雀庵の「常在戦場/32 人民は軍に従えと言われても」
“シーチン”修一 2.0
【Anne G. of Red Gables/318(2021/6/12/土】先日「身尚平学」(身尚は一文字、「とうへい学」=寝そべり学)という言葉が中国の若者文化を象徴するキーワードとしてメディアでもさかんに取り上げられているという話を紹介した。
が、ニューズウィーク日本版6/8のラージャオ(辣椒、王立銘、中国人風刺漫画家。トウガラシ名でコラムニストとしても活躍)による「中国の若者たちの間で、資本家への抵抗として急激に広がる『身尚平(タンピン)』主義が見落としている重要な事実」によると、事はそう単純ではないようだ。以下、引用。
<王さんはごく普通の大学生だった。卒業後、大都会の会社に就職して食費を切り詰め節約し、3年間でやっと5万元(85万円)をためた。しかし故郷でも不動産価格は最低1平米当たり1万元(17万円)。しかも高騰し続けている。休まず毎日残業するほど働いても、給料では不動産に手が出ない。マイホームを持てなければ結婚もできない。全ては自分と無縁。なら「身尚平(タンピン)」するしかない──。
「身尚平」は中国で最もはやっているネット用語だ。何もせず横になって寝るという意味だが、転じて全く努力せず、ただ最低限の生活を送ることを指す。今の中国では王さんのような何千何万もの若者が「身尚平」主義を選ぶ。彼らはどんなに努力しても運命を変えられず、将来に希望を見いだせない。
「われわれは身尚平を選んだ。これ以上、資本家たちのために働かない。何か間違ったことがある?」と、王さんたちは言う。普通の労働者は働けば働くだけ資本家に搾取される。「身尚平」こそ資本階級に抵抗できる有効な手段だ、と彼らは考える。
「資本家に搾取される」──この言葉が社会主義中国に現れるのは不思議なことだ。共産党が1949年に新中国を建国したのは、資本家の搾取をなくすことが目的だった。72年間を経て、この世界一の社会主義強国の若者たちは資本家に搾取され、「身尚平」でしか対抗できないと公言している。
しかし、王さんたちは「われわれは資本家らの企業のために残業や努力をしない。しかし国家のためには何でもやる」とも言う。努力しても未来が見えない、頑張っても自分の運命を変えられない。王さんたちはこれを体制の責任とは思わず、資本家に搾取と貪欲の罪をかぶせる。「身尚平」を選んだ中国人の若者の中には、ネット愛国者の「小粉紅」も少なくない。彼らは欧米に対する中国政府の強硬な態度を賛美するが、目の前の現実にはあまりにも無力で「身尚平」しか選べない。
そして王さんたちは一つ大事なことを忘れている。それは彼らが愛している中国が社会主義公有制国家であることだ。土地と生産財は全て国に属する。つまり、この国を管理している政府こそ、最大の資本家なのだ>
ラージャオ氏の経歴は中共現代史みたいだ。「1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。2009年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住」
上記コラムでトウガラシのように刺激的だったのは、共産主義を目指すはずの中共政府が「最大最強の資本家」として君臨しているということ。それ以下に大中小さらに泡沫零細企業の資本家が群をなしているわけだ。習近平は「新時代の中国の特色ある社会主義」「社会主義市場経済」とか言っているが、「共産主義統制経済以上、資本主義自由経済未満」という“党高民低、開発独裁の発展途上国経済”というのが実態だろう。上流が美味しい思いをし、下流は貧困に喘ぐイビツな国家。
発展途上国経済は「人件費の安さ」で外国資本を引き寄せるが、トウ小平の偉さは「韜光養晦」(警戒されないように牙を隠して、内に力を蓄えろ)や「改革開放」(既得権に胡坐をかかずにチャレンジしろ)、「先富論」(早い者勝ち、できる奴から儲けろ)と大胆な経済発展策を打ち出したことだ。これが支那人の伝統的な「蓄財蓄生美酒美食」願望に火をつけた。己が儲かれば寝食を忘れて奮闘努力する民族なのだ。「天に蔵を置く」という清貧思想はゼロ。
