風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の拾八

2010-03-09 15:13:28 | 大人の童話

夏休みのさなか、子どもたちが待ちに待ったプールが完成しました。夢も、うれしくて

たまりません。何しろ、今までの二年間は、三小近くの中学校のプールを借りたりして

いたので、プールに入れる回数が少なかったのです。これからは、思いっきり

自分たちのプールに入れます。とはいうものの、実は夢は泳ぐのが苦手です。

浮くことはできますが、息継ぎがうまくできなくて、二十五メートル行かないのです。

せいぜい、十メートル行くのがやっとでした。プールサイドで夢が休んでいると、

チカッと校舎が光り、六小が声をかけてきました。

「夢ちゃん、全然進まないじゃない。鉄棒・はんとう棒だけじゃなく、水泳も

へたくそなんだね。」

「なによ、いいじゃないよ別に。水に浮くことはできるんだから。」

夢は、いつもの夢をからかうみたいな六小の言い方にカッとして、今までにない強い

口調で言い返しました。