万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”公的行為天皇決定説”の危険性

2016-12-07 15:36:26 | 日本政治
天皇退位、論点整理に着手=1月公表へ有識者会議
 報道によりますと、天皇の譲位-退位-問題に関連して首相の私的諮問機関として設置されている「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」では、今般、憲法に規定のない”公的行為”については、その時々の天皇の意向で決めてよいとする認識で一致したとされております。この”公的行為天皇決定説”には、以下に述べるような問題点やリスクがあります。

 第一に、有識者会議が託された議論は、本来、天皇の譲位(退位)に関する是非や手段の検討であり、象徴天皇の”公的行為”のあり方という、憲法にも踏み込むような問題については託されていないはずでです。ところが、報道が事実であるとしますと、”公的行為”に踏み込むのですから、議論の対象範囲を超えており、有識者会議の越権が疑われます。有識者会議に天皇に新たな権限を与える権限があるとしますと、それ自体が、憲法違反となります。

 第二に、仮に”公的行為天皇決定説”が採用されるとしますと、天皇は、自らの意思で如何なる”公的行為”をも新たに創造できることになります。現状では、地方訪問や被災地慰問に加えて、戦没者の慰霊のための海外訪問等も”公的行為”として既成事実化されていますが、次世代にあっては、自らが望むままに、皇室外交といった政治に深く関わる仕事を”公的行為”と認定する恐れがあります。

 第三の問題点とは、有識者会議にあっては、天皇の”公的行為”とは、”憲法に規定されていない行為”と定義されていることです。となりますと、憲法の枠外に”公務”が存在するという忌々しき事態となります。しかも、天皇の私的意向によって如何様にでも決められる自由裁量の公務となりますと、君主を憲法の枠外に置く超然主義ともなり、立憲主義の崩壊をも意味しかねません(立憲君主制からも逸脱…)。また、”公的行為”によって何らかの問題が発生した場合でも天皇が無答責となるならば、著しい無責任体質が出現し、事態はさらに深刻となります。

 さらに第4点として挙げられるのは、民主主義への脅威です。日本国憲法の第一条では、天皇の地位は主権の存する国民の総意に基づくと定められていますので、象徴天皇の”公的行為”については、最低限、立法措置が講じられるべきはずです。国民に問わずして、天皇が”公的行為”を自ら決定し得るとなりますと、それは、明らかに民主主義、国民主権に反すると共に、憲法違反の行為となります。この説を支持する人々は、天皇独裁体制を目指しているのでしょうか。

 以上に、主要な問題点を述べましたが、”公的行為天皇決定説”には、日本国の立憲主義のみならず、国民主権に基づく民主主義をも破壊するリスクがあります。さらには、有識者会議での”認識の一致”が、他の意見を排除する圧力ともなれば、言論の自由の危機でもあります。今般の皇室をめぐる動きには、強引、かつ、不自然な点があまりに多く、国民のあずかり知らぬところで何らかの勢力が蠢いている気配があります。そうであるからこそ、この説に潜むリスクは、計り知れないのではないかと思うのです。

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トランプ次期政権で対日よりも対中関係に激震か?

2016-12-06 14:13:00 | 国際政治
電話会談「中国を意図的に挑発」…米紙報道
 アメリカ大統領選挙期間におけるトランプ氏の対日発言は、それがあまりに大胆、かつ、過激であったため、日本国内では、日米同盟の終焉まで懸念される状況となりました。このため、トランプ氏の当選には警戒感も広がったのですが、蓋を開けてみますと、別の展開もあり得るように思えます。

 トランプ氏の対日強硬論に対して、中国では、歓迎ムードがあったようです。日米同盟が弱体化すれば、アジアにおける覇権追求が容易となり、アメリカの介入を受けることなく、自在に勢力伸長を図ることができるからです。米軍の撤退も夢ではないのですから、”一帯一路構想”が実現する日も近づきます。ところが、当選を確実にすると、トランプ氏は、入念に準備した上で台湾の蔡英文総統と電話会談を行ったのです。”一つの中国”の原則の下で台湾を併呑しようとしていた中国にとりましては青天の霹靂であり、抗議の声も虚しく響くのみとなりました。

 国際法に照らしますと、台湾は、独立主権国たる要件を備えており、中国の主張する”一つの中国”の原則とは、来る台湾侵略を正当化するための巧妙なレトリックに過ぎません。”二つの中国”への回帰は、むしろ、台湾の国際的地位の正常化として理解することができます。トランプ政権が、アメリカの対中政策の基本方針を”一つの中国”から”二つの中国”へとシフトさせるとしますと、米中外交史を画する劇的な転換点となることは疑い得ません。

