風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の弐拾弐

2010-03-14 13:24:38 | 大人の童話

十一月九日、式典の当日、天気はあいにくの雨、体育館が無いため、校庭で

行われる予定だった式典は中止になってしまいました。夢は、”六小さんに喜んで

もらおうと、今日の日のためにあんなに練習してきたのに”と、残念でなりません。

それでも、せっかくのお祝いということで、もうすぐ卒業という六年生が全校代表と

いう形で、一階の音楽室で式を行いました。次の日、夢は六小に会って言いました。

「あーあ、がっかり。お式に出たかったのに。体育館があったらできたのに。

無いことをうらむなぁ。」

それを聞いて、六小も少し寂しそうに言いました。

「うん、ほんと。わたしもがっかり。みんなが祝ってくれるの、見るの楽しみに

してたのに。だけど、体育館が無いのはしようがないよ。」

「うん、そうだね。まあ、六年生だけでもやってくれてよかったよね。」

「うん、そう思う。六年生のみんなに感謝してるよ。」

「で、どうだった?式は。」

「うん。みんなでやれなかったのは、ちょっと残念だったけど、でも、とてもよかった。

うれしかったよ。感激しちゃった。」

「へー、そうなんだ。六小さんでも感激するんだ。」

「何、その言い方、あたり前でしょ。すごくうれしかったんだから。夢ちゃんには

わからないよ、この気持ちは。」

「あ、そうですか。でも、わからなくたってしかたないよ。だって六小さんたら、騒々しく

キャピキャピ言いながら話しかけてくることが多いんだもの。」

「まあ、確かにそういうこと多いけど、でもそれだけじゃないよ。」

六小は言いながら、”夢ちゃん、もう忘れちゃったのかなぁ。去年のこと。”と思って

いました。六小の言葉を聞いた夢は、小さい声で「あっ。」と言いました。

「そうだったね。ごめん、もう忘れてた。一番大事なことを。」

「ううん、いいよ。それに、ふふふ・・・確かにわたしって、夢ちゃんの言うとおりかも

しれないもの。いつも騒々しくてさ。四小さんと全然ちがうよね。」

「何でそこに、四小さんがでてくるの?」

「別にぃーー。」

「あー、また、いつもみたいに。」

「アハハハ、それにしても、次の五周年は晴れるといいな。」

「ふふ、六小さんたら、もう五周年のこと言ってる。五周年の時には、わたし

いないからね。」

それを聞いた六小はムフッと笑って、 

「あ、そうだっけ。よかった、静かで。」

と言いました。すると夢が、”それは、わたしの台詞でしょ。”とばかりに、

「どっちが。」

と、ふざけ怒りで言い返します。何だかんだ言いあって、結局最後は笑いあってる

二人なのでした。