久方ぶりの「師匠と私」シリーズ。
今回は新潮社からなのですね。
太宰の辞書
著者:北村 薫
発行:新潮社
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「私」ももはや人妻で母親。前作からの17年間は、本の中でも、外でも同じように過ぎたということなのでしょう。
さて、私自身の17年は?
そんな気持ちにもさせられますが、内容としては「六の宮の姫君」と同じ趣向の1冊です。
文学作品の中に現れる謎を、「私」が丹念に追っていきます。
表題作の他にも作品はありますが、タイトルから察せられるとおりメインとなる作家は太宰治。
作品は「女学生」です。
太宰治がお好きな方ならば、読む楽しみもひとしおというところでしょうか。
とりあげられているのが、もとになった「日記」があったという作品「女学生」というのも、文学作品というものを考える上では意味深いところかもしれません。
このシリーズを読むと、小説や詩を読むということの奥深さを思わされ、翻って、自分の読みの浅さを痛感します。
当たり前のことながら、文章を辿ることだけでは作品を読みとることにはならず、そう書かせた想いにまで心を砕いてこそ。
でも、そんなふうに作品に向かい合うことも難しければ、読んでの想いを自分の言葉にすることの難しさはなおのことです。
小説とはいかなるものか。
小説を読むとはどういう意味をもつのか。
答えがひとつであるわけもなく、唯一の正解もおそらくはない。
ただ、自分なりの答えをいずれは見つけたいものだと思います。
出版元は新潮社に変わりましたが、カバーはこれまでと同じく高野文子さん。
このカバーをとると、白地にうっすらと花火が紋様として浮き上がった紙で装丁されています。
読んだ内容を蘇らせる装丁に、大切につくられた本なのだなと、しばし、手と目がとまりました。
知らなかったよ…嬉しい。
文庫のカバーも高野さんになるかなー?
るいちゃん、高野さん、好きだものね。
単行本でも大丈夫なら進呈します。まずは明日持ってくわ(^^)
(それでも某所に駄文を書きました^^;)
で、続く『夜の蝉』でグッと評価が上がり、昨夜『秋の花』を読み終えたところだったりします。
太宰への道のりは、まだ半ばというところですが…。
私は基本的には好きな小説家ですし、情より理が勝ってしまうと自分をどこかさびしく思う円紫さんも好きですが、後になればなるほど、この作家が書く悪意、普通の人の 悪意が、とてもおそろしく 感じます。衝動的な殺意よりも。
決して相性がいいとは言えない作品でしたが、読みたい本のリストだけはかなり長くなりました。。。。とほほ。
でも、合わなかったですかー。じゃあ、増えた読みたい本は、著者以外の名著の数々…。私は逆に読んでも、そういうふうにしか読めない気がして、はなからリタイアしてしまいました(^^;
かもめさん。すごいです。