 世界のマスメディアは、リアリストであり、かつ、ビジネスマンでもあるトランプ氏は、大統領就任後には公約の殆どを反故にして、現実と妥協するのではないかと予測しておりますが、この予測も、大統領選挙の結果と同様に、見事に外れるのでしょうか。トランプ政権発足後の対中政策を、全世界が固唾を飲んで見守っていると思うのです。

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トランプ氏の南シナ海対中牽制発言ーアメリカは国際法秩序の擁護者となるか?

2016-12-05 15:22:38 | アメリカ
中国人工島造成「我々に尋ねたか?」トランプ氏
 アメリカのトランプ次期大統領は、南シナ海における中国による軍事拠点化について、痛烈な言葉を投げかけたと報じられております。”我々に尋ねたのか?”と…。

 誰もが、この言葉は、一方的に南シナ海に人工島を建設して軍事拠点化を推進してきた中国に対する牽制と理解したことでしょう。名指しされた中国も、当然に、南シナ海問題における中国の身勝手な行動は許さない、とするアメリカの次期政権の決意を読み取ったはずです。南シナ海問題については、仲裁裁定に対して中国が無視を決め込んだことから先行きが危ぶまれていましたが、トランプ氏の発言を読む限り、近い将来、如何なる手段であれ、中国は、軍事拠点化放棄へと追い込まれそうな気配がするのです。

 これまで傍若無人に振る舞ってきた中国に対して、遂に、外部からストップがかかるわけですから、トランプ氏の発言は、それが言葉の段階であれ、高く評価されるべきことです。しかしながら、その一方で、懸念材料がないわけではありません。それは、”我々に尋ねたのか?”の”我々”は、他の為替操作国認定問題や対米関税問題に関する表現からしますと、”アメリカ”と解せざるを得ないのです。ところが、南シナ海問題は、国連海洋法条約上の違法性が問われたように、その本質において国際法秩序の問題です。実際に、目下アメリカが実施している”航行の自由作戦”は、その名が示すように航行の自由という国際社会の原則を守るために行われており、イギリスも、先日、日本国に派遣した英空軍タイフーン戦闘機を南シナ海上空を飛行させることで、国際問題であることをデモンストレーションしています。国際社会の一員として法の支配、即ち、仲裁裁定の遵守を中国に強く求めるのは、日本国政府の基本的な立場でもあります。

 そして、仮に、トランプ氏が、この問題を米中の二国間問題として扱う心づもりであるとします、国際社会が酷く困惑する事態の発生もあり得ます。それは、アメリカが”yes”に転じることで、中国の南シナ海軍事拠点化が許されてしまう事態です。今般の発言は、対中強硬姿勢である故に安心できるのですが、一旦、二国間問題に矮小化されてしまうと、中国による巧みな懐柔策によってアメリカが籠絡されないとも限らないのです。アメリカの国内事情を考慮すれば、”アメリカ・ファースト”の方針は理解に難くありませんが、アメリカは、国際法秩序の擁護者であってこそ、国際社会から”偉大なるアメリカ”として尊敬される国になるのではないかと思うのです。

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深刻な”天皇像”の分裂ー統合のパラドクス

2016-12-04 13:32:05 | 日本政治
 2016年8月8日に公表された”天皇のお気持ち”を機に、目下、日本国では、天皇の譲位(生前退位)問題が有識者会議の下で議論されています。専門家等からのヒアリングの場が設けられたものの、賛否両論が拮抗し、収拾がつかない事態に至っています。

 大まかには、摂政設置による対処を主張する現状維持論と法改正による退位容認論との対立となりますが、後者にあっても、一代限りの特別立法案、皇室典範改正案、憲法改正案といった複数の案が並立しており、一枚岩ではありません。議論が紛糾している割には対立点や論点が必ずしも明確ではなく、これらが実際に何を意味するのか、国民も理解に苦しむはずです。こうした先の見えない混乱の原因はどこにあるのか探ってみますと、そもそも、日本国における”天皇像”というものが分裂している事実に行き着きます。

