今季の一種の流行である「4-3-3への移行」の代表格となっているFC東京。
しかしあくまで守備重視なのは不変と、らしさを発揮している長谷川健太監督。
この辺は清水時代の後半(5~6年目)と変わっていないな、と一種の安堵感を与えてくれます。
選手の移籍・故障が目立つ中、中盤に安部やアルトゥール・シルバを抜擢して何とか陣容を整えているものの、現状は4試合未勝利と足踏み。
そんな中で迎えたこの日の名古屋との一戦。
4-3-3と言えども、登録上右ウイングであるディエゴ・オリヴェイラが積極的に守備に参加するなど、相手に主導権を渡さないサッカー。
彼の働きもありこの日は名古屋の左サイドバック・吉田は力を発揮できずと、しっかりとストロングポイントを封じ込めていました。
そして4-5-1気味にブロックを作り、名古屋に形を作らせません。
対する名古屋は、3日前に行われたルヴァンカップの勝ち抜けに奔走。
それは何とか果たされたものの、全力で戦ったツケが表れたかこの日は全体的に精彩を欠き気味。
ボールを持たされる展開となり、かつ吉田・金崎といった重要なピースを相手に消されているので中々攻められず。
しかしFC東京サイドもシュートシーンは2度のみ。
前半12分のレアンドロの直接フリーキックと、23分の安部のエリア外からの枠外シュート。
堅い立ち回りという印象で、飲水タイムに突入。
明けた後に、閉塞感を打破したい名古屋が新たな動き。
ボールを受けられずにいたガブリエル・シャビエルが、降りてきてビルドアップに参加する場面が目立ち始めます。
それでもその効果が表れる前に、状況的にも不利に落とし込まれる、つまり先制を許す事に。
33分、室屋が敵陣やや深めでボール奪取してのFC東京の攻撃。
レアンドロのポストプレイを交えて細かくパスを繋ぐと、最後はそのレアンドロがエリア内左からシュート。
ブロック2枚による狭いコースをモノともせず、通されたシュートはゴール右隅に決まり、欲しかった先制点を得る事に成功しました。
その後前半も終盤を迎え、堰を切ったかのように双方シュート数を重ねる展開に。
40分のFC東京、高萩のロングパスを左SBの小川がエリア内まで上がって受け、彼のパスから永井がシュート。(GKランゲラックキャッチ)
42分は名古屋の好機、中谷の右へのロングパスを金崎が開いて受けた後、成瀬が中央へドリブル。
そしてエリア手前からシュートを放つも、GK波多野のセーブに阻まれます。
アディショナルタイムに突入し、FC東京は左サイドから小川のロングパスを永井が頭でトラップ、そのまま奥で拾ったのちエリア内へ進入。
そしてマイナスのパスを送ると、レアンドロがシュートしますが名古屋・成瀬が辛うじてブロック。
一方の名古屋も、右サイドでスルーパスを受けたシャビエルがカットインしてパスを出し、走り込んだ前田がシュートするも枠を捉えられず。
シュートの応酬で前半を終えます。
前年は寸での所でリーグ優勝を逃したFC東京。
当然今季もそこを目標として戦っていると思われますが、そんなクラブに容赦無く襲い掛かるのが、海外移籍という荒波。
橋本が5節(浦和戦)を最後にロシアに移籍、そして今節は室屋(ドイツ2部に移籍)のラストマッチとなり、一挙に2人も手放す事となります。
思えば前年も、夏場に久保が移籍したのを境に勢いは止まり、最終的にマリノスに逆転優勝を攫われたシーズンでした。
現在J1首位を走っているのが川崎ですが、そのライバルチームという関係を、J2オリジナル10の時代から(正確にはもっと前?)保ってきたFC東京。
この海外移籍というファクターで見てみると両クラブとも対照的で、FC東京が盛んに海外に選手を輩出する(前述の3人の他長友・武藤・権田)一方で、川崎は川島と田中(現岡山)・板倉ぐらい。
