大腸がん検診として、広く行われている「便潜血検査」に疑問を感じていたので私見を書いてみます。
健康長寿を実現したセンテナリアンと呼ばれる100歳高齢者たち。
今世界中の研究者がセンテナリアンに潜む健康長寿の秘密を解き明かそうとしている。
明らかになってきたのは体内でひそかに進む老化がさまざまな方法で抑えられている事実だ。
日本で先月発表された最新の統計では6万5,692人と過去最高を記録している。世界全体では45万人。
慶応大学の広瀬信義氏が調査してきたデータを詳細に解析すると、一般高齢者とは異なる特徴が見つかった。体の中で起きている炎症の度合いが有意に低いのだ。炎症には2つの種類がある。一つは急性炎症。ケガをした時に腫れ上がるなど病原菌などから体を守るために起こる一時的な炎症。もう一つは慢性炎症。誰でも加齢とともに徐々に進む炎症で自覚症状はほとんどない。高齢者の動脈を調べると慢性炎症が進んだ人の血管は動脈硬化が進んでいる。炎症がほとんどない人の動脈は柔軟性があり、きれいな状態で保たれている。
慶応大学では1,500人の高齢者を最大10年間追跡調査して、臓器の状態や代謝など体のどの機能が寿命の長さに関係しているかを分析した。その結果唯一寿命との明確な関わりが見られたのが慢性炎症だった。体の中の細胞が老化するとその細胞からサイトカインと呼ばれる炎症を引き起こす物質が分泌され、周囲の細胞を老化させ炎症が広がる。死んだ細胞からは老廃物が出され更なる炎症の引き金になる。本来我々は免疫でこれらのものを取り除く機能を持っているのだが、加齢とともに免疫機能も落ちてくる。糖尿病動脈硬化、肺疾患、心筋梗塞など重大な病気になる確率が高まる。
慢性炎症度は人間ドックの血液検査CRPで調べる事ができる。
基準範囲は0.30以下。慢性炎症が低くて長生きな人は長寿の家系に生まれたこととあまり相関関係はない。デンマークで行われた同じ遺伝子を持つ双子の研究で、10万組の双子の寿命を生涯にわたって追跡調査すると、同じ遺伝子であるにもかかわらず寿命には大きな差が生じる事が分かった。寿命を決めるのは遺伝的要因が25%環境要因が75%であるという。
センテナリアンが局地的に多い長寿のホットスポットと呼ばれる場所がある。アメリカ西海岸の一部、コスタリカ、イタリア、日本の沖縄などだ。
イタリア南部のアッチャローリ。
今年人口2,000人のうち300人がセンテナリアン。研究が進められているのが、この地域特有の食事。オリーブやナッツなど温暖な気候で育まれた食材を使った地中海食だ。
地中海食を適切に食べた人ほど炎症の数値が低くなる。地中海食に特徴的な脂肪酸やポリフェノール、リコピンなどの炎症を抑える成分が影響を与えた?
ところが解析を進めた結果、意外な事実が浮かび上がってきた。慢性炎症のレベルを国別に分析したデータでは、炎症の数値が下がっていた国がある一方であまり効果が見られない国があった。特にイギリスでは炎症のレベルは変わらず、地中海食が全ての国の人に効果がある訳ではない事が示された。食と健康長寿の関係を調べているのは中国の李教授は土地ならではの食材を食べ続けているセンテナリアンたちの体からある特徴を見つけた。腸内細菌は長年摂取した食べ物によって違ってくる。同じものを食べても国によって効果が異なるのはこうした腸内細菌が関係しているのではないかと考えられる。
地中海の沿岸の人たちにとって地中海食がベストであり、日本人にとっては日本食の方がベストかもしれない。
お魚はオメガ3脂肪酸であるEPA、DHAがたくさん含まれていて慢性炎症がおさえられる事が知られている。大豆による良質なタンパクや体にいいといわれるポリフェノールなども炎症を抑える。にんじん、海藻、おみそ汁の中のおみそにも抗炎症成分が入っている。
もう一つセンテナリアンの研究から食事とは別の健康長寿の要因も注目されている。
世界的な長寿地域の一つ、この地域の最大の特徴は世界一男性の長寿率が高い事(男女比1:1)。1対9と圧倒的に女性が多い日本に比べると驚異的な比率だ。
プーラン教授はこの地域の男性には共通したライフスタイルがある事を見つけた。100歳に到達するまでの身体活動量が多い。ぶどう農園を営んでいる93歳の男性は自ら切り開いた広大な土地を毎日1人で耕し続けている。この地域の男性が一日に歩く距離はおよそ8kmに上る。
更に彼らの肉体に大きな影響を与えているのが島独特の急こう配な地形。一日に何度も斜面を上り下りする生活。豊富な活動量に加えて暮らしの中に織り込まれた負荷の強い動きが健康長寿につながっているとプーラン教授は考えている。
