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病と医術の歴史 8: 現世人類、最古の医術

2013年09月02日 | 連載中 病と医術の歴史

< 穿頭術例 >

今回は現世人類最古の医術の痕跡を巡ります。
そこには、飽くなき治療への意欲、果敢なチャレンジ精神がありました。




< ハムラビ法典 >

医者や医術書の存在を示す最古の証しは、中近東にあった。
紀元前18世紀のハムラビ法典はメソポタミアの都市国家の法律集です。
この中に二つの奇異な条文がある(要約)。
「医者が骨折や腸を治療した場合、患者は銀貨を支払う。」
「医者が青銅のナイフで目を切開して失明させれば、手を切らなければならない。」
これらは医者が幅広く治療を行い、報酬を受け取り、さらには責任を問われることを示している。
驚くべきことに、眼球に細い針を刺し、手術をしていたらしく、法で規定しなければならいほど普及していた。
古代ローマ時代の白内障手術はこの手術が伝わったのかも知れない。



< パピルスの医学書 >

エジプトで紀元前20世紀から、外科や内科の医術が書かれたパピルスが多数見つかっている。
これらの記述はさらに1千年以上遡るものがある。
紀元前2500年頃のレリーフに、ナイフによって割礼手術を受けている様子が描かれている。



< エジプトの割礼のレリーフ(レプリカ) >

現存する最古の手術例は、フランスの新石器時代の埋葬地で発見された。
紀元前5000年頃の男性の頭蓋骨に二つの穴があいていた。
この穴断面の骨組織が再生していることから治療跡だと考えられる。
黒曜石などの鋭い石器で環状に切開したらしく、切り取られた円盤が共に埋葬されいる例がある。
このような先史時代の穿頭術はヨーロッパ、中国、ペルーで広く見つかっている。

このような危険な手術が行われた理由は、古くは悪霊を追い払う為とされていた。
しかし、この手術の多くが男性頭の左側に集中しており、戦闘の負傷を治療したらしい。
穿頭術後の生存率はかなり高く、中世ヨーロッパや古代ゲルマン、古代ペルーで25~80%だった。

先史から古代にかけて、既に人類はかなり踏み込んだ治療を広く行っていた。
次回から、古代文明の医術を見て行きます。





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