ヘーゲル『哲学入門』中級 第二段 自意識 第二十三節[自意識の衝動、概念の実現]
§23
Dieser Satz(※1) des Selbstbewusstseins(※2) ist ohne allen Inhalt. Der Trieb des Selbstbewusstseins besteht darin, seinen Begriff zu realisieren und in Allem sich das Bewusstsein seiner zu geben. Es ist daher: 1) tätig, das Anderssein der Gegenstände aufzuheben (※3)und sie sich gleich zu setzen; 2) sich seiner selbst zu entäußern (※4)und sich dadurch Gegenständlichkeit und Dasein zu geben. Beides ist ein und dieselbe Tätigkeit. Das Bestimmtwerden des Selbstbewusstseins ist zugleich ein sich Selbstbestimmen (※5)und umgekehrt. Es bringt sich selbst als Gegenstand hervor.
第二十三節[自意識の衝動、概念の実現]
自意識のこの命題にはまったく内容がない。自意識の衝動とは、自らの概念を実現すること、そうして、あらゆるものの中に、自らを意識することである。それゆえに自意識は、1)対象の他者性を廃して、そうして、対象を自分と同じものにする。2)自分自身を外在化して、それによって自分自身に対象性と存在を与える。1)2)の両方は同じ活動である。自意識が規定されるというのは、同時に、自分を自己規定することであって、その逆も同じである。自意識は自らを客体として作り出す。
※1
Dieser Satz
この命題とは、
Ich=Ich、Ich bin Ich.「私=私」「私は私である」という自意識の命題。
命題とは判断を文に表したもの。その判断の正否が問われる。
※2
Selbstbewusstseins 「自意識」と訳した。武市健人氏も同じ。金子武蔵氏や牧野紀之氏は「自己意識」と訳している。
※3
aufheben 持ち上げる、廃する、止揚する、揚棄する、などと訳される。
対象の他者性がなくなるだけで、対象性は保存され残っている。
※4
entäußern
外部に現す、外在化する、外化する。
行動によって自己を外部に存在させ客体化する。労働は自己の外在化である。
1)は理論的な立場、2)は実践的な立場といえる。両者は同じ一つの活動の両側面である。
※5
「自意識」の衝動は、人間の生産活動のあらゆる側面に見られる。
自動車や船舶をはじめ、政治や国家に至るまで、すべては概念を実現しようとする人間の自意識の衝動の結果である。