ちょっと悩みました。
先日観た「夜叉ヶ池」と「海神別荘」の2本のお芝居は、私のイメージする歌舞伎の舞台とは多分に違うものだったので、どう捉えればいいんだろうという疑念ばかりが先走り、感想を書きあぐねていました。一週間経った今も、まだ上手く言い表わすことはできそうにありませんが、まだ千穐楽まで間があるので(ええ、言い訳ですとも!)疑念には目を瞑ってメモしておきます。
*夜叉ヶ池*
春猿さんが百合と白雪姫の二役をなさっていてどちらもそれぞれ素敵でしたが、特に白雪姫。生身の人間である百合は、哀れさを誘うところが出ていて良かったけれど、白雪姫のワガママな異界のお姫様の方がより春猿さんに合っていたと思います。眷族との立ち廻りなどは少し退屈だったけど、白雪姫の出の場面は春猿さんの存在感が際立って感じました。
その白雪姫の傍らの吉弥さんの万年姥がまた素敵でした。威厳があって妖しい雰囲気が春猿さんのお姫様を引き立てていたんじゃないかしら。
段治郎さんの晃、右近さんの学円はどちらもお役にぴったりで、春猿さんの百合と3人のやりとりは、お互いに気遣いあう良い関係が感じられてほのぼのと嬉しくなりました。でも、やっぱり最後の立ち廻りがどうも退屈。これは音のせいなのかなぁ?緊張感が欠けていたように感じてしまいました。
そういえば、右近さんの学円はあの後どうなってしまうんでしょう?春猿さんの白雪姫の嬉々とした様子は思い浮かぶのですが、思い出せません。
*海神別荘*
「夜叉ヶ池」が意外に普通の歌舞伎(うーん、物凄くへんてこな言葉だわ。)だったので、油断しました(笑)。
幕が上がると白くデコラティブな柱が並び、正面のスクリーンには海底の映像が揺れます。そして、上手にはハープ!洋装のハープ奏者の方が海の音を奏でます。
もう、すっかり天野さんの世界でしたね。
次に表れる女房たちの衣装がまた素敵でした。着物なんだけど、袖だとか裾だとかがまあるくふんわりとしていて、すっごいすっごい可愛い!!後から登場する黒潮騎士たちの衣装も素敵!やっぱりまあるいマントを羽織っていて、マントの内側だけが水色であとは真っ黒なのね。この騎士たちの動きが揃っていて、きれいでしたね~。
さてさて海老蔵さんの公子ですが、ぴったりとした黒い衣装に長い長いマント。金の刺繍も素敵でしたが、それ以上に美しい横顔。怖いように完璧な鼻梁だわ、とオペラグラスを外せなくなりました(笑)。これまで見た海老蔵さんのお役の中で、いちばん好みかもしれません。
沖の僧都は猿弥さん。「真鯛大小八千枚。鰤、鮪、ともに二万疋。鰹、真那鰹、各一万本。………」の台詞が楽しい!
黒潮騎士と共に白い龍馬に乗って現れる玉三郎さんは、夢か現実か分からないところを彷徨っているように美しくて、ただただうっとりするばかりでした(お声がほんとうに水の中で話しているように聞こえたんですが、あれは何か仕掛けがあったのかしら?)。
ところが、公子と女房たちが繰り広げる遊び(双六)の辺りから、雲行きが怪しくなってしまいます。大正時代の海の底のこの世のものではないお話、と思おうとすればするほど私の中ではおかしな歪みが生まれてきてしまいました。
泉鏡花の作品は、流れるような言葉の美しさと異界と現実との交錯の間に漂うロマンチシズムだとかエロチシズムだとかいうのを楽しめばそれでいいのかなぁと思うのですが、それを舞台に乗せられると現実のカタマリである私には正視し難い程の恥ずかしさを感じてしまい、ええと、、引いてしまいました。。。
で、一度引いてしまうとなかなか元に戻れない私…。
なんだかもやもやとした気分のまま舞台を見つめていました。視覚的には申し分なく美しいのに、私のアンテナがそっぽ向いていたようでした。
海老蔵さんの公子は最後まで強くて純粋な姿を見せてくれて素敵でしたが、玉三郎さんの美女と並ぶとちぐはぐな印象を感じてしまい、最後まで素直に観ることができませんでした。きっと、玉三郎さんが作る完璧な鏡花の世界が、俗物的な私には合わなかっただけなんだと思うんですけど。
なぜか消化不良なお芝居になってしまいました(泣)。
私が楽しめなかった理由の一つには、「歌舞伎の音」が大きな要素を占めているんじゃないかと思っています。附け打ちさんだの義太夫さんだの大向こうさんだのが聞こえなかったですからねぇ。
次の週末には夜の部を拝見する予定なので、今度はリセットしてどっぷりと玉三郎ワールドに浸ってきたいと思います
