風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

第六小学校の呟き

2010-03-18 22:34:19 | 校舎(精霊)の独り言

ねえ、みなさん、コークスって知っていますか? え、知らない?そんな~~。

コークスは、石炭と同じようなものなの。石炭とコークスの違いはね、なんか

あるらしいんだけど、わたしには難しいからパス。

夢ちゃんがわたしの所にいた頃は、コークスを燃す石炭ストーブだったのよ。

夢ちゃんによると、このストーブのことを『だるまストーブ』って言ってね、結構

暖かかったんですって。教室全体にちょうどよく、暖かさがまわっていたそうよ。

時には、ストーブの上に牛乳のせて温めたりして。そういえば、給食のない時には、

お弁当のせて温めていた子もいたなあ。今ではもう、そんな光景見ることも

できないけど。う~~ん、懐かしい思い出だわ。あ、こんなこと言うと、わたしの歳

ばれちゃうわね。え、もうばれてる?そっか。そう、わたしはただ今四十四歳で~す。

ついこの間、開校四十周年むかえたのよ。あ~、月日のたつのは早いなぁ。

「何、ごちゃごちゃ言ってるの。夢ちゃんが、次のお話に進めないでしょ。」

あ、四小の姉さんだ。また注意されちゃった。結構うるさいんだ、姉さん。うふっ、

じゃあ、またね。


風の向こうに(第二部) 其の弐拾五

2010-03-18 18:22:54 | 大人の童話

夢が、スコップでコークスをストーブの中にたしていると、周囲が光りだし、また

六小が声をかけてきました。

「ねえ夢ちゃん、わたしのこと好き?」

唐突に質問されて、夢は少し驚きながら答えました。

「え、何でそんなこと聞くの?好きに決まってるじゃない。」

「だって、いつも四小さんのこと考えてるみたいだから。」

「そんなことないよ。ただ、思い出が強烈なだけ。」

「ふーん、そう。でも、なんかっていうと四小さんのこと言うじゃない。わたしと

つきあってもう四年になるのに。去年の夏だってさ、プールでわたしがちょっと

言ったら・・・・・」

夢はそれを聞いて気づいたのです。

『そういえば、こっちに来てから六小さんと楽しくやっているけど、心の奥の方では

なんかいつも、四小さんを思っていたような・・・・・』

そして、六小に言いました。

「そう、六小さんの言うとおりかも、ごめんね。でも、わたし、絶対六小さんのこと

きらいじゃないよ。むしろ大好きだよ。」

「ふーん、でも、四小さんのことは忘れられないんだ、やっぱり・・・・・」

六小は、「ふっ」とため息をついて夢を見ました。

「う・・・ん、ごめん・・・・。でも、何?その、やっぱりって。」

六小は、夢を見ながら、ちょっと考えるような感じで言いました。

「う・・・ん、実はわたし、夢ちゃんと始めて会った時、ちょっと不安になったんだ。」

「何で。」

夢は、わけがわからない、という感じで答えました。六小が続けます。

「だって夢ちゃん、あの時から四小さんのこと、好い好いって言ってたんだもん。」

夢は、”六小は、ずっとそんな思いを抱いていたんだ”と、ちょっとびっくりした様子で

「そうだったんだ。六小さん、わたし、気づかなかった。」

と、優しく言いました。

「いいよ別に、気づかなくても。そっか、まあいいや。わたしのこと、好きでいて

くれるなら。」

「うん!六小さん大好き!四小さんの方が、六小さんよりもちょっと好きだけど。」

それを聞いた六小は、

「うん、もう夢ちゃんたら!」

と言って、大きな声で”アハハ”と笑い、体全体を震わせました。ようやく、いつもの

六小にもどったようです。夢は、ほっとしました。

「やっぱり、六小さんはこうでなくちゃ、ね。」

「何か言ったぁーー。」

「ううん、何も。」

「あははは。」

「あー、夢ちゃん、大変大変。ストーブの火、消えちゃいそう。」

「やーん、大変。うんもう、六小さんが途中で話しかけてくるから。また、コークス

たさなきゃ。」

「何よ、わたしのせいだっていうの。夢ちゃんが、ちゃんと終わらせてから

返事しないからいけないんでしょ。」

「何よ、わたしがいけないっていうの。」

「ウフ・・・アハハハ・・・・・」

さっきまでの静かな六小はどこへやら、二人は、いつものにぎやかな二人に

もどっていました。