 第1の天皇像は、伝統的な国家祭祀の長としての姿です。日本国では、日向から東征して葦原中津国を制定した神武天皇を以って建国の祖としていますが、興味深いことに、神武天皇も即位後には目立った政治的な活動は記紀に記されておらず、国家祭祀に役割の重点を移しています。天皇親政の時期も若干見られるものの、祭政二元体制は、鎌倉期以降、日本国の基本的体制として定着し、幕末まで続きます。もっとも、『魏志倭人伝』が伝えるように、古代にあって祭祀を司る神聖なる人物を共立することで国を纏めた事例がありますので、国家祭祀の長と統合は密接な関係にあります。天皇の存在意義は、その神聖なる求心力にあります。『日本書紀』もこのような天皇の役割において、天皇を定義しております。

 第2の天皇像とは、古今東西の歴史に共通して見られる統治者としての天皇像です。『古事記』は、天皇の役割を「治天下天皇」としておりますので、統治者としての天皇像もまたあったと言うことができるでしょう。君主としての”天皇像”は、明治期に至り、『大日本帝国憲法』において法的に位置づけられました。もっとも、憲法上の”天皇大権”は、立憲君主制における一機関とみなす立場と天皇親政と解釈する立場との間で対立を生むなど、戦前にあっては、政治的混乱の要因ともなりました。

 
 そして、第3の天皇像は、戦後、”象徴天皇”という全く新しい概念の下で創設された天皇像です。現行の『日本国憲法』の第一条では、天皇を国家と国民統合の象徴と定めており、天皇の役割としては、第1の”天皇像”を継承しています。しかしながら、その求心力=統合力は、国家祭祀に求められてはおらず、今般の”お気持ち”では、全国の慰問や訪問が”象徴天皇”の役割と解されているようです。

 現行の『日本国憲法』を読むと、第3の天皇像をベースとしながら、統治機構において国事行為を定めており、第2と第3の天皇像との混合形態です。ただし、民主主義の観点から、第2の天皇像については、自らの政治的意思を表示をしたり、政治に介入することは許されず、国事行為は手続き上の形式に過ぎません(共和政体が存在するように、統治機構上においては、絶対に必要不可欠な存在ではない…)。となりますと、第3の天皇とは何か、という問題が重要となってくるのですが、最も重要な第1の天皇像との分離が起きている今日、天皇の存在意義は何処にあるのか、国民自身も、内心において疑問を感じているように思えます。

 政治家、政党、各種宗教団体…、そして、一般国民の各自が、それぞれ違った”天皇像”を求めているとしますと、議論が纏まるはずもありません。日本国民統合の象徴としての天皇が、現実には”天皇像”において分裂しており、それが日本国を不安定化しているとしますと、今日の天皇は、パラドクスに満ちているのではないでしょうか。

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米中関係は70年代に戻れないーキッシンジャー氏の訪中

2016-12-03 14:43:32 | 国際政治
習近平氏、キッシンジャー氏と北京で会談
 トランプ政権の発足を前にして、共和党の重鎮であり、かつ、ニクソン政権時において国務長官であったキッシンジャー氏が、老齢を押して北京に赴き、習近平主席と会談したと報じられています。

 米中間の劇的な国交正常化は、1971年のキッシンジャー氏の訪中を契機としており、キッシンジャー氏こそ、全世界を驚愕させたニクソン・キッシンジャー外交の立役者でした。自由主義陣営の盟主を任じてきたアメリカが、共産主義国家中国との関係改善を図った背景には、対ソ政策の協力と泥沼化したベトナム戦争の早期収束の思惑があったと指摘されています。この時、”敵の敵は味方”の構図が、米中対ソ連という形で三国の間で成立したのです。政治的打算として。

 中国側からしますと、キッシンジャー氏は”井戸を掘った”人物の一人であり、米中関係の出発点に位置しています。今般のキッシンジャー氏の訪中も、トランプ政権発足に備えた布石と推測されます。アメリカ大統領選挙にあって、中国は、密かにクリントン氏を応援していたとする説もあり、共和党に属する同氏にトランプ次期大統領との”取りなし役”を期待しているのでしょう。しかしながら、米中関係は、70年代に戻ることができるのでしょうか。

 少なくとも、昨今の国際情勢を見る限り、”敵の敵は味方”の構図から米中が手を結ぶ状況にはありません。ソ連邦は既に消滅していますし、次期大統領のトランプ氏は、プーチン大統領を評価する親ロ派として知られています。ベトナム戦争も1975年には終結しており、今では、中国の台頭を前にして、米越関係改善に動いています(敵の敵は味方?)。今日では、むしろ、中国こそソ連邦に代わる脅威に成長しており、中国の覇権主義は、軍事のみならず経済分野にも及び、米ドルへの挑戦を露わにすると共に、アメリカの雇用をも蝕んでいるのです。

