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中東、戦争と平和 28: テロについて 8: テロ犯と兵役拒否者

2016年08月24日 | 連載完 中東に平和を

< 1.イスラエルでの自爆テロ >

今日は、パレスチナとイスラエルの3人の若者の必死の思いに迫ります。


ある自爆犯の遺書

この遺書はエルサレムの路線バスで自爆テロを行った若者がその3日前に書いたものです。

「・・・・
ハマス(注釈1)という寛大な組織の一員にして下さり、・・・幸せに思います。
・・・・
まず私が爆弾に殺され、同時に敵を殺せることを幸せに思います。
私は殺人がしたいからではなく、パレスチナ人が他の民族と同じように生きることを望んでいるからです。
・・・
お母さま、お父さま、親戚のみなさん、私はこの道を進むことを強制されたわけではありません。
・・・
最後の審判の日、神が私を通じて家族を天国に導くことを、神に祈ります。
・・・
私の旅立ちを、悲しみ、泣かないで下さい。
神が望まれるならば、私達は近いうちに天国で会えるでしょう。」
(注釈2)

彼は大学院でイスラムを学び、さらに法律家を目指していた。
しかし、彼はパレスチナ解放を望み、この事件で民間人20人を殺した。

なぜ彼は残酷な自爆テロを行ったのだろうか?



< 2. 戦闘が続くレバノンの難民キャンプ、2007年7月 >


あるテロ犯の家族
日本のフォトジャーナリストがパレスチナの少女の写真集を作っていた。
彼は4年ぶりに彼女の家族を訪れた。
この家族は、キャンプの住まいを砲撃で破壊され、ベイルートの親戚の家に居候していた。

「母親はキャンプを支配した右派民兵に抗議して、銃で殴られ大手術をした。
父親はイスラエル軍の砲弾を受け手術した。
長男はキャンプの工場で働いていたが、イスラエル軍に逮捕され、拷問され、追放されてアフリカに渡り重い病気になった。
次男はキャンプでの交戦中に死亡した。
長女の夫は、イスラエル軍の爆弾の破片が当たり全身不随になった。
叔父は過激派の銃弾を目に受けたが、命を取り留めた。
弟は爆撃で死んだ。」
(注釈3)

そこに彼女の姉(18歳)の姿はなかった。
この姉が率いるゲリラの小グループがイスラエルに進軍し、交戦の末、彼女は捕まった。
彼女は収容所で拷問を受けたが、まだ生存しているらしい。
この収容所は、国際赤十字もアムネスティも立ち入ることが出来ない。

多くの人は思うだろう。
「彼女の悲しみと憎しみは理解出来るが、なぜ戦うのか?
イスラエルのはるかに過酷で無差別な報復が返って来るのに。」
この若者達は単に復讐の鬼と化したのだろうか?

このパレスチナの二人のテロ犯の胸中にあるのは「亡国の危機にあっては、自分の命を厭わない」ではないだろうか?



< 3.イスラエルの高校生が兵役拒否で投獄、2014年 >


ある兵役拒否者の声明文

「・・・・
イスラエル国家が建国以来、力づくで造ることに固執している純粋なユダヤ人居住地域が、どのように我々の安全を強化するのか私は理解出来ません。
パレスチナのテロによる抵抗を抑圧するために、テロよりもさらに残酷で大規模な攻撃がどのようにして私の社会のためになるのか、私は理解出来ない。
・・・・
大多数のイスラエル国民が、このような事態を変えたいと望んでいます。
・・・
イスラエル軍人と資本家は権力を維持するためにあらゆることを行います。
・・・・
これらの人々が真の敵であり、・・・。彼らにこそ、アラブ人とユダヤ人は共に立ち向かうべきです。
・・・」
(注釈4)

これはイスラエルの高校3年生達が兵役拒否運動を行い、首相宛に出した声明文です。
この若者には前述のテロ犯の思いが通じているようです。




< 4.イスラエルの戦車に投石する少年 >


あとがき
オスマン帝国の時代から20世紀の始めまで、パレスチナではキリスト教徒、ユダヤ教徒、ムスリマは同じ町エルサレムで平和に共存していた。
それが修羅場と化したのは、ユダヤ人の大量入植後のことです。

初期には、パレスチナ側は無関係な民間人や外国人を狙うテロをほぼ行わなかった。
また自爆テロはイスラム教に反するとされていたが、徐々に侵略者を追い出す聖戦の為なら可とされるようになった。

結局、戦争がエスカレートするにつれ、軍事力の差が両集団の戦いの違いになった。

次回に続きます。



注釈1
「ハマス」(HAMAS)は,1987年12月,パレスチナ・ガザ地区で発生したインティファーダを契機に反イスラエル運動がパレスチナ全域に拡大した際,同地区の「ムスリム同胞団」の最高指導者シャイク・アフマド・ヤシン(2004年にイスラエルによる掃討で死亡)が,武装闘争によるイスラム国家樹立を目的として設立したスンニ派武装組織。

注釈2
引用要約、「正直な気持ちを話そう」p141より。

注釈3
引用要約、「パレスチナ」p96より。

注釈4
引用要約、「正直な気持ちを話そう」p95より。




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