オータムリーフの部屋

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忍び寄る財政破たん

2017-10-02 | 政治
アベノミクスは2012年12月に始まり、4年9カ月が経過した。アベノミクスの本当の目的は、「国債の日銀引き受け」だと言う識者がいる。それによって、日本の国家財政が破綻から免れているという。
日銀法で禁止されている「国債の日銀引き受け」。国債は一旦、民間銀行が買い、すぐに市場に売りに出され、それを日銀が大量に買うというからくりで実施されている。
政府はアベノミクスによって、日本の国家財政の破綻を回避するために、「国債の日銀引き受け」をしたかった。日本経済においてマネーが溢れ、結果として円安になり、企業業績が改善し、株価が上昇する。
 
アベノミクスは、「3本の矢」(金融政策・財政政策・成長戦略)を主張してきたが、大規模に実施された矢は1本、金融緩和だけだ。アベノミクスの真の目的がばれてしまっては、市場が日本国債に過度な危機感を持ってしまい、国債が大暴落してしまうので、国民を煙に巻くために言葉だけの政策を次々にでっちあげる。日銀(黒田総裁)は、「2%のインフレ率」というのを目標として掲げたが、インフレ率が2%はおろか、ほぼ0%だったにもかかわらず、まるで気にしない様子だ。日銀が国債を買い支えていなかったら、日本は財政破綻となり、国債は暴落して日本経済と世界経済はパニックに陥っていたかもしれない。
中央銀行による国債の引き受けを大量に行なった国は、例外なくハイパーインフレに見舞われている。第2次世界大戦後のドイツや日本、そして最近ではジンバブエ・ブラジル・アルゼンチンなどだ。
日経平均株価も不動産価格も、上がってきた。
 
慶應義塾大学経済学部の金子勝教授は、ロイターとのインタビューで、これまでのアベノミクスでは古い産業の救済に比重がかかり、新しい産業や雇用があまり生み出されていないため、新たな世界的ショックが発生すると痛手が大きくなるとの見解を示した。そのうえでヘリコプターマネー的な政策が選択される可能性があるが、財政赤字は減らず、成長力も低いままの状況になると言う。
 
「古い産業を救済する政策ばかりで、前向きな政策がない。日本は過去30年余りの間に金融機関の不良債権問題、原発事故を起こした東京電力の問題など、経営者がだれも責任を取らない中で、公的資金を投与してきた。この結果、産業構造の転換が進まなくなっている」
 
「日銀の量的・質的金融緩和は、本来は2年で2%の物価目標と、短期的な政策で終わるはずだったのに、目標にこだわり続けてここまできた。しかし、FRB(米連邦準備理事会)もECB(欧州中央銀行)も出口に向かい、日銀も否応なしに出口の崖に向かい始めている」
 
「今は、金融緩和で資産バブルを起し、円安による株高で内部留保を増やして利益を水増ししている状況だが、何らかのショックで、はげ落ちてきたときに、金融緩和によってマネーだけどんどん流しても効果が上がらない。それは当然のことだ」
 
「いずれ日銀の保有国債を永久債に換え、金利をゼロにして、利払いを凍結することも検討されるだろう。これは民間企業で言えば、債務を集めた旧会社と借金なしの新会社に分離する新旧分離と同じ発想だ。ただ、新会社が黒字になればいいが、今の日本経済では、財政赤字が増大したままになり、問題の根本的解決にならない」
 
「アベノミクスを実施している間に、新しい産業と雇用を生み出す努力をすべきだったが、実現していない。今のままで財政拡張を続けても、ヘリコプターマネーのように最終的にはなってしまう」
 
「18世紀の英国はコンソル公債を増発して戦費を調達したが、その後は、産業革命と植民地の拡張でシティが金融の中心になり、成長を遂げることができた。しかし、日本は成長の見通しが立たない中でヘリマネをやってしまうと、後々、立ち上がれなくなる」
 
「生産年齢人口の減少がすさまじい勢いで進んでいる。産業のすそ野がむしばまれ、空き家の激増や農業人口の高齢化はその典型だ」
 
「地域で、教育、農業、福祉、エネルギー分野など基盤産業を厚くしなければならない。一番の起爆剤はエネルギーの転換だろう。エネルギーが変われば、耐久消費財やインフラも変わる。再生エネルギーなどにも重点を置くべきで、いつまでも原発にしがみつくべきではない」
 
「規制緩和などの素朴な議論ではなく、日本の弱点を克服するような大胆な戦略が必要だ」
 
ヘリマネ政策とは、中央銀行が生み出した返済する必要のないお金を、政府が国民に配る政策だ。国が元利払いの必要がない債券(無利子永久債)などを中央銀行に渡し、引き換えに受け取ったお金を商品券などの形で国民にばらまく。ヘリマネ政策なら国民は将来の負担を心配せずにお金を使える。だが、弊害は大きく、世の中に出回るお金が増えるのでインフレになりやすい。
 
