蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

大物を釣る

2015-10-12 08:34:28 | 日記
 ここ四年間ほど、ずっとあいつを狙っている。ワイヤーの太さは1m、釣り針の大きさは、10mほどの超合金で、餌はマッコウクジラを使っている。北太平洋、赤道直下、南太平洋、マゼラン海峡を通過して大西洋に入り、北上している。

 以前、一度釣り上げたのだが、相棒がビビってしまい、糸を切ってしまった。今度はそんなことのないように、一人で臨んでいる。

 アフリカ沖でも粘ってみたけれど、だめだった。やはり、以前釣り上げた時のように北の海でないとだめなのだろうか。

 北大西洋に入る。ドーバー海峡を抜けて北海を北上する。もう少しで北極圏に入る。アイスランドがはるかかなたに見える。

 船を止めて、少しここで粘ってみよう。

 一週間たった。餌を変えてみることにした。シロナガスクジラにした。生簀の中にはマッコウクジラがあと三頭、シロナガスが十頭になった。せめて、軽いあたりでも来てくれたらいいのに・・・と思っていたら、いきなり、ガツン!と来た。笑みがこぼれてくるのが分かる。そうかそうか、餌を変えたのがよかったか。おお、引いてくるな。完全に餌を飲み込んで、釣り針を喉のあたりにひっかけているようだ。いいぞ、いいぞ、もっと暴れろ、暴れて暴れて体力を消耗して、浮かび上がってこい!

 海面が激しく波立ち、魚たちが必死で逃げている。そりゃ怖いだろう。

 力比べになった。少しづつ少しづつ俺の方へと奴は近づいてくる。海面に顔をのぞかせれば、ビビッて糸を切ってもらえると期待しているのか?そいつはおあいにく様だ。あいつはいない。ここにいるのは、何ものにもビビらない俺様ひとりだ。

 出た出た出た!!1kmほど向こうか。奴、こっちへ泳いできているな。以前と比べてもまた大きくなっている。直径百メートルってとこか。波を蹴立てて船に近づいてくる。船に体当たりをして、沈めようって算段か。そうはいかないんだよ。それっ、まずはこれをお見舞いしよう。ミョルニル行け!!

 だいぶ効いたようだな。では、もう一発!!ほっほう、それでも突進してくるか。敵ながらあっぱれだな。だがな、俺ものんびりしていたんじゃないんだよ。日本に寄ってきたんだ。そこでな、とんでもないものを見つけたんだよ。その切れ味を思い知れ!!

 いやー、さすがによく切れるわ。百メートルの胴体をまるで蕪でも切るように切ってくれた。

 では、頭の部分は、真ん中において、あとは胴体を切って行かないとな。

 ホント、大きな船を作っておいてよかったよ。

 三分の二くらいは筒切りにして乗ったな。あとは、サメの餌にでもするか。うーん、さすが日本刀。斬鉄剣という名前は伊達じゃないな。

 ここから日本まではだいぶあるから、冷凍設備をつけておいてよかった。やはり、計画の段階で、オーディーンの意見を聞いておいてよかった。さすが、未来を見通せる力を持っているだけはあるわ。

 さて、頭の部分は兜煮にして、食べてしまおう。目玉の部分なんか最高だろうな。ゼラチン質たっぷり、お肌つるつるなんてね。

 ヨルムンガンド釣りはやめられないなぁ。

 また、来年来ることにしよう。