蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

そして、誰もいなくなった

2015-10-01 18:58:13 | 日記
地球の人口は、とうとう飽和状態を迎えた。気候変動によって耕地は砂漠化し、海洋資源も底をついて来た。もうこのままでは飢えて死ぬしかない。

 一つの提案がなされた。

 「過去の大絶滅の前にワープして、そこで絶滅するはずだった生物を狩ってはどうか?」
 カンブリア紀の生物はあまり食欲をそそらない。しかし、恐竜ならどうだ。どうせ、小惑星の衝突で絶滅するんだから、その前に捕まえて、食べてしまえばいいではないか。大型草食恐竜は食べごたえがあると思うのだが。

 背に腹は代えられない。
 計画は実行された。

 セイスモサウルス、体長30m、スーパーサウルス、同じく30m。

 美味いとは言えない。しかし、ハーブに漬け込んだり、香辛料をたっぷり振り掛けたり、牛筋みたいに何度か水を替えながら煮込むと、食べられないことはないことが分かってきた。
 「恐竜の肉とは思えない!レシピ100選」などという番組も登場してきた。

 一つだけ問題視されていたのは、「過去を改変したら、現在も変わるのではないか」という問題であったが、「どうせ、絶滅するんだからいいじゃないか」という論に押されてしまい、今では問題にもならなくなった。

 しかし、やはり、過去を改変すべきではなかったのだ。
 ある時点から、人間の数が目に見えて減り始めたのだ。それも、数万人単位で消えるようにして。

 すぐさま調査隊が派遣された。

 彼らが見たのは、食物連鎖の変化だった。人間の手によって巨大な草食恐竜が姿を消していったため、肉食恐竜は、それまで食物の対象としなかった生物たちに目を向け始めたのだ。彼らは貪欲に漁りはじめた。もう贅沢は言っていられない。食べられるものすべて、動くものすべてが彼らの狩りの対象となった。そして、其の中に、我々人間につながるはずであった原始的哺乳類が入っていたのだ。やぶの中で、木の上で、河を渡ろうとしていて食べられた原始的哺乳類が姿を消すたびに、彼或いは彼女たちから生まれるはずであった子孫は生まれることはなくなった。

 そして・・・ついに・・・誰もいなくなった。