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原発問題の深層2 : 信頼性について

2012年08月09日 | 連載完 原発問題の深層

< 大飯原発 >

前回は、原子炉の安全率と事故率を検討しました。

今回は、それに輪をかけて酷い状況を列挙します。

原子炉の安全率と事故率は計算上問題が無いと当時から言われて来ました。

しかしそれを発言し支持する組織や人々がまったく信用出来ない状態に陥っていました。

福島の事故については国会事故調査委員会の報告にありましたが、ここでは遡って見ます。


< 活断層 >

原発企業の問題

99年東海村で臨界事故発生し、ウラン2.4kgの溶解作業中の事故で2名死亡重傷1名、被爆700名、屋内退避31万人発生、損害賠償額150~600億円。
 
ここでは年間715トンのウラン原料製造の中間工程を行っており、この作業は核爆発(臨界)の可能性がある主要な作業であり、職場ぐるみの手抜き作業であった。

この事故調査委員長は、「直接の原因は全て作業者の行為にあり、責められるべきは作業者の逸脱行為である。」と述べている。

美浜の伝熱管損傷事故は振れ止め金具の位置が正規でない為に起きたとし、同様に、些細な取付けミスとしている。

一方でチェルノブイリ原発事故は程度の低い人為ミスが重なったとし、日本では考えられないとした。

ここに二つの問題がある。

一つは、作業者が正規通りに行えば大災害を招く事故は無いと言う意識である。

安全対策で熟知されているハインリッヒの法則「29件の軽微な事故から1回の重大事故が発生する」を無視している。このような認識は航空業界などでは通じず、高頻度の事故がそれを裏付けている。

今一つは、核分裂の事故は人間の手に負えないということです。

東海村での臨界事故時、その終息を可能にしたのは安全委員(学者)の命がけの現場指示でした。

工場責任者達は狼狽し自動安全装置(どこにも無いが)はなく、目に見えない致死にいたる放射線相手に作業をしなければならないのです。

結論、これらの事故は原発運用から34年後のことであり、その組織と製造・管理の信頼性は著しく劣る。甚大な被害発生が起きないという根拠はどこにも無い。


< 1000トン用振動台 >

原子力学会について

福島事故の5ヶ月後に発刊された原子力学会誌の事故への反省態度を見る。

巻頭から「・・国家予算規模の経済的な打撃が関連分野全体に厳しくのしかかってくると、覚悟しなければなるまい。・・このような世界でも前例のない厳しい非常事態に直面したからと、想定外であったと逃げ腰になり、これまでの数々の努力の成果を見捨てて、一気に新エネルギーを頼るのは賢明とは思えない。・・」

実は、この執筆者は前述の東海村事故終息に身を挺し、この時、原子力学会会長になっていた。

別の委員は、「設計で考慮した高さ5mを大幅に超える津波15mが発電所を襲った。・・・想定する津波に対する考え方を見直すことが必要である。なおここで想定すべき津波高さは、考えうる最大高さではなく、あくまでも設計上想定する津波高さであり、リスクを考慮して合理的に決定することが必須である。」と記している。

コメントするのもおぞましいが、要点を記す。

ここに至っても想定外で逃げ切ろうとしている。一旦事故が起きれば数兆から数十兆円、数万から数十万人に被害が及ぶことを自覚していながらである。

学会と産業擁護の為なら国民の安全を無視し、そのことを臆面もなく公言している。


< コンピューターによる振動シミュレーション、赤色が危険な所か >

監督官庁と政府について

原子力安全委員会は原子力の学者・従事者390名からなる審議会で、原発の基本設計を審査し、最終は電力会社一任である。監督の権限はなく、片手間であり責任はない。

一方、米国の原子力安全体制では3000人を要する研究・監督機関であり権限を持っている。

現在、地震や津波に関する調査と評価は電力会社が行い、それも立地場所が決まってからであり、活断層調査も当然後になる。

しかし電力会社には活断層や地震の専門家はいない。活断層が注目されたのは80年代以降である。

かつて国は活断層直上には建てないと公言してきたが、そのことが露見すると08年国会答弁で首相は「原子炉施設が活断層の上にあることのみをもって不適合となるものではない」と言わざるを得なかった。

この政府の電力会社と経産省の原子力安全・保安院の尻ぬぐい発言は無責任の極みである。


次回は原発事故の特殊性とその深層について見ます。








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