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中東に平和を! 20: イスラエルとパレスチナの紛争 2: 若者の声 2

2016年07月11日 | 連載完 中東に平和を

*1

前回に続いて、パレスチナとイスラエルに住む若者の声を紹介します。




< 2. 分離壁 >


質問 「2000年後のイスラエルとパレスチナはどうなっていると思いますか?」
この回答は、両者で大きく異なる。

「独立」と答えたのは、パレスチナ人で18件、イスラエル人で4件でした。
この「独立」には、パレスチナ人の回答「開放、自由、我々が戻る」を含めた。
イスラエル人の「開放、相手が去る、支配」を含めた。

パレスチナ人の回答で次いで多いものを挙げると、「平和」と「不明」の各3件、「破滅、最悪」の2件、「継続」の1件です。

イスラエル人の意見は分かれている。
「破滅、原爆、廃墟」、「平和」、「継続」が「独立」と同数の4件で並ぶ。
次いで「不明」と「共存」が3件で、「パレスチナ」と「どちらの一方」が各1件ある。

両者に共通して、成り行きは「神」に依るとする回答がある。
イスラエルでは「救世主」の3件、パレスチナでは「神、コーラン」の2件です。

独立または他を排除の意思はパレスチナの若者の方がイスラエルの若者より強い。
圧倒する力で支配を広げるイスラエルだが、その若者達に安堵感は無い。
全体の文面から推察して共に将来に悲観的で、かすかな希望にすがっているように思える。




< 3.1978年のキャンプ・デービッド合意、平和条約 >


質問 「(A)好き国と(B)嫌いな国を教えて下さい。」
先ず、パレスチナ人の回答を見る。
「好きな国」で最多は、「自国」の12件、次いで「イラク」の6件、「アラブ、イスラム」の3件です。
「嫌いな国」の最多は、「米国」の14件、次いで「イスラエル」の13件、欧州の3件、「アラブ、イスラム」の2件です。
奇妙な事に、パレスチナの若者は交戦国のイスラエルではなく、米国を一番に嫌っている。

イスラエル人の回答を見る。
「好きな国」で最多は、「自国」の17件、次いで「他の大陸の国」(国名は割愛)の5件、「不明」の2件です。
「嫌いな国」の最多は、「イスラム、アラブ」と「不明」の各7件、次いで「反ユダヤ」「欧米」の各3件、「自国」の1件です。
イスラエルの若者は、ここでも交戦国のパレスチナより周辺のアラブ全体を嫌っている。
イスラエルの若者には、他の回答でも見られたが自国を嫌い、自己批判する者がいる。



< 4.湾岸戦争 >

補足説明
パレスチナの若者がイラクに好感を持つのは、1990年の湾岸戦争前夜のフセイン大統領の発言にあると思われる。
彼は、米国がイスラエルのパレスチナ侵略を許すのに、クウェート侵攻を非難するのは片手落ちだとブッシュ大統領を批判した。
また米国が嫌われる理由は、ここ半世紀のアラブへの干渉や軍事行動にあり、アラブの民衆も同様に嫌っている。




< 5.ヨルダン川西岸の現状、パレスチナの自治は風前の灯火 >


まとめ
この結果は10年以上前の若者の気持ちを示しているのだが、私は少し明るさを感じた。
この若者達は、欧米とアラブ各国が紛争を招き、こじらせ、放置していると考えている。
重要なことは、パレスチナとイスラエルが、互いに一方的に交戦国だけに戦争開始の責任を押し付けたり、憎悪の対象にしていないことです。
しかし彼らは自国を愛する一方、絶望し現状から抜け出せるとは思っていないようです。

70年ほど前に始まった一握りの入植活動が、やがて途方もない死者と難民を生むようになった。
当事者の若者達は、個人として戦争から一歩身を引いているように思えるが、集団として対立は深くなるばかりです。
そして、弱者はやがて滅びる運命のように見える、かつてユダヤ人が2600年前に離散したように

次回に続く。



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