トウ小平の貪欲刺激策によって中共の名目GDPは1980年の3030億ドルからわずか30年の2010年には日本を追い抜いて6兆330億ドル、2021年(推計)には16兆6420億ドル(IMF推計)、日本の3倍にもなった。
2012年に国家主席になった習近平はただの単純な毛沢東信者、紅衛兵になり損ねた中坊だから、「韜光養晦」なんていう海千山千のトウ小平の深謀遠慮なんぞ「辛気臭い」と弊履の如くに捨ててしまった。江沢民=上海閥や胡錦涛=共青団派は習近平を「ただの紅二代、ボンクラ、悪さはしないだろう」と中共トップに据えてしまったのが大失敗だった。危険極まりない戦狼になって、今や中共は世界中から危険視、厄介者扱いされるまでになった。
中共軍サイト「軍網」によると国民はすべて軍の命令に従う法律が成立した。
<6月10日、第13回全人代常任委員会で、中華人民共和国軍の地位と権利と利益の保護に関する法律が可決され、2021年8月1日から施行される習近平国家主席令第86号が公布された。
軍人の地位と権利と利益の保護に関する法律は、習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想を指導し、習近平の強大な軍隊の思想を徹底的に実施し、軍隊の戦闘力の構築に奉仕することを基本目的とし、権利と義務の統一、物質的保証と精神的インセンティブの組み合わせ、国家経済社会開発との調和の原則に従い、軍人の地位、名誉の保護、待遇の保証、優遇措置などの規範を定め、軍人が職務を遂行し、軍人が社会全体の尊敬される職業となるよう促す。
国防と軍隊建設の重要な法律であり、軍人の地位と権利と利益の保護のための基本的かつ包括的な法律である、云々>
支那では「良い鉄は釘にはならない」、つまり「兵士はゴロツキ」というのが4000年の歴史で培われた評価である。民にとって兵士は厄介者でしかないから、心の底では軽蔑し、怪しんでいる。上記の法律では、人民は将兵を侮辱したり軽侮したり逆らったり、命令を拒否すると厳罰を食らうことになる。
ドライブしていたら兵士に車を止められ、「作戦のためにお前の車を徴発する、降りろ!」と言われたらそうするしかない。まるで蒋介石率いるゴロツキ国民党軍そっくり。元々、中共軍はゴロツキにもなれなかった乞食部隊(3分の1は裸足、兵器がないので棍棒を担いでいた)だったから、健軍100年でようやくゴロツキ部隊に進化するわけだ。中共ワンソイ、万歳、加油!
有事の際には身尚平(タンピン、とうへい)の“隠遁青年”は勤労動員とか徴兵されるのだろうか。逆らえば処罰され、強制労働で塹壕掘りをさせられたり。重機の免許でも取っておけば懲役も半分の期間で済むかもしれない。まあ、大卒の中華ヒッキーはプライドが高いから、汗を流す肉体労働は嫌がるか。
ヒッキーでもイザ!となれば「国家のためには何でもやる」、その気概は結構だが、蒋介石は兵士の逃亡を防ぐために顔に入れ墨をさせたという。支那には奴隷の逃亡を防ぐために目を潰す伝統があったそうだから、入れ墨なんて“なんてことない”のだろう。前線から逃げる、軍から離脱する、その途次に民家を襲って三光(奪う、殺す、焼き尽くす)のが伝統で、だから人々は「兵士はゴロツキ」と4000年間、蔑んできたわけだ。習近平が「将兵を尊敬しろ」と命じたところで「ただの紙切れ」、4000年の智慧が消えるわけがない。
苛烈な法律で国家が強くなるか・・・民心が離れてむしろ短命になるだろう。清朝が300年続いたのは結構アバウトな治世だったからで、上は蓄財に励み、下々の民もそれなりにのびのびしていたように思う。「元の濁りの田沼ぞ恋しき」、習近平流の息苦しい「清流」に人民は耐えられまい。汚辱に満ちた陋巷のヒッキー戦老ヂヂイは今日も中共包囲網の強化を期待する。放火魔みたい。
目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
https://blog.goo.ne.jp/annegoftotopapa4646
