
雨のにほい
コトコトと蒸気が踊る
湯気の向こうの
柔らかな時間をくゆらせ
スープつくりに
君は鍋に視線を貼り付ける。
曇天模様の空の下
そろそろだね
の僕。
それではと、
傘を持ち
クルクルと
思い出を回すように
傘の柄を回してみる
ちょっとした手品師のように
クルクル
クルクル
雨粒を避ける
おろしたての傘に雨が付く
クルクル
クルクル
傘を回す
クルクル
クルクル
思い出回る
クルクル
クルクル
君は鍋をかき混ぜて
クルクル
クルクル
想いを沈め込む
鼻をきかせて
雨のにほい
匂いが届いてくるね
香りでは
消されてしまうから
君が想いを浄化したスープ
湯気と一緒に
雨に紛れて
にほいを届けてくれた
ほらほら
雨の日になると
におう
優しい
君の作るスープの匂い