この分野では先端を進んでいるFC東京ですが、反面Jリーグでの成績は安定せず、川崎が現在黄金時代到来と言ってもいい成績を残している。
アプローチは異なっているものの、この2チームは今後もライバルとしてリーグを牽引していって貰いたいものです。
後半が始まり、名古屋は頭から2枚替えを敢行。
シャビエル・前田に代えて山崎・相馬を投入し、金崎・山崎の2トップの形へとシフト。
立ち上がりは一進一退の後、後半5分に名古屋の長い攻め。
ジョアン・シミッチを中心とした長いパスワークから、右サイドで成瀬のスルーパスに抜け出したマテウスがグラウンダーでクロス。
これを山崎が足で合わせにいくも触れず、そのまま左サイドに流れた所を、拾いにいった稲垣に対しGK波多野が飛び出してスライディング。
クリアしようとしたのでしょうが、結果的に稲垣と交錯してしまい反則に。
GKの飛び出しての反則で、カードが出るかと思われましたが何も無し。
良い位置でのFKを得たものの、ここはキッカー・相馬がクロス気味に直接狙うもGK波多野がパンチング。
後半もFC東京は助っ人陣が積極的にゴールを狙っていきます。
11分、スローインから敵陣左サイドで形を作り、永井のポストプレイをサイドから走り込んで受けたレアンドロがシュートするもGKランゲラックが片手でセーブ。
その直後にはシルバもシュートを放ちますが、これもGKランゲラックに阻まれます。
その後助っ人は早めに止めなければならないという意識が働いたか、17分に名古屋・成瀬がレアンドロにチャージしてしまい反則・警告。
不利を打開しようと、名古屋は選手交代を重ねていきます。
10分に吉田→太田、21分にシミッチ→石田。
石田投入後は、ほぼ稲垣の1ボランチという感じで、前掛かりになって攻撃を展開していきます。
それでも強固なFC東京の守備陣を破れず。
33分にはロングパスのこぼれを相馬が拾いミドルシュートするも枠外に。
35分には稲垣が縦パスを出した後、こぼれ球をダイレクトでミドルシュートを放ちますがGK波多野がキャッチ。
ミドルシュート攻勢に出るもやはり結果は出ず、時間を浪費していきます。
焦る名古屋陣営に対し、37分に最悪の結果が。
攻めきれず相手ボールになった所、パスを出したFC東京・シルバに対し成瀬がアフター気味にスライディング。
これで2枚目の警告を貰った成瀬、退場となり以降10人になってしまいます。
その後は石田が空いた右SBへシフト。
数的有利となったFC東京ですが、リードしている事もありペースダウン。
以降は安部がミドルシュートを放った(44分・枠外)ぐらいで、基本的には相手の攻撃をいなす事に集中します。
そのままATに突入し、後が無い名古屋はセンターバック・中谷を前線に上げてのパワープレイ体制へ。
それでもブロックを固める相手の前には、愚直にロングボールを入れるだけの攻撃しか出来ず、チャンスも作れません。
このまま終了かと思われたAT4分、クリアボールを拾った原(レアンドロと交代で出場・AT)がドリブルで進み、エリア内に走るアダイウトン(永井と交代で出場・24分)にラストパス。
アダイウトンが切り返した所、スライディングで防ぎにいった名古屋・石田が、勢い余って手にボールを当ててしまいハンド。
ラストプレーという所でPKを献上してしまいます。
敗色濃厚という所でPKを迎えた選手達の心境はいかなれど、アダイウトンが蹴ったこのPKは、GKランゲラックが見事に足でセーブ。
気持ちが切れていない事を見せたものの、エリア外へとボールが出ると同時に試合終了を告げる笛が。
結果的に、室屋の送別試合を勝利で飾る事が出来たFC東京。
橋本・室屋の移籍に、キャプテン東の故障という合わせ技も重なり、傍らから見ても層が薄くなってきた印象を受けます。
果たして夏の移籍期間はどう動くでしょうか。