※前回の甲府の記事はこちら(32節・山口戦、2-3)
※前回の大分の記事はこちら(31節・岡山戦、0-1)
<甲府スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 元いわきのルーカス・マセドがポルトガル・SCプライエンセから完全移籍で加入し、今節から登録。
- 荒木の負傷が発表され、8/16に発生して全治4~6週間との事。
- 32節で負傷により交代したジェトゥリオは、以降ベンチ外が続く。
<大分スタメン>
- 負傷離脱していた梅崎が復帰し、32節(仙台戦、2-3)で途中出場。
- 30節(藤枝戦、1-0)で負傷により(HTで)交代した中川の詳細が発表されるも、全治は未発表。
- ユース所属のGK古野が2種登録選手となり、今節から登録。
- 小酒井(中京大)の来季加入が内定し、同時に特別指定となり今節から登録。
酷暑が蝕んだ……とは言い過ぎでしょうが、6戦未勝利と上位らしくない成績を描いている甲府の現状。
ここ最近スタメンを外れているウタカが示すように、ベテランがパワーをもってチームに貢献するには、それなりのベンチワークが不可欠となり。
そんな工夫を交えながら夏を乗り越えたと思ったら、今季の甲府はここからACLという異次元の戦いが控えており。(9/20に第1節)
当然過密日程の中、海外遠征という初の体験も交わり更なる試行錯誤を強いられる今後。
救いは前年の天皇杯を戦っていた時期のような、残留争いとは無縁な事ぐらいでしょうか。
試合が始まると、その甲府より一段上の位置にいる大分がペースを掴むという順位どおり(とはいっても勝ち点差は3ですが)の内容に。
ボランチが降りて3枚になる最終ラインから、盛んに送られる2トップへのロングボールを軸に主導権を握ります。
ハイプレスが持ち味の今季の甲府ですが、こうした立ち回りを受けるとウタカ・クリスティアーノというスタミナ面に不安を抱える1トップでは、ロングボールを抑制するような熾烈なプレッシングは掛けられず。
最終ラインでパスを回されるとどうしてもクリスティアーノが振られるので、そこを三平が前に出てカバーする事で、アンカーに位置取る大分ボランチの片割れが空いて繋がれてしまい。
「丁の字型」でのビルドアップの神髄を見せて主導権を握った大分、10分過ぎからはそのもう一つの利点を発揮。
つまりは必然的に高目を取るサイドバックを利用する攻め、奥を突いてのクロス攻撃に舵を振り始めます。
迎えた前半14分、野村のスルーパスを受けた高畑のクロスがクリアされて左コーナーキックをゲット。
ショートコーナーでの揺さぶりから、再びスルーパスに走り込んだ高畑のクロスが上がると、ニアサイドに入り込んだ羽田がヘディングで合わせ。
強豪チームらしい、セットプレーを確実にモノにしての先制点を挙げた大分。
リードを奪われた甲府、これで自身からも主体的な攻撃をしなければならなくなり。
その姿は大分と同じ、SBを高い位置に上げたうえでのビルドアップの姿勢。(ただしボランチが降りるかどうかは流動的)
攻撃に関しては、ミラーゲームと言いたくなるような布陣となりました。
そんな状況の中、19分に大分は最終ラインでボールを持つも、その脇で羽田が靴紐を結び直す体勢に入ったため動けず。
にも拘らずショートパスで前進を図った結果、ボールロストしてクリスティアーノが拾い甲府のチャンスを招く結果となります。(長谷川が中央でエリア内を突き、こぼれた所を松本凪がミドルシュート・ブロックに当たり枠外)
若干の隙が見られた大分、それを突かんと以降甲府は高い位置を取る三浦を軸にして攻め上がり。
しかし直ぐに長沢狙いのロングボール攻勢で立て直し。
そこから右サイドをスローインでの漸進戦法でCKに持ち込み(26分)、その攻撃が防がれた所で飲水タイムとなり。
大分は先制してからは、こうして相手にペースを与えない事に努めていた風であり。
甲府はそれにより焦りを増幅させていたでしょうか。
ブレイク明けの最初の好機は29分で、しかもそれが甲府ディフェンスのミスによる失点に。
渡邉がラフにロングボールを裏へと放り込んだ事でそれは発生し、走り込む伊佐に蓋をしたマンシャでしたが、ヘッドでGKへ丁寧に戻さんとしたのが仇となり。
短くなってしまった所を、すかさず伊佐がシュートすると、ボールは無人のゴールへと吸い込まれます。
