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ミツバチの大量死と日本人の未来

2014-06-29 | 政治

国際自然保護連合(IUCN)への助言団体として活動する浸透性農薬タスクフォース(TFSP:Task Force on Systemic Pesticides)は6月26日、ネオニコチノイド系殺虫剤などの浸透性農薬に関する研究を『世界総合評価書』としてまとめたことを報告する研究成果発表会を開催した。

 この発表会の実行委員会を代表して菅原文太氏は、「原子力ムラと並び、農薬ムラと呼ばれる世界的に巨大なグループがある。一般市民からは見えにくいが、人々の暮らしに密接に関わっている今日的で重い課題だ」と開催目的を説明した。

 ネオニコチノイド系農薬は、少量の散布で害虫駆除が可能である上に、霊長類に害を及ぼさないとされてきた結果、世界中で使用が広まり、2011年時点での売上げは26億ドル(2600億円)。現在、日本でも、水田での散布を中心に、ゴルフ場の芝の消毒、シロアリ駆除の他、ゴキブリ対策やペットのノミやダニ駆除にも利用されている。

 同タスクフォースによれば、約20年前からミツバチを含めた昆虫の「劇的減少」が顕著に認められるようになった。市場に出まわるようになっていたネオニコチノイドとの関連性が疑われていたが、農薬業界からの資金提供を受けて行われる研究では、両者の因果関係は否定されてきた。一方、業界から距離を取り、独立した研究活動を行う科学者らは、ネオニコチノイドの生態系・環境への影響は深刻であるとしてきた。

 およそ800の査読済み学術論文を精査し、5年の準備期間を経て発表された「世界総合評価書」では、土壌、水、空気に拡散するネオニコチノイドの影響は、ミミズなどの陸生無脊椎生物、蜂や蝶などの受粉昆虫、水生の無脊椎生物、鳥類、魚類、両生類、微生物など、さまざまな生物に及ぶものだと結論づけている。


 ネオニコチノイドは無味無臭で、残効性が長く、さらに殺虫能力が高く、水に溶けることで広く拡散し、無害化に時間を要する。ミツバチは蜜と同じくらい水を飲み、水に溶け出した浸透性農薬の影響を受ける。ミツバチの体内にはネオニコチノイドが蓄積され、長期間持続する殺虫能力のため、低濃度であってもミツバチの群は弱体化していく。
 金沢大学名誉教授の山田敏郎氏は、「ネオニコチノイドは僅かな量になっても、代謝されないという実験データが出ている」と話し、「慢性毒性がほとんど研究されていないが、これから問題となってくる」と危惧を表明。「ネオニコチノイドの脅威が人類にも脅威となる前に、DDTと同じように、禁止する勇気が必要」と訴えた。
 浸透性農薬タスクフォース公衆衛生ワーキンググループ座長の平久美子氏(東京女子医科大学東医療センター)によると、「ネオニコチノイド先進国」である日本では、欧州および米国に比較して多種類・大量のネオニコチノイド系殺虫剤の使用が許容されていると言う。
 リンゴの場合、日本では7種類の使用が認められているのに対し、米国では6種類、欧州では5種類である。残留基準値では、リンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、イチゴ、トマト、茶葉など、多くの品目で欧州の20倍から500倍の値となっている。 さらに、食品や空気を通じて「環境ネオニコチノイド中毒」を発症する人が2000年代から出ている、と平氏は指摘。
 ネオニコチノイド残留食品を摂取した場合の症状には、頭痛、全身倦怠、手のふるえ、記憶障害に加え、不整脈などの心電図異常、腹痛、胸痛、動悸、咳、発熱、筋痛などがある。ネオニコチノイド残留食品の一日500グラム、10日以上連続の摂取は、身体への蓄積の原因となり、中毒発症につながるとの推測が成り立つという。
 
 欧州連合(EU)の欧州委員会はミツバチに有害とされるネオニコチノイド系農薬3種の使用を去年12月から原則禁止とした。
 ネオニコチノイド系農薬を製造している米国と日本の企業は、米モンサント社と住友化学である。モンサント社が開発し、住友化学が製造販売している。しかも、これを推奨してきたのが、農林水産省と農協だ。
 
 ベトナムの森林にばら撒いた枯葉剤で悪名をとどろかせたモンサント社は、遺伝子組み換えによる「F1種子」を開発し、全世界の農家、ひいては、全人類を「食糧支配」しようとしている。「F1」というのは、生物学用語で交雑によって生まれた第一代目の子を意味し、「一代雑種」と言われる。このF1種は、常にそろった品質の野菜ができ、生育も早く収量も多い。味は良いが大きさや形が不揃いな固定種の野菜と比べて、F1種は大量生産に向いていることから、種苗業界は競ってF1種を開発するようになった。(F1種と遺伝子組み換え種はまったく別の話である。)
 
 固定種の種
・何世代にもわたり、絶えず選抜・淘汰され、遺伝的に安定した品種。ある地域の気候・風土に適応した伝統野菜、地方野菜(在来種)を固定したもの。
・生育時期や形、大きさなどがそろわないこともある。
・地域の食材として根付き、個性的で豊かな風味を持つ。
・自家採取できる。
F1種の種
・異なる性質の種を人工的に掛け合わせてつくった雑種の一代目
・F2(F1の種から採取した種)になると、多くの株にF1と異なる性質が現れる。
・生育が旺盛で大きさも風味も均一。
・自家採取では、同じ性質をもった種が採れない。(種の生産や価格を種苗メーカーにゆだねることになる)
 
 昔の農家は、野菜を収穫した後に、来年用の種を自家採取していたが、何かと便利なF1種が普及するにつれ、わざわざ種を採取しなくなり、種苗会社の種を購入するようになった。モンサント社と協力関係にあるのが、住友化学。この会社のトップである「会長」を務めていたのが、経団連の米倉弘昌前会長だ。経団連が、日本のTPP参加を強力に推進してきたのもうなずける。すべてが金もうけのためである。

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