読み応えがあった。
筋を追うことはさほど重きをなさず、文章を辿り、その連なりを読むことにこそ意味があると思わされる。
読みさしの本のページを開くとき、もしそれが前回の続きでなくても良いのではないかしらと一瞬思ってしまった。
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辻
著者:古井由吉
発行:新潮社
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「辻」を前にして、ものを思う人々が登場する。
老境にさしかかった人々、そうでない人もそのたたずまいは、どこか重さを感じさせる。
もしかしたら、読みながら私が「昭和だ」と思っていたのは、その印象のせいかもしれない。
乾いているが、軽くない。
血や家、土地のしがらみから解放されているようでいてそうではなく、かといって固執することもなく、平穏の中にからっぽな空間を持っている。
その「空」は空虚さの「空」ではなく、実のある「空」というか、これが年月を経て得るある種の達観なのかもと、そう感じながら読了した。
登場人物たちの心情を理解するには、到底、及ばない。
共感も難しい。
もうしばらくすればわかるか…と自分に問いかけてみたが、それはあきらめることにする。
先になっても、私では経験の深さも、思考の深さも足りはしないだろうから。
著者と大江健三郎氏の対談も収められている1冊。
著者の訳詩の仕事についてと、それが小説家としての仕事に及ぼす影響が主な話題だった。
これを全部ちゃんとわかって読める人とはいったいどういう人たちなのかしら…と思う。
詩を体系的に読んでいる普通の人の数はどれほど?
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