ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

道尾秀介【ノエル a story of stories】

2015-04-21 | 新潮社

タイトルからは一瞬季節のずれを感じてしまいますが、読み終えてみれば、その印象はなくなります。
まあ、表題作自体はクリスマス時期のものではありましたけれど、オールシーズンOK。
サブタイトルの「a story of stories」も利いています。

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 ノエル
 a story of stories


 著者:道尾秀介
 発行:新潮社
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強くあること、清くあることが自然とできれば楽だけれど、なかなかそうはいきません。
だからこそ、自分の弱さ、濁りを知ってなお、強く、清くあろうとすることが尊いことと思え、見えざる縁がそれを助けていくことがせつなくもあたたかい1冊。
せつないけれど、救われる気分で読了できるものがたりです。
私にとってはミステリの人という印象の著者ですが、これはその味は控えめ。

それなりの数の本を読んでくると、読む本すべてに新鮮な気持ちで向きあうことは少し難しくなり、こういう感じの本が読みたいという気分があるなら、おおよそそれにあった本も選ぶこともできるようになってしまいます。
その気になればはずれなし。
それでも、読むのは、たくさんのものがたりの似ているようで違っているその差を感じたいから、そして、予想をほんの少し裏切ってほしいからなのかもしれません。
この本は、気分にぴったりで、裏切り加減もほどよい1冊でした。

蛇足ですが、これは黄色のスピンの新潮文庫でもありました。
まだ、慣れなくって、ものめずらしく思ってしまいます。
落ち着いた通常の色も好きですが、他の色もあれば楽しいのに。
空色とか、海色とか。
ちょうどあれです。Pilotの色雫のシリーズみたいに。
ああ、買っちゃうかも…。



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