ホームの甲府にとっては頭を抱えたくなるような得点で、リードを広げた大分。
2点差となり、一層激烈に攻めなければならなくなった甲府。
32分に蓮川が前に出て反則気味にボールを奪い、松田のミドルパスを三平が収めて好機に。
エリア内右角でのクリスティアーノのポストプレイを経て宮崎がシュート(GKテイシェイラキャッチ)と、アタッキングサードでのアイディアが活きる展開に持ち込みます。
大分は直後に安藤が足を痛める(一旦ピッチ外へ→復帰)など、受けに回らざるを得ない状況を強いられ。
しかし焦りが増幅する状況は変わらない甲府。
40分に浮き球を収めた長沢から蓮川が奪うも、尚も両者激しいデュエルとなった結果長沢の反則に。
するとすかさず手を出してしまった長沢により両者ヒートアップ状態となり、たまらず両軍止めに入る事態となります。
これにより両者に警告が付き出される事に。
その直後に巻き返さんと蓮川がドリブルで持ち込むと、長沢も負けずに奥へと出されたスルーパスに対し、受けにいった松田をスライディングで阻むという具合に火花を散らし。
その後44分に大分が決定機を作りましたがモノに出来ず。(高畑が左ポケット奥へ進入、マイナスのクロスを入れるも合わず)
3点目を入れる望みが無くなった大分は、以降アディショナルタイム、甲府の攻撃に対しひたすら凌ぐ体勢に。
誰も居ない所へと蹴り込むクリアを頻発と、セーフティに立ち回り。
そして0-2のまま前半を終えると、ホームの観衆から上がるブーイング。
巻き返さなければいけなくなった甲府は、ハーフタイムで動きウタカの投入に踏みきります。(クリスティアーノと交代)
後半が始まると、その意気込み通り攻勢に持ち込む甲府。
大分にとっては前半終了間際の姿勢も仇となったか、引き続き押し込まれ続ける事となり。
前半との違いはその守勢は望まざるものという様相で、大分の前線はプレッシングを掛けにいったものの、それをGK渋谷のフィードを軸にいなす甲府。
そしてすかさず最終ラインの裏を突くという具合に、振り回されていた感がハッキリと見られました。
後半5分にGKへと戻したのち渋谷がダイレクトでフィード、三平が胸で落としたボールを中村がダイレクトでスルーパス。
右サイドで受けた宮崎がポケットへ切り込んでグラウンダーでクロスを送り、走り込むウタカの前で何とかクリアと、大分に生まれるギャップを突く攻撃が繰り広げられ。
そして7分再び中村のスルーパスから、受けたウタカが右ポケットを突くという流れに。
カットインを経て放たれたシュートはブロックされるも、尚も拾って右サイドを突く甲府、今度は松田が右ポケット奥へ切り込んでのマイナスのクロス。
ニアにウタカが走り込み、羽田と縺れるもフリックのようになってファーへと流れた所を、三平がシュートしてゴールに突き刺します。
この流れを得点によりしっかりと掴んだ甲府、これが大きかった。
大分は直後のキックオフから、左サイド奥へと持ち込んだのが唯一の攻撃機会。(戻して作り直すも結局モノに出来ず)
甲府の流れは尚も続き、松田・三浦のSBが高目を取る攻撃の神髄を如何なく発揮します。
たまらずベンチも13分に動き、キャプテンの梅崎を投入。(渡邉と交代、同時に長沢→鮎川へと交代)
明らかに試合を落ち着けようとしたベンチワークでしたが、それが果たされる事は無く。
尚も押し込まれ続け、16分にはゴールキックの際に遅延行為でGKテイシェイラが警告を受けてしまい。
そのテイシェイラをさらに不幸が襲います。
18分の甲府、プレッシングを綺麗に嵌めて敵陣中央で松本凪が奪う絶好機となり、エリア内へこぼれるボールに三平が走り込み。
これを前に出て抑えたGKテイシェイラでしたが、この際に足を痛め、最初は攣っただけと思われたもののどうやら筋肉系をやってしまったようであり。
これによりGKを交代するアクシデントを強いられる大分、西川を投入します。
同時に伊佐→上夷へと交代して3-4-2-1へシフトと、守勢を受けての采配を執った下平隆宏監督。
しかしその勝利への執念は実らず、尚もペレイラが反則を犯した際に遅延行為で警告(ボールを抱えこむ)と被害が広がる大分。
ここから甲府のセットプレー攻勢となりFK→右CKを経て、そのCKからの二次攻撃で後方から三浦が放り込み。
