げたのは、1896年以降の近代五輪史上初。歴史的快挙に英国中が沸いている。
2012年ロンドン大会では米国、中国に次ぐ3位だった英国は今回、体操競技で初めて頂点に輝いたマックス・ウィットロックをはじめ金27個を獲得し、1個差で3位の中国を退けた。合計メダル数も67個で、ロンドン大会の65個を上回った。政府のスポーツ振興機関「UKスポーツ」のリズ・ニコル最高経営責任者(CEO)は21日、BBC放送で「われわれは今やスポーツの超大国だ」と胸を張った。
英国は96年アトランタ大会で金1個という屈辱を味わっている。以後、国営宝くじの資金をスポーツ助成に充て、メダリストの育成に重点的に投資。リオ五輪では、00年の約5倍の総額2億7000万ポンド(約355億円)をつぎ込んだ。今回、ロシア選手がドーピング違反で一部出場できなかったことも、英国を押し上げたと言えそうだ。
五輪種目の中で、練習するには最も競技に伴う用具が最小で設備も不要なのは、陸上競技のマラソンとトラック競技。GDPレベルで下位の国の選手でも、個人の力だけで戦え、マラソンのアフリカ勢やジャマイカのウサン・ボルトのように圧倒的な強さを見せている。
ソ連崩壊前の東欧諸国では、国威発揚のため幼少期から選手を育てていた。そして、英国が総額2億7000万ポンド(約355億円)をメダリストの育成に重点的に投資したことにより、「五輪を開催した国が次の大会で開催時より好成績を遂げる」という歴史的快挙となり、「国威」が発揚された。
<五輪メリットは「国威発揚」 NHKが憲章と真逆の仰天解説> 2016年8月22日 日刊ゲンダイ
21日のNHKの番組「おはよう日本」。オリンピックを扱ったコーナーで、「五輪開催5つのメリット」としてナント! 「国威発揚」を挙げていた。
オリンピックを国威発揚の場にしたのがナチス・ドイツだ。聖火リレーの導入やサーチライトを使った光の演出など、ヒトラーは権力を世界に見せつけるため、徹底的に政治利用した。その反省から生まれたのが、オリンピック精神の根本原則を示した「オリンピック憲章」だ。JOC(日本オリンピック委員会)のホームページでも「オリンピズムってなんだろう」と題したコーナーで、こう記している。
〈『人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会を奨励する』というオリンピック憲章の精神は、戦争や独裁政治、国威発揚とは相いれない〉
ついでに言うと、同憲章は〈オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない〉ともある。JOCもわざわざ、〈みんなはメダルの数を国別で数えたりして、ついついオリンピックを国同士の競争のように見てしまいがちだろう? でも、オリンピックで勝利をおさめた栄誉は、あくまでも選手たちのものだとオリンピック憲章では定めていて、国別のメダルランキング表の作成を禁じているんだよ〉と説明している。
NHKを含む大メディアが「メダル41個で過去最高」と大ハシャギしているのも、本来であればオリンピック精神に反する行為なのだ。スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏はこう言う。
「NHKがオリンピック憲章を理解していないことがハッキリした。そもそも国威発揚で国家間競争を煽るような勝利至上主義が、五輪のドーピングの問題を生み、スポーツ競技そのものを壊している。メディアならば、それをきちんと認識する必要があります。影響力があるテレビ、それもNHKが先頭に立って国威発揚をメリットに挙げてどうするのか。許されません」
リオ五輪で、柔道の日本選手が「銅メダル」を獲得したにもかかわらず、「すみません」と謝罪していた姿に違和感を覚えた人は少なくなかったはず。これも勝利至上主義が招いた悪しき慣習だ。メディアがその片棒を担いでどうするのか。
<日本の恥! リオ五輪閉会式で安倍首相がアスリートをさしおいて政治宣伝…背後に官邸と組織委のグロテスクな思惑> 2016.08.22 リテラ