運動が健康によい事はこれまでも知られていたが、最近になって炎症との関係が科学的に明らかになってきた。微小循環は全身に張り巡らされた毛細血管の中で起きている目に見えないレベルの細かな血流で、細胞に必要な酸素や栄養素を送り届ける。たまった老廃物を回収するという役割もある。この微小循環が慢性炎症につながる要因を取り除き老化のスピードを緩めている可能性が見えてきた。長寿地域の人たちも心臓や腎臓など臓器の機能は低下している。ところが微小循環だけは優れた状態を保っている事が分かったのだ。ポイントは毎日の暮らしの中に一定の負荷を与えていく事だ。筋肉を鍛えていくと、エネルギーの消費で肥満も抑えられる。血流がよくなり、酸素をよく運び、たまった老廃物を取り除く。
慢性炎症を抑える上でもう一つ欠かせないものがある。
心の持ちよう、満足感が慢性炎症を抑える事と深いつながりがある事が明らかになってきている。人の満足感と炎症との関係を研究しているスティーブン・コール教授は男女84人の被験者を対象にある調査を実施した。日々の幸せや人生での充実感。今の自分が好きかどうかや日常で得られる達成感などさまざまな満足感を聞き取った。その後調査した人たちの血液を採取し分析を進めた結果、満足感と炎症との関わりを示す遺伝子が見つかった。この遺伝子群は人が何らかのストレスを受けた時に働きを強める。逆に満足感を得ると、その働きが弱まる。
健康長寿の大敵慢性炎症をコントロールする役割が見えてきたCTRA遺伝子群。
更に研究を進めると満足感の種類によって違う働きをする事も分かってきた。調査した人の中には満足感を得ているにもかかわらず、慢性炎症が進んでしまうケースがある。
コール教授が分類した炎症を進めるタイプの満足感は食欲、物欲など動物的な欲求を達成したときの満足感だ。一方炎症を抑えていた満足感はボランティア活動や家族を大切にするなど生きがい型と呼ばれる満足感である。
ここまでは、長寿の条件として、論理的で納得できるものだった。最後に話題に上った長寿者の幸福感についてはどうにも理解できなかった。
世界最高齢のセンテナリアン。イタリアに住む…世界で唯一の1800年代生まれとなったモラーノさん。昔から歌やダンスが好きで頻繁に外出する活発な女性だった。しかし100歳を超えてから体は衰弱。家族の介護を受けているが、14年間家から一歩も外に出る事ができない状態だ。ほとんど寝て過ごすだけの今が人生で一番幸せだという。最新の研究でセンテナリアンの多くが老年的超越と呼ばれる独特の心境に達している事が分かってきたという。
その心理を研究している大阪大学の権藤恭之准教授が調査に訪れたのは…1年前家族と離れ介護施設で独り暮らすようになった女性。75の質問項目で心理状態を探る。高齢者2,200人の調査結果によると、人は70歳を過ぎると年とともに身体機能は衰えていく。それにもかかわらず80歳を超えた辺りから今の暮らしを肯定的に捉える感情が高まり続けていたという。高齢者の幸福感を脳科学の視点で解き明かそうとしているマラ・マザー教授によると、年を重ね高齢となっても衰えない脳の部位は人間の感情をつかさどる前帯状皮質。記憶力や判断力が衰える中、この部位は機能し続け人間の感情は最後まで保たれる。高齢者の感情を調査するため、さまざまな写真を用意し心理実験を行った。よい印象の写真と悪い印象の写真を高齢者と若者に見てもらいその違いを調査すると、若者はよい印象の写真も悪い印象の写真も同じように記憶したのに対して、.高齢者はよい印象の写真をよく記憶し悪い印象の写真は記憶しないという傾向が現れたという。
これが高齢者が長い人生経験を経て到達する独特の心理状況だとマザー教授は指摘する。
世界中で報告されている老年的超越。
独り寂しく過ごしているかに見えるお年寄りも実は豊かで幸せな時間を生きているという。
判断力の低下と認知力の低下、物忘れで恍惚となる・・・・老年的超越の正体ではないかと思う。本人は幸せでも介護する方はたまったものではない。超高齢化社会の闇はこれからが本番だ。こんな人口構成にしてしまった新自由主義の政策が悪い。1/4が高齢者なんていびつな社会をどうやって乗り切ればいいのか?子供たちの6人に一人は貧困だという。誰もが能力と努力で平均的生活を手に入れることができると、寝言を言う奴がまだいる。だいたい、殆どの人間が人工知能にはかなわない未来がすぐそこまで来ている。人間は存在して消費するだけでいい。センテナリアンの老年的超越が人間の尊厳を具現しているものだと認識しない限り、平均的衣食住が何人にも保証され、教育・就職の機会均等が実現しない限り、超格差、低迷する経済は続き、人間の尊厳の回復は不可能だろう。