 米中国交正常化から40年余りが経過しようとする今日、国際情勢は、70年代とは様変わりしています。そして、この年月を振り返ると、そこには、巧みな言葉でアメリカから協力を引き出してきた中国の狡猾な外交戦略が見えてきます。今後の米中関係は、やはり、時代の変化に即した新たな展開を迎えるのではないかと思うのです。

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保護主義は反知性的か?ー”調和型自由”を求めて

2016-12-02 09:42:43 | 国際政治
NY株、4日ぶり史上最高値=原油51ドル台に大幅上昇
 戦後の国際経済では、ブロック経済に対する反省から自由貿易主義が追求され、IMFとWTOを両輪とする自由貿易体制が構築されてきました。共産主義体制にあって統制経済を採用したソ連邦と東側陣営の崩壊は、自由主義経済の正しさの歴史的証明とも見なされたのです。

 しかしながら、今日、アメリカの大統領選挙におけるドナルド・トランプ氏の勝利を機に、新自由主義に対する批判が高まっています。と同時に、グローバリズムを推進する側からも、政府による国境規制の強化は、大衆迎合であり反知性的態度であるとする反論も提起されているのです。それでは、保護主義とは、全く以って、反知性的な考え方なのでしょうか。

 ”自由”とは言っても、実際には、幾つかの違った概念が含まれています。その一つは、一切の外部からの拘束のない”絶対的な自由”であり、もう一つは、既に拘束が存在する状況において各自に認められる”拘束からの自由”であり、その拘束が侵害行為を排除し、公平で公正なルールによるものであれば、”規律ある自由”となります(これらの他にも、バーリンのように積極的自由として政治的自由を論じる場合もある…)。”絶対的な自由”とは、それが、各自の完全なる自由行動を意味するならば、ホッブスが人間社会の自然状態として想定したように、”万民の万民に対する闘争”が発生し、当然に、暴力等による他者の自由や権利に対する侵害行為も頻発します。このため、今日では、”絶対的自由”の保障は、主として内面の自由に限定されているのです。

 これらの二つの全く異なる自由の概念に照らして今日の新自由主義、即ち、行き過ぎたグローバリズムを見てみますと、一つの疑いが脳裏を過ります。それは、今日の新自由主義は、”絶対的な自由”を求めているのではないか、という疑いです。例えば、”例外なき関税ゼロ”といった自由主義のルールは、現実には、相互に劣位分野の淘汰を伴うため、高レベルでの自由化を目指したTPPでさえ妥協せざるを得ませんでした。しかも、自由化ルールに全ての諸国が従うわけではなく、中国のように、自国の国境規制は維持する一方で、他国の自由化に便乗する国も存在しています。このことは、貿易における”自由化”のルールが、実際には、一部の人々の権利や利益を損なっている現実を示しています。ルールの存在意義が”規律ある自由”のために存在しているとしますと、”絶対的な自由”のルール化は、”万民の万民に対する闘争”状態への逆戻りを意味することにおいて、ルールによるルールの否定という重大なトートロジー(自家撞着)を内包しているのです。

 こうした”利己型自由”と”調和型自由”とでも表現すべき自由の概念の違いに注目しますと、保護主義を単なる反知性的として切り捨てる態度もまた、反知性的な奢りともなりましょう。ここにも、第二のトートロジーが見られるのですが、”絶対的自由”が他者の自由や権利に対する侵害性を含意する限り、国民、勤労者、消費者、劣位産業、内需型産業…といった多様な立場への包括的な考慮を提起することは、むしろ、曲がり角に佇む今日にあってこそ、必要なことではないかと思うのです。

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アメリカの対中関税率引上げは可能では?ー南シナ海仲裁裁定無視の代償

2016-12-01 14:12:08 | 国際政治
トランプ政権、税制・貿易協定見直し優先─次期財務長官=CNBC
 アメリカ大統領選に勝利したトランプ氏は、選挙キャンペーンにおいて中国製品に対して45%の関税を課すと訴えてきました。早々、中国側は反応を示し、中国商務省の張向晨部長助理は、WTOへの提訴を辞さない構えを見せています。”自国の権利を守る”として。