北京五輪閉会式でのロンドンのプレゼンテーションのクライマックスにはベッカム、ロンドン五輪閉会式のリオのプレゼンテーションにはペレが登場しており、今回の東京のプレゼンテーションにも、日本を代表するアスリートが抜擢されるのだろうと思われていた。ネットでも、北島康介、高橋尚子、中田英寿、イチロー、錦織圭の名前、さらにはキャプテン翼などアニメキャラの名前などが飛び交っていた。
ところが、登場したのはアスリートでもなんでもない、総理大臣・安倍晋三だったのである。ショーではまず、君が代斉唱パフォーマンスが繰り広げられ、続いてプロモーション映像が流された。その映像は、水泳の北島康介や、マラソンの高橋尚子らメダリストが赤いボールをパスしていくというものだが、ここで最後にボールを受け取ったのが安倍首相だった。そして、ボールを受けとった安倍首相は、永田町の国会議事堂から黒塗りの車でリオに向かうのだが、このままでは間に合わない、と車内で突如マリオに変身。前述の現地会場のショーにつながるわけだ。この映像に映っている時間も北島らアスリートよりはるかに長く、しかも、世界的にほとんど顔を知られていないことへの対策か、安倍首相が登場するカットにだけわざわざ「SHINZO ABE」
「PRIME MINISTER」というテロップまで付ける特別扱い。
ようするに、このショーは最初から最後まで、完全に安倍首相が主役だったのである。東京という都市で行われるスポーツの祭典をアピールする映像であるはずなのに、なぜ、アスリートを隅に追いやり、国家の政治権力者を主役にする必要があるのか。しかも、五輪は「都市」で開催される祭典であって、「国家」のものではない。スポーツと平和の祭典であり、事実、競技中の宗教的、政治的アピールの一切が禁じられている。
過去の五輪閉会式の例をみても、セレモニーでその都市が位置する国の政治権力のトップがメインを張るなんていうのは前代未聞だ。北京五輪の中国ですらこんなことはやらなかった。ソチ五輪のロシアでもプーチンがショーに登場することはなかった。これから先も、北朝鮮などの独裁国家でオリンピックが開かれないかぎり、こんなショーはありえないだろう。
それにしても、いったいなぜ、次期五輪開催都市のプレゼンテーションが安倍の政治宣伝パフォーマンスに堕してしまったのか。この東京セレモニーのクリエイティブスーパーバイザーを担当したのは、ソフトバンクのCMで知られる元電通の有名CMディレクター・佐々木宏氏と歌手の椎名林檎で、総合演出と振り付けはPerfumeのライブ演出などで知られるMIKIKO氏だが、安倍首相の起用は、彼らだけのアイデアでなく、東京五輪組織委員会との相談で決まったらしい。「目玉のサプライズキャストについては、当初、アスリートを起用する案の他に、ゲームやアニメキャラでいくという案が出ていると聞いていた。それが、いつのまにか安倍首相がマリオをやることになったんです。そんなところから五輪組織委と電通が裏でプッシュしたんじゃないかと言われています」(JOC関係者)
五輪組織委は、安倍首相の元ボスである森喜朗元首相が会長として君臨しており、役員や理事にも、御手洗冨士夫経団連名誉会長やプロデューサーの秋元康など、安倍応援団がずらりと名を連ねている。しかし、今回、安倍首相の出演の仕掛人は、側近の組織委理事に送り込まれた安倍首相の側近中の側近、萩生田光一内閣官房副長官ではないかといわれている。
「いま、安倍首相は自民党総裁の任期を延長して、東京五輪まで首相を続けることを狙っている。側近の萩生田氏が動いて、安倍首相に閉会式の主役をはらせ、それを既定路線にしようと考えたんじゃないでしょうか」(全国紙政治部記者)
しかも、スーパーバイザーの佐々木宏氏や椎名林檎もこうした安倍周辺の意向を率先して取り入れていった気配がある。安倍首相の登場以外でも、今回のショーでは、やたら日の丸が出てくる、国威発揚、国家主義的演出が露骨だったが、これはおそらく、政権の空気や国旗・国歌にこだわる森喜朗会長の意向を汲んだ結果だろう。
「今回、評価が高ければ、2020年の東京五輪本番の開会式・閉会式のプロデュースや演出を任される可能性が高くなる。明らかに今の組織委の意向や、そのバックにいる安倍政権の好みを反映させるでしょうからね」(前出・JOC関係者)