メルマガID 0001690154「必殺クロスカウンター」
“シーチン”修一 2.0
【Anne G. of Red Gables/318(2021/6/12/土】先日「身尚平学」(身尚は一文字、「とうへい学」=寝そべり学)という言葉が中国の若者文化を象徴するキーワードとしてメディアでもさかんに取り上げられているという話を紹介した。
が、ニューズウィーク日本版6/8のラージャオ(辣椒、王立銘、中国人風刺漫画家。トウガラシ名でコラムニストとしても活躍)による「中国の若者たちの間で、資本家への抵抗として急激に広がる『身尚平(タンピン)』主義が見落としている重要な事実」によると、事はそう単純ではないようだ。以下、引用。
<王さんはごく普通の大学生だった。卒業後、大都会の会社に就職して食費を切り詰め節約し、3年間でやっと5万元(85万円)をためた。しかし故郷でも不動産価格は最低1平米当たり1万元(17万円)。しかも高騰し続けている。休まず毎日残業するほど働いても、給料では不動産に手が出ない。マイホームを持てなければ結婚もできない。全ては自分と無縁。なら「身尚平(タンピン)」するしかない──。
「身尚平」は中国で最もはやっているネット用語だ。何もせず横になって寝るという意味だが、転じて全く努力せず、ただ最低限の生活を送ることを指す。今の中国では王さんのような何千何万もの若者が「身尚平」主義を選ぶ。彼らはどんなに努力しても運命を変えられず、将来に希望を見いだせない。
「われわれは身尚平を選んだ。これ以上、資本家たちのために働かない。何か間違ったことがある?」と、王さんたちは言う。普通の労働者は働けば働くだけ資本家に搾取される。「身尚平」こそ資本階級に抵抗できる有効な手段だ、と彼らは考える。
「資本家に搾取される」──この言葉が社会主義中国に現れるのは不思議なことだ。共産党が1949年に新中国を建国したのは、資本家の搾取をなくすことが目的だった。72年間を経て、この世界一の社会主義強国の若者たちは資本家に搾取され、「身尚平」でしか対抗できないと公言している。
しかし、王さんたちは「われわれは資本家らの企業のために残業や努力をしない。しかし国家のためには何でもやる」とも言う。努力しても未来が見えない、頑張っても自分の運命を変えられない。王さんたちはこれを体制の責任とは思わず、資本家に搾取と貪欲の罪をかぶせる。「身尚平」を選んだ中国人の若者の中には、ネット愛国者の「小粉紅」も少なくない。彼らは欧米に対する中国政府の強硬な態度を賛美するが、目の前の現実にはあまりにも無力で「身尚平」しか選べない。
そして王さんたちは一つ大事なことを忘れている。それは彼らが愛している中国が社会主義公有制国家であることだ。土地と生産財は全て国に属する。つまり、この国を管理している政府こそ、最大の資本家なのだ>
ラージャオ氏の経歴は中共現代史みたいだ。「1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。2009年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住」
上記コラムでトウガラシのように刺激的だったのは、共産主義を目指すはずの中共政府が「最大最強の資本家」として君臨しているということ。それ以下に大中小さらに泡沫零細企業の資本家が群をなしているわけだ。習近平は「新時代の中国の特色ある社会主義」「社会主義市場経済」とか言っているが、「共産主義統制経済以上、資本主義自由経済未満」という“党高民低、開発独裁の発展途上国経済”というのが実態だろう。上流が美味しい思いをし、下流は貧困に喘ぐイビツな国家。
発展途上国経済は「人件費の安さ」で外国資本を引き寄せるが、トウ小平の偉さは「韜光養晦」(警戒されないように牙を隠して、内に力を蓄えろ)や「改革開放」(既得権に胡坐をかかずにチャレンジしろ)、「先富論」(早い者勝ち、できる奴から儲けろ)と大胆な経済発展策を打ち出したことだ。これが支那人の伝統的な「蓄財蓄生美酒美食」願望に火をつけた。己が儲かれば寝食を忘れて奮闘努力する民族なのだ。「天に蔵を置く」という清貧思想はゼロ。
