ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

鴻上 尚史【名セリフ!】

2011-08-08 | 筑摩書房
 
私が鴻上尚史さんを好きだといっても、何の説得力もないかもしれません。
なぜなら、ここには鴻上さんの本の記事がひとつもないから。
確かに数は読んでいないのですが、とおーーーーい昔、エッセイを読んで以来、私にとっては「信頼できる人」という位置づけです。
この本も、その信頼感を強化してくれました。

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 名セリフ!

 著者:鴻上尚史
 発行:筑摩書房
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古今東西の作品からとりあげられているのは全部で31の名作。
鴻上さんから、語る対象である作品や人物への、少なからぬ尊敬や友愛の情が確かに感じられます。
それでいて、文章はさらりとして、情熱が時にもたらす妙なしつこさを持ちません。
終始穏やかにして冷静。
簡潔な説明と的確な解説にすごくよくわかった気持ちになれてしまうことうけあいの1冊。
知らない作品についてであっても、文章だけで、ああ、そうなのかと、半ば納得できてしまう気がしますし、知らない作品への期待も膨らむというものですが、どれかひとつだけでも知っていれば、そう!と膝を打つ感じが味わえると思います。

では、がんばって、目次を。

第1章 恋の名セリフ(Ⅰ)
シェイクスピア『ロミオとジュリエット』 松尾スズキ『マシーン日記』 チェーホフ『かもめ』 唐十郎『少女仮面』
第2章 笑いの名セリフ
ニール・サイモン『はだしで散歩』 アラン・エイクボーン『レラティブリー・スピーキング』 別役実『赤ずきんちゃんの森の狼たちのクリスマス』 永井愛『ら抜きの殺意』
第3章 悲しみの名セリフ
ソポクレス『オイディプス王』 アーサー・ミラー『セールスマンの死』 ピーター・シェーファー『アマデウス』 野田秀樹『赤鬼』
第4章 セックスの名セリフ
アリストパネース『女の平和』 テネシー・ウィリアムス『欲望という名の電車』 三島由紀夫『サド侯爵夫人』
第5章 知性の名セリフ
ベルトルト・ブレヒト『三文オペラ』 サミュエル・ベケット『ゴドーを待ちながら』 ウージェーヌ・イヨネスコ『授業』 安部公房『友達』
第6章 決意の名セリフ
イプセン『人形の家』 モリエール『タルチェフ』 清水邦夫『真情あふるる軽薄さ』 寺山修司『戯曲 毛皮のマリー』 井上ひさし『父と暮らせば』
第7章 喜びの名セリフ
ソーントン・ワイルダー『わが町』 三谷幸喜『オケピ!』 横内謙介『ホテルカリフォルニア』
第8章 恋の名セリフ(Ⅱ)
木下順二『夕鶴』 斎藤憐『上海バンスキング』 つかこうへい『定本熱海殺人事件』 鴻上尚史『恋愛戯曲』

…途中で抜粋にしようと思ったのですが、できませんでした。
どれも抜けない作品。でも、このうちの何本を観ているか、読んだことがあるかなんて…言えない…。(田舎に住んでいると舞台は遠いのです。いいわけですけど。)

中に、表現方法の「時代を映す鏡度」という話題がありました。
「鏡度」と社会への影響度の関係が語られていて、それ自体はなるほどと思えるものなのですが、正直、私自身は現代の鏡であるような作品を観ている気も、それを意識している気もしません。
観ているのは、むしろ、時代が変わっても変わらない部分のようにも思います。


 

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