風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の弐拾参

2010-03-15 15:09:27 | 大人の童話

二学期ももうすぐ終わるという十二月、お昼休みに夢は、一年の時四小に教えて

もらったように、校庭のまん中に立ち、六小に会いたいと念じました。するとまもなく、

あたり全体を光で包みながら六小が現れてきました。

「めずらしーい。夢ちゃんの方からわたしに会いに来るなんて。雨が降らなきゃ

いいけどな。」

六小は、うれしくてたまらないというように、体全体をキラキラさせています。

「またそんなこと言って。わたしから六小さんに呼びかけたらおかしい?」

「うふ、とってもうれしい。」

六小は、本当にうれしそうでした。どうしてか、それは、今まで一度も、夢の方から

声をかけてくれたことがなかったからです。でも、そんな夢がどうして急に六小に

会いたくなったのでしょう。夢はチャイムのことを話したくて、六小に声を

かけたのです。六小のチャイムはかわっています。よくある普通の

『キンコンカンコン』ではなく、リズムがついてメロディーになっているのです。何の

メロディーかはわかりませんが、夢はこのメロディーチャイムが大好きでした。

ここではその音を聞くことができないので、リズムだけ表しておきます。

『タンタンタンタタタンタンタンタンタンタン、

 タンタンタンタタタンタンタンタンタンタン・ターン』

「六小さんのチャイムっていいよね。」

「何で?」

「だって、キンコンカンコンじゃなくてメロディーになってるんだもの。」

「ふーん、そうなの?」

「うん、絶対いいよ。すてきなチャイムだよ。」

六小は、”そうなのかな、すてきなのかな、よくわからないや。”と思いながら

言いました。

「ふーん、そうかな。わたしにはよくわからないや。でも、ほめられるとやっぱり

うれしいな。夢ちゃん、ありがとね。」

「うん、わたし、このチャイム大好き。きっとずっと忘れないだろうな。」

「ふーん。」

「何よ、さっきからふーん、ふーんって。いつもの六小さんらしくないね。」

「だって、夢ちゃんが、めずらしくわたしのことをほめてくれるんだもの。なんか

調子くるっちゃって。」

この言葉に、夢はにまっと笑って、

「あら、そうなの。じゃ、いつもみたいにする?」

と、六小に言いました。

「え、ううんいいよ。せっかくほめてくれてるんだから。」

「ウフフフ、アハハハ」

二人は、いっしょになって笑っています。

と、その時、タンタンタンタタタンタン・・・・・・・チャイムが鳴り始めました。

「あ、授業始まっちゃう。六小さんまたね。」

「あ、うん。夢ちゃんまたね。」

夢は急いで、教室の方へ走っていきました。六小はというと、初めて夢から

話しかけられたうれしさから、来た時よりいっそう大きな光を放って消えて

いきました。