ようこそ里山へ 茨城笠間・青葉って永遠

茨城県笠間市。観光と陶芸の町の知られざる宝。穏やかな里山と田園は心の原風景。庭と山川草木、体感する旬の言の葉たち。

栗の花に見送られて

2011-06-27 04:52:34 | 里山に捧ぐ
 笠間界隈の栗の木たちも、いよいよ満開になりました。
写真は我が家のご近所の栗畑です。
白い雄花の房が、一面に満ち満ちて、この季節の里山の彩りとして、はなかなか壮麗なものです。
愛犬家の皆さんにも、とっておきの散歩コースになっています。

クリ畑の親父さんが農道の草まで刈ってくれているので、ありがたい。
この、凛とした一筋の道も、里の宝です。

 栗の花たちに見送られて、昨日は早朝に出発、東京・小石川植物園のご近所で仕事をしてきました。
こちらのお客様とは、都内で長らく世話になった親方の時代からのご縁です。
お庭には、昔からの太い椎の木があります。

長らくお庭にも椎の木にもご無沙汰しておりましたが、9年前から、またお世話になっています。
その理由は、親方の後をよろしく、とのご依頼でした。
前年の晩秋に、親方が亡くなったのです。

親方は、とても面倒見のいい人でした。
急な病で亡くなったので、皆が悲しみました。
私もとてもお世話になりましたから、驚きと悲しみを痛感していました。
どこか、親方の死を素直に受け入れられない気持ちを抱きながら・・・

時間もだいぶ経った、ちょうど今頃の季節、本当に久しぶりにお庭を再訪しました。
そして、なつかしい太い椎の木に触れた時のことです。
突然に、涙がとめどなく溢れてきました。
私はこの時、はじめて親方の死を受け入れることができたのかもしれません。
椎の木が、真実を伝えてくれたのでしょうか。
この幹のどこかに、記憶のアルバムがあるのかもしれない。

 木に接していると、木の素晴らしさというものを本当に感じます。
精神的なものまでも伝えてくれる、気高い、尊い仲間です。
それは、木の生き方によるものでしょう。

毎日毎日少しづつ少しづつ、お天道様に感謝し、地道に根を伸ばし、葉を広げる。
空気のよみがえりと水のめぐりを支え、生き物に安らぎをもたらす。

木の活動は、着々と現場にて、自然とともに地道に生きています。
考えるだけでなく、地道に動いている。
小さいことも大切にしながら。
その実際の積み重ねこそが、いつか、精神に大きな感慨をもたらす源泉になるのではないだろうか。

 耕して天に至るとも言います。
これは、洋の東西を問わず、地上の真実でしょう。
ジャンジオノさんという方の本に「木を植えた男」というのがあります。
友人が働く出版社では、絵本も出しています。
主人公は、地道に、失敗にもくじけず、木を植え続け、ついには緑の森が地上に育っていく物語。
その男は来る日も来る日も、たんたんと木を植え、生きた。
その生き方こそ、木の心そのものではなかったか。

 木のような心で生きるということが、実は一番幸せなことかもしれない。
ひとつひとつの木は、平凡かもしれないけれども、この世に無くてはならないもの。
故郷の風景も、清々しい散歩道も、地道に栗の畑を草刈る親父さんたちあってこそ。

 親方を偲びつつ、椎の木にしばしの別れを告げ、無事に一日の仕事を納めました。


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