風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

第六小学校の呟き

2010-03-28 14:28:27 | 校舎(精霊)の独り言

これで、私と夢ちゃんの物語はおしまいです。はぁ~、長かったぁー。え、そうでも

ない?それはうれしいです。でも、なんでちょこちょこ、四小の姉さんが出て

くるんだろう。これは、私と夢ちゃんのお話のはずなのに。う~ん、わからない。

今度、夢ちゃんに聞いてみよっと。

さあ次は、夢ちゃんが大人になってから、四小の姉さんと私に会った時の物語です。

でもその前に、ちょっとしたコラムのようなものを書くそうです。〔夢ちゃんからの伝言〕

コラムって、何書くんだろ。わくわく。


風の向こうに(第二部) 其の参拾八

2010-03-28 13:54:48 | 大人の童話

夢は、別れる前に六小に言っておかなければならないこと、があったのを思い出し

言いました。

「六小さん、卒業文集に六小さんのこと書けなくてごめんね。でも、あなたとの

思い出は、いっぱいわたしのなかにあるよ。わたし、六小さんとお話することが

できて、本当によかった。五年間も・・・・・本当にありがとう。」

夢の声は、最後は半分涙声になっていました。六小は言いました。

「ううん、文集のことなんてもういいよ。夢ちゃんが、わたしを好きでいて

くれたってことはよくわかっているし、たぶん、これからも好きでいてくれるだろうし。

それより、わたしの方こそありがとう。五年間、夢ちゃんとお話することができて、

本当楽しかった。これも、四小さんのおかげかな。四小さんが、夢ちゃんと

心通わしてくれていたから、それで、わたしもできたのかな。だとしたら、四小さんに

感謝しなくちゃ、ね。夢ちゃん、いつか・・・また・・・会いに来てね。待ってる・・・・から。

きっと・・・・待ってるから・・・・・来てね・・・・・・。」

声はだんだん細く小さくなっていき、光とともに消えようとしています。夢は消えていく

光に向かって、大きな声で叫びました。

「五年間、本当にありがとう!必ず、また、会いに来るからね!」

その声に、今まさに消えようとしていた光が、一瞬大きく輝きます。最後の輝きが

消え、すべてが元にもどると、夢は、六小に向かって大きく手を振り、前を向いて

歩き出しました。

                                              完 


風の向こうに(第二部) 其の参拾七

2010-03-28 11:35:57 | 大人の童話

夢は、六小のあまりに大きな声と、予想もしなかった言葉にびっくりして、

「な、何よ、急に。せっかく人が、六小さん立派になったなあ、これなら、もう

大丈夫だな、と思って安心できたから行こうと思ったのに。」

と、歩き始めようとしてた足をひっこめて言いました。

「だって・・・ヒック・・・・まだ・・・ヒック・・・・わたし、お礼も言ってないのに・・・ヒック。」

六小は、まだ泣いています。六小を励まそうと、夢は明るく話しかけました。

「もう、六小さんたら何泣いてんのよ。いつもの元気はどうしたの。お礼なんていいよ。

お礼言わなきゃいけないのは、むしろわたしの方でしょ。お世話になったんだから。」

「だって・・・・・だって・・・・・」

 「涙を拭いて六小さん、わかったから。何も言わないで行こうとしてごめんね。今朝

話したから、いいかなと思って声かけなかったの。声かけたら、別れられなく

なりそうで。」

夢の言うのを聞いて、六小はやっと泣きやみました。六小は、自分の存在に

気づいてくれ、五年間をともに過ごしてきた夢が、いくら、朝に少し話したからって、

今、別れるというこの時に何も言ってくれないなんて、と淋しかったのです。少し

たつと、六小は笑顔を見せて言いました。

「夢ちゃん、卒業式良かったよ。わたし、感動して泣いちゃった。」

「式、見ててくれたんだ。それにしても、六小さん、今日は泣き虫だね。」

「あたり前でしょ。夢ちゃんの卒業式だもの。泣き虫ったって、泣かせたのは

誰よ。」

「うん、そうだね。」

六小の言葉に、夢も明るく笑顔で答えました。

「わたしからの卒業証書、大事に持っていてね。」

「うん、もちろん。ずっと大事に持ってるから。」

「ありがとう。」

 

 

 


風の向こうに(第二部) 其の参拾六

2010-03-27 22:57:23 | 大人の童話

写真撮影のあと、いったん教室へもどってクラスで別れを惜しんだあと、夢たち

卒業生は在校生に見送られ、校門の所まで行きました。二年生二学期始業式の日、

始めて見る六小の立派さに目をみはり、中に入るのも忘れて、しばらく校門の脇に

佇んでいた夢、あの時と同じ大きな校門を、今、夢は出て行きます。校門を出た所で

立ち止まり、振り返って校舎を仰ぎ見ると、そこには、凛として建つ第六小学校の

姿がありました。夢は、しばらくじっと六小を仰ぎ見ていましたが、やがて、

決心したようにうなずいて、また歩き始めようとしました。と、なんと今までにない

大きな輝きの光が夢を包み込み、これまた今までに聞いたこともない、地を

震わすような大きな声があたり一面に響き渡りました。

「ちょっ、ちょっと待ってよ、夢ちゃん!もう行っちゃうの。そんなのって・・・ないよ・・・・

エッ・・・・エッ・・・・・」

六小は泣いていました。


風の向こうに(第二部) 其の参拾五

2010-03-26 22:42:18 | 大人の童話

式が終わると、夢たちは卒業記念写真を撮るために、屋上に上がりました。

屋上からは、地域の町が見渡せます。六小の周りは、六小ができた五年前に

比べると、だいぶ家が増えてきていました。それでも、まだまだ畑や林が多く自然に

恵まれています。屋上を吹き渡る風を頬にうけ、遠くに見える町並みを眺めながら、

夢は、

『これから、この辺はどんなふうになってゆくんだろう。その時、わたしはどこに

いるんだろう。まだ、ここに居るんだろうか、それとも、どこか他の所に往って

居るんだろうか。』

などと、とめどなく思っていました。いよいよ写真を撮るというその時、式の間は

泣かなかった夢も、さすがに感きわまり涙が出そうになって、あわてて手で眼を

こすりました。涙をこらえて撮った卒業写真、でき上がってきたその写真の後ろには、

下部半分だけ、夢の大好きな、六小が”これもわたしの一部よ”と言った、あの

時計台が写っています。