トウ小平の貪欲刺激策によって中共の名目GDPは1980年の3030億ドルからわずか30年の2010年には日本を追い抜いて6兆330億ドル、2021年(推計)には16兆6420億ドル(IMF推計)、日本の3倍にもなった。
2012年に国家主席になった習近平はただの単純な毛沢東信者、紅衛兵になり損ねた中坊だから、「韜光養晦」なんていう海千山千のトウ小平の深謀遠慮なんぞ「辛気臭い」と弊履の如くに捨ててしまった。江沢民=上海閥や胡錦涛=共青団派は習近平を「ただの紅二代、ボンクラ、悪さはしないだろう」と中共トップに据えてしまったのが大失敗だった。危険極まりない戦狼になって、今や中共は世界中から危険視、厄介者扱いされるまでになった。
中共軍サイト「軍網」によると国民はすべて軍の命令に従う法律が成立した。
<6月10日、第13回全人代常任委員会で、中華人民共和国軍の地位と権利と利益の保護に関する法律が可決され、2021年8月1日から施行される習近平国家主席令第86号が公布された。
軍人の地位と権利と利益の保護に関する法律は、習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想を指導し、習近平の強大な軍隊の思想を徹底的に実施し、軍隊の戦闘力の構築に奉仕することを基本目的とし、権利と義務の統一、物質的保証と精神的インセンティブの組み合わせ、国家経済社会開発との調和の原則に従い、軍人の地位、名誉の保護、待遇の保証、優遇措置などの規範を定め、軍人が職務を遂行し、軍人が社会全体の尊敬される職業となるよう促す。
国防と軍隊建設の重要な法律であり、軍人の地位と権利と利益の保護のための基本的かつ包括的な法律である、云々>
支那では「良い鉄は釘にはならない」、つまり「兵士はゴロツキ」というのが4000年の歴史で培われた評価である。民にとって兵士は厄介者でしかないから、心の底では軽蔑し、怪しんでいる。上記の法律では、人民は将兵を侮辱したり軽侮したり逆らったり、命令を拒否すると厳罰を食らうことになる。
ドライブしていたら兵士に車を止められ、「作戦のためにお前の車を徴発する、降りろ!」と言われたらそうするしかない。まるで蒋介石率いるゴロツキ国民党軍そっくり。元々、中共軍はゴロツキにもなれなかった乞食部隊(3分の1は裸足、兵器がないので棍棒を担いでいた)だったから、健軍100年でようやくゴロツキ部隊に進化するわけだ。中共ワンソイ、万歳、加油!
有事の際には身尚平(タンピン、とうへい)の“隠遁青年”は勤労動員とか徴兵されるのだろうか。逆らえば処罰され、強制労働で塹壕掘りをさせられたり。重機の免許でも取っておけば懲役も半分の期間で済むかもしれない。まあ、大卒の中華ヒッキーはプライドが高いから、汗を流す肉体労働は嫌がるか。
ヒッキーでもイザ!となれば「国家のためには何でもやる」、その気概は結構だが、蒋介石は兵士の逃亡を防ぐために顔に入れ墨をさせたという。支那には奴隷の逃亡を防ぐために目を潰す伝統があったそうだから、入れ墨なんて“なんてことない”のだろう。前線から逃げる、軍から離脱する、その途次に民家を襲って三光(奪う、殺す、焼き尽くす)のが伝統で、だから人々は「兵士はゴロツキ」と4000年間、蔑んできたわけだ。習近平が「将兵を尊敬しろ」と命じたところで「ただの紙切れ」、4000年の智慧が消えるわけがない。
苛烈な法律で国家が強くなるか・・・民心が離れてむしろ短命になるだろう。清朝が300年続いたのは結構アバウトな治世だったからで、上は蓄財に励み、下々の民もそれなりにのびのびしていたように思う。「元の濁りの田沼ぞ恋しき」、習近平流の息苦しい「清流」に人民は耐えられまい。汚辱に満ちた陋巷のヒッキー戦老ヂヂイは今日も中共包囲網の強化を期待する。放火魔みたい。
目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
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