いずれにしても、リオ閉会式でのプレゼンテーションが、この国の歪んだ空気感を反映したグロテスクな政治宣伝だったことは間違いない。そのことの危険性に気づかず「安倍ちゃんがマリオのコスプレwwうはwww」と喝采しているようでは、2020年東京五輪がナチスドイツ下で開催されたベルリン五輪の再現になる可能性だってゼロではないだろう。
「担ぐ神輿は軽くてパーがいい」 小沢一郎の名言である。
後は野となれ山となれ。これから4年、東京五輪狂騒曲が始まり、日本の崩壊で終わる。
当初の予算の3倍にはなりそうな東京五輪。そんな金があるなら、選手強化に投入して、獲得メダル数を増やすことの方が、よほど意義がありそうだ。2兆円もの大金を大手ゼネコン、広告会社に貢ぐ政権。
非開催国としての経済効果の方が庶民にとっては大きい。(ロンドンオリンピックの場合)
オフィシャルスポーツウェア。日本選手が活躍した競技は特に売上が伸び、卓球用品全体で見ると前年比約2割増加したという。
また飲食物を購入し自宅で観戦した人が、コンビニエンスストアの売り上げを押し上げた。ローソンでは、ファストフード類・おつまみ類・アルコール類等が開幕前に比べて約2割売り上げが増加し、全国の住宅地にある店舗では夕方5時から夜12時にかけての来客数が5%上昇した。また時差があったためか、深夜の観戦も多く、常盤薬品工業の眠気覚まし飲料「眠眠打破」は二桁で売り上げが伸びた。
開催前にオリンピックの経済効果を約8,000億円と試算した電通総研では、バドミントンや卓球など、初めてメダルを獲得した競技が増えたことで日本人の観戦機会が増え、事前予想より大きな経済効果があったとみている。
一方でたっぷりとお金をかけて開催した肝心のイギリスでは、経済効果はイマイチだった。
英中央銀行は、五輪による第3 四半期のGDP(国内総生産)の押し上げ効果はわずか0.2%と予測。マービン・キング総裁は、「結局は、根本的な経済状況を変えるものではない」と言う。経済効果は期待外れという声も相次いだ。開幕当初、英国メディアは客足が遠のいた「ウエストエンド」と呼ばれるロンドン中心部の商店やレストランの悲鳴を取り上げ、「ロンドンがゴーストタウンと化した」と騒ぎ立てた。ウエストエンドが閑散とした背景には、様々な理由がある。観戦客の行動範囲が五輪会場のあるイーストエンドに偏ったことや、交通機関の大混乱を警戒して市民が都心に寄りつかなかったこと、ホテル代の高騰で一般観光客が大幅に減ったこと、多くの市民が混雑を避けるために海外に脱出したこと、などだ。
一方、英国政府は93億ポンドの五輪関連の支出に対して、今後4年間で130億ポンドの経済効果があると主張する。その効果の半数近い60億ポンドを、海外からの直接投資としたい考えだ。そのため、政府は海外投資家に対して英国の売り込みに必死だった。
ロンドンに投資した成功企業の1つとして紹介されたのが、オーストラリアに本社があるショッピングモールの運営会社、ウエストフィールド・グループだ。同社は、五輪誘致が決まる前の2003年にイーストエンドへの投資を決断し、オリンピックパークに通じる歩道を取り囲むように欧州最大のモールを建設した。同社の英国・欧州担当の責任者、マイケル・ガットマン氏は、「五輪期間中の来客数は平時の2~3倍の600万人に達したと思われ、期待を上回った」と五輪効果を絶賛した。
英国は今後10年でエネルギーや交通などの基盤整備に2500億ポンドの投資が必要とされており、五輪を契機にその恩恵にあずかった企業もある。
GEは2006年以降、夏季・冬季4大会で総額10億ドルを超える受注を獲得。ロンドン五輪では175件のインフラ事業に関わった。会期中は同社の事業を紹介する展示場を作り、1000人以上の主要顧客を五輪観戦に招待して商談の推進に余念がなかった。
英国は、3四半期連続で景気が後退していた。英国にとって、投資先としての魅力維持は死活問題だが、五輪開催による有形無形の遺産が威力を発揮したという記事は見つからない。
オリンピックの招致活動は負けるが勝ちだろう。特に庶民にとっては・・・・・マイナスが多い。