これをヘッドでクリアにいったペレイラでしたが、フリックのような合わせになってしまった結果、ゴールへと吸い込まれるボール。
押し込まれ続けた末に最後はオウンゴールと、決壊を象徴する形で同点となりました。
それと同時に飲水タイムが挟まれ、第4クォーターに。
その最初の好機も宮崎のミドルシュートに持ち込んだ甲府(28分・ブロック)と、未だ変わらない事を予感させる試合展開。
それを変えにいった大分、29分に最終ラインから繋ぐ攻めで巧く敵陣右サイドに持ち込み。
ようやく後半最初の攻撃らしい攻撃に持ち込んだかと思ったその刹那、野嶽→上夷へのバックパスがズレてしまい、これが最悪の事態を招きます。
すかさず反応した三平がダイレクトでスルーパスを送ると、抜け出して受けたウタカがGKと一対一に持ち込みエリア内へ進入。
GK西川を左にかわしにいった結果、後追いでウタカを倒してしまう西川。
たまらず反則ならびにPKを告げる笛が鳴り、西川に警告が付き出され。
大分GKが2人とも警告を受ける珍しい試合となったものの、そんな事を考えている暇は無く注目点はこのPK。
当然キッカーはウタカが務め、勝ち越しの絶好機となったこのPKを、読み合いの末中央へのシュートを放ったウタカ。
しかしGK西川は釣られずセーブと、見事に防ぎきります。
そして流れが変わったかのように、直後に大分の決定機。(32分)
自陣でのボール奪取からカウンターに持ち込み、梅崎のスルーパスを受けた羽田が右奥を突いてグラウンダーでクロス。
これを受けた野村がエリア内からシュートするも、蓮川のブロックに当たった末に左ポストを叩いてしまいます。
詰めた鮎川のシュートもマンシャにブロックされ、結局モノに出来ず。
それでもファイティングポーズを取り直したと判断したか、34分に野嶽→藤本へと交代した上に、フォーメーションも4-4-2へと戻した大分。(上夷が右SBに回り、藤本はFW)
しかしこれにより、(再び?)三浦とマッチアップする事となったベテラン梅崎の所から崩壊。
36分にマンシャからのパスを受けにいった三浦に対し、後方からのスライディングで倒してしまった梅崎、反則・警告を受け。
ここでは甲府陣内だったものの、直後にそれが最悪の位置で起こる事となります。
37分の甲府の攻撃、ロングパス→ウタカのフリックがこぼれた所を、中村がダイレクトでミドルシュートを狙ったもののミート出来ず大きく右へと逸れ。
しかしこれを松田が拾って継続し、入れられたクロスを大外で長谷川がシュート。
上夷がブロックで防ぐも、その影響で蹲る上夷を尻目に尚も甲府の攻めは続き、長谷川から左ポケットへ送られるスルーパス。
これに走り込んだのが三浦と梅崎で、自慢のスピードで追い抜く三浦、再度スライディングにいった梅崎に削られる事となり。
そして反則の笛が鳴り響き、三浦に軍配が挙がる形となったこの勝負の結果、この日2本目のPKとなります。(判定への異議?で保田に警告)
そして先程の失敗の影響か、キッカーを務めたのは長谷川で、しっかりとGKの逆を突いてゴール左へ突き刺し。
とうとう達成した逆転に大興奮となるスタジアム、長谷川も同様でありユニフォームを脱いでサポーターの下に駆け寄った結果警告を受けたものの、齎した勝ち越しゴールという結果に比べれば屁でも無く。(直後に甲府は宮崎・三平→鳥海・武富へと交代)
追う立場となった大分ですが、既に交代枠は無く。
裏抜け中心の攻撃を繰り広げるも状況は厳しく、何時センターバック(ペレイラ・安藤)を上げてのパワープレイに入るかという葛藤を強いられます。
中断により目安が9分となったATでも、最終ラインから繋ぐ姿勢を続ける大分。(その入りで甲府は松本凪→林田へと交代)
しかしさしたる好機は作れず、逆に甲府がそれを遮断して左コーナーに持ち込むなど、勢いは依然甲府という展開。
その際に長谷川が足を痛めたものの、残していた交代枠を使用して事無きを得ます。(山本を投入して3-4-2-1へシフト)
この影響で目安の9分を過ぎても終了とはならず、篠田善之監督の異議が響く状況となったピッチ内。
それでも大分最後の攻撃、上がりを選択したペレイラがロングボールを落としたものの繋がらず。
そして試合終了を告げる笛が鳴り、久々の勝利の味を噛み締めた甲府。
これから昇格争いとACLとの二足の草鞋を履く事となりますが、クラブ一丸で乗り切る事が出来るでしょうか。