幼い頃
テレビっ子だった僕は
ほとんどテレビを独占してて
今みたいに
一家に何台もテレビのある時代では
なかった。
親もみたいテレビがあっただろうに
ほとほと
僕がテレビを独占して、
アニメ、特撮ヒーローもの
ばかり見ていたので
親父もテレビを見たくても
見れなかった
特に夜の7時〜8時台は
ゴールデンタイム
当然 アニメ、特撮ものの
ド ストライクタイム。
かち合う時間帯。
チャンネル争いするまでも
なく、泣く泣く親父も諦めて
いた。
でも、ある時、母親が
「お父さんにもテレビみせてあげなさい」と
テレビを独占してる僕に
言葉を投げかけた。
夜の7時のNHKニュースは
親は必ず視聴したい番組であった。
夜の7時台はアニメでいい番組が目白押しだから
譲れない僕だったが
あまりチャンネルを独占してると
可哀想なので
7時半からチャンネル権を親父に
ゆずった。
NHKニュースの後に
やる7時半からの
「新日本紀行」という番組が
あった。それを親父は
好んで見ていた事を
思い出す。
「新日本紀行」?
なんでこんな番組がいいのかなぁ
ドラマでも、映画でもなく
紀行もの…
今となって僕も歳を重ね
見聞が広くなって大人の
端くれになり、
親父が見ていた番組が
なるほど、とわかるように
なってきた。
子供には
むつかしかった世界。
母親もドラマがみたかったようで
それは
僕にも強制的にみせていた
「ありがとう」とか
ホームドラマ、朝のNHK
連続テレビドラマとか
アニメ、特撮もだんだん
作品を絞らされて
家族で僕だけの
テレビでは無くなっていった。
「新日本紀行」のオープニング
テーマ曲が流れると
あの頃
食い入る様にテレビを
見ていた親父を思い出す。
画面から
全国各地からの
情景に
目を細めながら見ていた
親父。
その向こうに故郷をみていた
のかも知れない。