ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

原田マハ【楽園のカンヴァス】

2014-07-13 | 新潮社

本屋さんで、この文庫を見た時、「これはいかん。今のこの状態はいかん!」と切実に思いました。
話題になっていたけれども、読む機会を逸していた作品が、すでに文庫化。
日々のことに流されまくっている間にこれほどに時間が経ってしまったのかと、平台に積まれた本を前にして愕然としてしまいました。

それがこの作品『楽園のカンヴァス』。

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 楽園のカンヴァス

 著者:原田マハ
 発行:新潮社
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伝説的コレクターが秘蔵するルソーの大作は真作か否か。
名画(あるい名贋作)誕生と来歴をめぐる謎は美術ミステリの王道であり、そう目新しいものではありません。案外、美術系のミステリはパターン化されていると思います。
それでも好んで読んでしまうのは、とりあげられる作品の多彩さ、それ以上に千差万別(となるはず)の作品と人との関わりに惹かれるから。
人の想いが、作品の来歴を生むとでもいえばいいでしょうか。
いかにその作品が愛されたか。
金銭的価値によって愛されるというのも、それはそれでありでしょう。
そういった作品もおもしろいし、美を財としてみるのも、価値の測り方としてはわかりやすい。

けれども、この作品『楽園のカンヴァス』での作品と人の関わり方は、なんだか羨ましいようなものでした。
こんなふうに絵画に出会うことができたら、なんて幸せなことだろうと。
そして物語としての余韻も美しい。
読んでいて、これほど蘊蓄云々から離れた感じのする美術ものをちょっと思い出せません。
あれこれ言ってしまいたいけれども、ミステリとしての読んだ時のネタバレになってしまうとナンですので。

売れた作品ですので改めていうまでもありませんが、おススメです。
髪を切りに行ったときに携帯。テルテル坊主のような格好をしていながらも、頭の中は別世界という、本を読む楽しみを満喫しました。



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