 ところで、中国によるWTOへの提訴は、南シナ海問題で仲裁裁定の無視を決め込んだ態度と矛盾しています。海洋における権利も通商における権利も、どちらも国際法が存在しているからこそ保障される権利です(もっとも、戦後の通商に関するルールについてはしばし再考してみる必要はありますが…)。ところが、中国は、自らが不利となる場合にのみ、国際法を根拠に司法的解決を求めているのですから、ダブル・スタンダードも甚だしいのです。

 それでは、トランプ政権では、公約通りに中国製品に対する関税を引き上げることはできないのでしょうか。中国側は、一方的な関税引き上げはGATT違反であると主張していますが、GATTには、様々な理由から例外措置を設けることを許しています。ダンピング等に対する対抗措置や一般的例外に加えて、第21条では、安全保障のための例外も定めています。また、GATTに根拠を求めなくとも、南シナ海問題における中国の仲裁裁定拒絶や軍事基地化の強行は、国連憲章の原則に反すると共に明らかに国際法上の違反行為です。経済制裁の手段として、中国の輸出入に対して制限を課すことは、決して不可能ではないのです。

 中国によるWTOへの提訴は、法の支配の原則からすれば望ましい行動であり、むしろ、奨励すべきかもしれません。その一方で、中国による国際法違反の行為に対しても厳しく対処すべきであり、その手段が経済制裁であったとしても、それは中国の自業自得なのではないかと思うのです(WTOの紛争解決パネルではGATT違反ではないと判断されるのでは…)。

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人類誕生の要因は加熱調理では?ー有効成分の飛躍的摂取

2016-11-30 15:20:27 | その他
 人類は、本当のところは自らの存在について全てを知っているわけではなく、生物の起源に至っては、未知の世界といっても過言ではありません。科学技術が進歩した現在の人類の知性を総動員しても解き明かすことができない謎は、数多く残されているのです。

 ところで、ダーウィンに代表される進化論では、大まかに言えば、適者生存の法則が人類を誕生させたと説いています。しかしながら、二本の足で歩く人間の身体は合理的、かつ、視覚的にも美しいフォームですし、その高い知能・知性は、他の類人猿から一歩抜きん出ています。”何故、人類だけが他の動物とは違うのか”という問題を考えた時、適者生存のみでは説明が不十分なように思われるのです。弱肉強食をも意味する適者生存だけが進化を齎すならば、今日にあっても、恐竜といった獰猛な生物が”地球の王者”として君臨してもおかしくはないからです。

 そこで推測されるのは、人間による火の使用です。他の動物は、火を極端に恐れますが、人間のみは、火を様々な目的に使うことができます。そして、火の使用による主たる効用の一つは、加熱した食物を食べることで、自然界に存在する様々な有効成分を摂取することができるようになったからではないかと思うのです。古代から人間が薬草を利用してきたことは知られており、中には、脳の神経細胞を増殖させたり、刺激する成分を有する植物もあります。今日では、これらの植物が効用や効能の多くは、科学的成文分析によって裏付けられています。薬草を特定するに至らないまでも、人間は、調理を通して知らず知らずの内に様々な有効成分を体内に取り入れることで、知能のみならず、様々な機能を、比較的短期間の間に急速に発展させたとも考えられるのです。

 この仮説が正しいとしても、何故、人間のみが火を怖れないのか、といった根本問題は謎のままですし、有効成分は人間のDNA配列に変化を与え、進化モーターとして働いたのか、あるいは、既存のDNAに何らかの機能の発現を促す促進作用を及ぼしたのか、といった問題も残ります。人間とは一体何なのか、あらゆる分野で混乱に見舞われている今日、もう一度、人間自身を見つめることも無駄ではないように思えるのです。

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米大統領選挙に見るリベラルの排他主義ー保守主義者との共存の拒否

2016-11-29 15:16:40 | 国際政治
トランプ氏、ミシガンでも勝利=最後の州の結果判明―米大統領選
 アメリカ大統領選挙は、その長期にわたる選挙期間を通して、現代社会が抱える様々な問題や矛盾を露呈することとなりました。その一つに、トランプ氏当選が確定した後に起きた、クリントン支持者による反トランプ抗議デモやカリフォルニア独立運動があります。

