蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

逃げられた!

2015-10-17 11:03:57 | 日記
「おい、お前、俺たちを置いて逃げる気じゃないだろうな」
 「な、なんでそんなことを言うんだよ。オレたちゃ仲間じゃないか」
 「いいや、おまえ、ここ数日間、おかしいよ。なんか考えてるだろう。オレたちに言えないようなこと」
 「そ、そんなことはないよ。ただ、このところ、トシのせいか、腰が痛くてしょうがないんだよ」
 「トシのせいかって、俺たちみんな同い年じゃないか」
 「そうだよ。四人まとめて造られて、今ここにいるんだから」
 「ま、考えてみれば、もう何年経ったのかなぁ」
 「千年は経ってるな」
 「その間、ずっとこんな仕事やらされて、やってらんねぇよなぁ」
 「ま、ずっとやってりゃあなにかいいことがあるかもね」
 「そうでも思わないとやってられねぇよ」
 「寝よ、寝よ」

 「あー!やっぱりあいつ逃げやがった!」
 「ホントだ。おい、おまえ見張ってなかったのかよ」
 「いや、そのつもりだったんだけど、つい昼間の疲れが出て・・・・」
 「つい、じゃないよ」
 「どうする」
 「なんかおかしいと思ったんだよ。急にずしっと重くなってきたから、なんか変だなと」
 「なんか変だなって、お前、その時にみんなを起こせばよかったんだよ」
 「だけど、おまえも、ずしっと来たんじゃないのか」
 「そういえば・・・」
 「そういえば、じゃないよ。そうなるってえと、これから先、三人でこの大屋根を支えて行かないといけないのかよ」
 「あー、最悪」
 「おい、もう逃げようなんて気起こすんじゃないぞ」
 「二人で支えるなんて、ありえないよなぁ」
 「こうなったら、逃げる時は一緒だからな」

 姫路にあるあるお寺、伽藍の屋根の四隅を鬼たちが支えていたのですが、ある夜、一人逃亡して、今では三人で支えているんだとか。お寺に参った時に、聞いたお話です。それにしても、逃げた鬼はどうしているのか。残りの三人は今でも支え続けているのか、それとも示し合わせて、一、二の三!!で、逃亡したのか。逃げたというお話は、まだ伺っておりません。