元英金融サービス機構(FSA)会長のアデア・ターナー氏は「日本は5年以内にヘリマネ導入を余儀なくされる」と予言する。彼が考える処方箋は「日銀が保有する大量の国債を政府への無利子・無期限の預け金に切り替える」というものだ。形の上では国債による大量の借金が帳消しになり、財政再建への道が開かれる。通常の財政支出の選択肢も増えるうえ、消費者の将来不安も高まらない。
 
しかし、ヘリマネ政策は出口のない大規模緩和ともいえる。「円の信認を押し下げるどころかたたき壊す」(みずほ銀行の唐鎌大輔氏)との危惧も強い。
 
 
戦後のハイパーインフレは財政的要因、実際には日銀引き受けによる裏付けのない貨幣の膨張が原因だった。紙幣は所詮は紙切れで、信認がなければ成立しない。戦争に負け、日本銀行券は44%も増大し、国民の政府に対する信認は急速に失われた。人々が銀行預金から現金をあわてて引き下ろし、日銀は紙幣を発行して対応した。1945年の終戦後半年で日本銀行券は約270億円増刷した。この段階では、現金にはまだ使用できるくらいの信認は残っていた。一般の人は現金を口座から下ろすだけで精一杯だったが、気がついた人は現金をすぐに不動産等に換えた。
太平洋戦争(日中戦争を含む)に投入された戦費の総額は、当時の金額で1935億円。日中戦争開戦当時のGDPは約228億円、その8.5倍になる。現在の状況に当てはめると、2015年の名目GDPの推計値は約500兆円、約4250兆円の国費を使ったことになる。この戦費を税金だけではとても賄いきれないから、国債で調達した。もう一つ、財政赤字が膨らんだ要因は「復興」。復興には、あらゆる資材の中でも、石炭や鉄鋼、電力などの基礎材料やエネルギーが必要だ。そういった基礎材料を扱う業種に、資金や人材、資材などを集中投入して、インフラや工業の基板を一刻も早く復興させようとした。多額の復興債を発行し、当時の政府債務残高は名目GDP比で200%を超える水準まで膨らんでしまい、ハイパーインフレが起こってしまった。
その8割弱が日銀の直接引受けによりなされた。預金封鎖、新円の切り替えさらに最大90%にも及ぶ財産税、そこから逃れられる国民はほぼいなかった。現金を資産に換えても無駄だった。唯一、少額で農地を購入できたかつての小作農の人が得をした。金融財産、実物財産どちらについても持っていれば持っているほど損をした。そのため,総じて戦後のハイパーインフレには強力な累進性が働いた。
 
2013年6月、日本の借金は1000兆円を突破し、日本の債務残高は名目国内総生産(GDP)に対して233.8%まで膨れあがった(2015年)。ちなみに、2010年に財政破綻したギリシャの債務残高は、対GDP比で約170%。先進国で2番目に債務残高が多いイタリアでも同150%程度。貿易収支や貯蓄率など状況が異なるので単純に比べることはできないが、日本の債務残高が最悪水準であることは間違いない。
このまま借金が増え続けると、近い将来、日本経済はどうなるのか。「財政破綻する」「ハイパーインフレが起こる」と危惧する人もいれば、「日本が破綻するわけがない」と楽観視する人もいる。誰にも分からない。確実に言えることは、状況は悪化し続けているということだ。
 
どの時点で財政破綻や預金封鎖が起こるかというと、結論から言えば、日本政府やわが国の金融システムに対する「信用」がなくなったときだ。政府が、資金繰りに窮して国債の利払いや償還ができず、日本円に対する信認がなくなれば、財政破綻へ一直線だ。そのときには、金融システムへの信頼も失われ、預金が一気に引き出される。
 
 
ハイパ-インフレを抑えるためにGHQは「ドッジ・ライン」という金融政策を行う。功を奏したのは、「緊縮財政」。国の借金を減らすため、歳入を増やし歳出をできるだけ減らす。
 
戦後の日本経済を振り返ると、財政赤字だけ見れば対GDP比200%を超えた時点で預金封鎖が起こっていた。今はそれをはるかに上回る水準だ。それでもなお、今の日本が財政破綻しないのは、日本国債の9割強が国内で消化されていること。もう一つは、経常収支が黒字だからだと言われている。
 
要するに「国民の預金で賄っている上に、海外から稼いでいるから、巨額の財政赤字を抱えていても破綻はしないという。しかし、高齢化の影響で貯蓄率はマイナスとなっている。さらには財政赤字額が増加しつつあり、いつまでその大半を国内で賄えるかは不明だ。いつ始まってもおかしくない財政破たん。破たんを回避できる方策はなさそうだ。
日本経済の最大の脅威はデフレではなく、世界最悪の規模に達した政府債務である。ところが、政治家は増税をいやがり、問題を先送りしようとする。今度の総選挙でも、財政再建の政策を掲げる政党はなく、争点がない人気だけに頼る選挙が行われようとしている。

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