先日観た「夜叉ヶ池」と「海神別荘」の2本のお芝居は、私のイメージする歌舞伎の舞台とは多分に違うものだったので、どう捉えればいいんだろうという疑念ばかりが先走り、感想を書きあぐねていました。一週間経った今も、まだ上手く言い表わすことはできそうにありませんが、まだ千穐楽まで間があるので(ええ、言い訳ですとも!)疑念には目を瞑ってメモしておきます。
*夜叉ヶ池*
春猿さんが百合と白雪姫の二役をなさっていてどちらもそれぞれ素敵でしたが、特に白雪姫。生身の人間である百合は、哀れさを誘うところが出ていて良かったけれど、白雪姫のワガママな異界のお姫様の方がより春猿さんに合っていたと思います。眷族との立ち廻りなどは少し退屈だったけど、白雪姫の出の場面は春猿さんの存在感が際立って感じました。
その白雪姫の傍らの吉弥さんの万年姥がまた素敵でした。威厳があって妖しい雰囲気が春猿さんのお姫様を引き立てていたんじゃないかしら。
段治郎さんの晃、右近さんの学円はどちらもお役にぴったりで、春猿さんの百合と3人のやりとりは、お互いに気遣いあう良い関係が感じられてほのぼのと嬉しくなりました。でも、やっぱり最後の立ち廻りがどうも退屈。これは音のせいなのかなぁ?緊張感が欠けていたように感じてしまいました。
そういえば、右近さんの学円はあの後どうなってしまうんでしょう?春猿さんの白雪姫の嬉々とした様子は思い浮かぶのですが、思い出せません。
*海神別荘*
「夜叉ヶ池」が意外に普通の歌舞伎(うーん、物凄くへんてこな言葉だわ。)だったので、油断しました(笑)。
幕が上がると白くデコラティブな柱が並び、正面のスクリーンには海底の映像が揺れます。そして、上手にはハープ!洋装のハープ奏者の方が海の音を奏でます。
もう、すっかり天野さんの世界でしたね。
次に表れる女房たちの衣装がまた素敵でした。着物なんだけど、袖だとか裾だとかがまあるくふんわりとしていて、すっごいすっごい可愛い!!後から登場する黒潮騎士たちの衣装も素敵!やっぱりまあるいマントを羽織っていて、マントの内側だけが水色であとは真っ黒なのね。この騎士たちの動きが揃っていて、きれいでしたね~。
さてさて海老蔵さんの公子ですが、ぴったりとした黒い衣装に長い長いマント。金の刺繍も素敵でしたが、それ以上に美しい横顔。怖いように完璧な鼻梁だわ、とオペラグラスを外せなくなりました(笑)。これまで見た海老蔵さんのお役の中で、いちばん好みかもしれません。
沖の僧都は猿弥さん。「真鯛大小八千枚。鰤、鮪、ともに二万疋。鰹、真那鰹、各一万本。………」の台詞が楽しい!
黒潮騎士と共に白い龍馬に乗って現れる玉三郎さんは、夢か現実か分からないところを彷徨っているように美しくて、ただただうっとりするばかりでした(お声がほんとうに水の中で話しているように聞こえたんですが、あれは何か仕掛けがあったのかしら?)。
ところが、公子と女房たちが繰り広げる遊び(双六)の辺りから、雲行きが怪しくなってしまいます。大正時代の海の底のこの世のものではないお話、と思おうとすればするほど私の中ではおかしな歪みが生まれてきてしまいました。
泉鏡花の作品は、流れるような言葉の美しさと異界と現実との交錯の間に漂うロマンチシズムだとかエロチシズムだとかいうのを楽しめばそれでいいのかなぁと思うのですが、それを舞台に乗せられると現実のカタマリである私には正視し難い程の恥ずかしさを感じてしまい、ええと、、引いてしまいました。。。
で、一度引いてしまうとなかなか元に戻れない私…。
なんだかもやもやとした気分のまま舞台を見つめていました。視覚的には申し分なく美しいのに、私のアンテナがそっぽ向いていたようでした。
海老蔵さんの公子は最後まで強くて純粋な姿を見せてくれて素敵でしたが、玉三郎さんの美女と並ぶとちぐはぐな印象を感じてしまい、最後まで素直に観ることができませんでした。きっと、玉三郎さんが作る完璧な鏡花の世界が、俗物的な私には合わなかっただけなんだと思うんですけど。
なぜか消化不良なお芝居になってしまいました(泣)。
私が楽しめなかった理由の一つには、「歌舞伎の音」が大きな要素を占めているんじゃないかと思っています。附け打ちさんだの義太夫さんだの大向こうさんだのが聞こえなかったですからねぇ。
次の週末には夜の部を拝見する予定なので、今度はリセットしてどっぷりと玉三郎ワールドに浸ってきたいと思います