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認知症の危険因子

2019-05-09 | 健康
 腸内細菌と認知症の発症は強く関連することが、国立長寿医療研究センターの研究で明らかになった。
認知症の人は腸内で「バクテロイデス」という菌が少ないという。うんちの組成を調べることで、将来認知症にかかる危険性を調べることができるという。
 国立長寿医療研究センターの研究グループは、認知症患者とそうでない患者とのあいだで腸内細菌の組成に違いがあるのではないかと考えた。もの忘れ外来の受診患者から128例(平均年齢 74歳)の検便サンプルを採取して、腸内細菌と認知機能との関連を分析した。
 認知症と診断されたのは34例、非認知症は94例だった。認知機能検査や頭部MRI検査などを行い、検便サンプルを収集し、認知症の有無によって腸内細菌の組成に違いがあるかを調べた。
 その結果、腸内細菌の組成の変化が認知症の独立した関連因子であることが明らかになった。
 細菌の割合により、エンテロタイプI(バクテロイデスが多いタイプ)、同II(プレボテラが多いタイプ)、同III(その他の細菌が多いタイプ)の3タイプに分類したところ、認知症患者はエンテロタイプIが少なく、エンテロタイプIIIが多かった。バクテロイデスは、日本人の腸内で多い細菌で、日和見菌として分類されることが多いが、最近では腸管免疫で重要な働きをすることも分かっており、人体に有用な細菌である。
 詳しく解析したところ、バクテロイデスは、認知症でない患者の45%から検出されたのに対し、認知症患者からは15%にとどまった。また、バクテロイデスが多い患者は、そうでない患者に比べて認知症の罹患率が約10分の1になった。
 
 「糖尿病」「高血圧」「肥満」「喫煙」も認知症の危険因子である。
 「高血糖」「高血圧」「脂質異常症」「肥満」「内臓脂肪の蓄積」「喫煙」などは血管をいためて、動脈硬化を進行させる。心筋梗塞や脳梗塞は動脈硬化で起こる病気だが、脳の血管にも障害をもたらし、認知症のリスクも高める。
 脳の状態と血管性の危険因子の関連について調査した結果、体格指数(BMI)と腹囲周囲径、糖尿病、高血圧、高コレステロールなどを適切にコントロールしないと、脳の血管に障害が起こりやすくなり、アルツハイマー病などの認知症のリスクが高まる。重複して因子をもっていると、認知症のリスクが相乗的に上昇するという。脳が委縮しやすくなり、ニューロン(神経細胞)が集まっている灰白質が少なくなり、 神経線維(脳と脊髄)が集まっている白質にも障害が起こりやすくなる。
 注意しなければならなのは、こうした障害は中年期にはすでにはじまっている。
 
 週に3回のウォーキングを続けていれば、心肺機能が向上するだけでなく、脳の老化を抑えられる。運動により心血管リスクが改善するということは、同時に脳の健康にもつながり、認知機能が向上する。
 
 「DASHダイエット」という高血圧を予防する食事方法も有効だ。▼塩分を控える、▼飽和脂肪酸を抑え、不飽和脂肪酸を十分に摂る、▼野菜は1日350g以上、▼全粒粉など精製されていない穀類を摂る、▼糖質を摂り過ぎない――といった特徴がある。
 運動とDASHダイエットに同時に取り組んだグループでは、脳の機能が9歳ほど若返ったという。
 
 生活スタイルの改善は、もっとも容易に取り組めて、しかも効果的だ。これまで糖尿病や高血圧などの慢性疾患を予防・改善するために指導されることが多かったが、実は脳の健康にとっても重要なのだ。
 不健康な生活は心血管疾患のリスクを高めるだけではない。中年期に入ると脳の委縮はすでにはじまっている。年齢を重ねてからアルツハイマー病などの認知症を発症するのを防ぐために、若いうちに健康的な生活を心がけることが大切だ。
認知機能を向上させるために、運動と食事の改善の両方が必要で、どちらか片方だけでは十分な効果を得られない。保健指導だけを受け、運動と食事を改善しなかったグループでは、認知機能は低下した。
 
 認知症の危険因子として過体重や肥満も重要だ。しかも、肥満である期間が長いほど、認知症のリスクは上昇する。肥満である期間が10〜14.9年に及ぶ、つまりずっと肥満だった人では、認知症の発症率が17%上昇する。
 体重をコントロールし、肥満を解消することが、認知症の予防につながる。
  
認知症の有病者数は、全世界で2015年には4,680万人だったが、2050年までに3倍に増えると予測されている。
そして、最近の研究で関連性が明らかになった腸内細菌についても、糖尿病や肥満、心疾患に影響すると考えられている。
 
人生100年時代。老化は避けられないが、最も困るのは認知症だと思う。生活習慣を見直すことで認知症の発症を遅らせることができるなら、それに越したことはない。しかも運動効果や食事療法で健康寿命も伸ばせるのだから、実行しない理由はないだろう。

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