 それでは、これらの運動から、どのような問題や矛盾が垣間見えるのでしょうか。リベラル派の人々は、常々、異なるルーツやバックグランドを持つ多様な人々が共生し、仲良く暮らしてゆくことが理想社会と見なしています。あらゆる差別に反対し、マイノリティーの権利保護にも熱心です。確かに、”皆が仲良く”という性善説を前提とする一般的な道徳規範には誰も反対しないでしょうし、寛容は美徳の一つです。しかしながら、国家や社会というものが、移民国家であるアメリカにおいてさえ、歴史や特定のルーツを持つ集団の固有性を伝統として引き継いでいる現実を考慮しますと、リベラルの主張する寛容は、際限のない多様化、即ち、移民の受け入れを意味し、既存の国家や社会を融解させてしまう働きを必然的に伴うのです。

 それでは、リベラルの反対に位置する保守的な態度、即ち、既存の国家や社会の維持を望むことは、反道徳的なのでしょうか。今日の国際社会では、数万年を経て生じた人類の多様化に対応する形で民族自決の原則が成立しています。仮に、無制限な移民受け入れによる多様化を推し進めれば、その社会は、何らかの共通点もない”烏合の衆”となるか、民族、宗教、思想等の多様性に起因する内乱状態となるか、あるいは、無味乾燥としたモノトーンの世界に至らざるを得ないのです。民族自決が集団的な権利である以上、その権利を護ることは、決して批判されるべきことでもないのです。

 ここに、国家や社会の維持を望む保守的な人々と個人の自由、特に、マイノリティーの人々の自由を優先するリベラルな人々との間において、抜き差しならない対立を見出すことができます。そして、この抜き差しならぬ関係は、リベラルをして保守主義者の排除という行動に駆り立てるのです。反トランプ抗議デモは、トランプ氏を大統領と認めないことにおいて不寛容と排除の姿勢を露わにし、カリフォルニア独立運動も、アメリカ合衆国から脱退を訴えて保守主義との共存を拒否しています。自らが理想とする共存を実現するには、保守主義を排除しなければならないのですから、これ程の自己矛盾もありません。リベラルの理想郷とは、既存の国家や社会を消滅させなければ実現しないことを、自らの行動で示してしまったのです。自由であれ、権利であれ、他者からの侵害に対する防御という意味で本質的に排他的ですので、保守主義もリベラルも、この点においては同列なのです。

 アメリカ大統領選挙に見られる両者の対立は、結局、寛容を主張しながら排他主義の”本音”を晒してしまった点において、リベラルにとって痛手となったのではないでしょうか。トランプ氏は、選挙遊説中にその”本音”によって支持者を集めたとされていますが、リベラルの人々は、意図せずして露わにしてしまった”本音”、即ち、’他者の排除’があまりに攻撃的な思想であった故に、人々を遠のかせてしまったと思うのです。

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アメリカ大統領選挙ー得票数優位論の盲点

2016-11-28 16:10:06 | アメリカ
くすぶる再集計、トランプ氏猛反発「何も変わらない」
 アメリカ大統領選挙は、11月8日の投票によりトランプ氏の勝利で決着したかと思いきや、機械集計の得票数に不自然な点があるとして、ウィスコンシン州では再集計問題が持ち上がっているようです。加えて、得票数ではクリントン氏の方が上回っていることから、選挙には敗れたものの、アメリカ国民の民意はクリントン氏にあるとする論調も聞かれます。

 現行のアメリカの選挙制度では、一部の州を除いて選挙人総取り方式が採用されているため、全体の得票数に優っていても落選する現象がしばしば起きます。フランス大統領選挙等の直接選挙では起き得ないことですが、アメリカは、合衆国、即ち、州(state)によって構成される連邦国家であるために、建国以来、州の権限が強いことに由来します。単一国家を前提とした”一人一票同価値”の観点から見ればこの制度は不合理な制度に映り、これまでも、”捻れ現象”が批判の対象となってきました。

 しかしながら、今般の選挙の様子を見ますと、単一国家型の視点のみから得票数の優位を主張することが適切であるのか疑問が湧きます。選挙当日の開票結果の中継では、終始、トランプ氏の得票数がクリントン氏を上回っており、”捻れ現象”は起きていません。それでは、何故、その後、クリントン氏の得票数がトランプ氏を逆転し、200万票もの差をつけたのか言いますと、凡そ4000万人という巨大な人口を抱え、かつ、民主党の大票田であるカリフォルニア州の集計に時間がかかっているからなそうです。カリフォルニア州に割り当てられた55人の選挙人のクリントン氏による獲得は早い時点で確定したものの、全得票数の集計には時間がかかるため、最終集計では確定時よりも大量に票が上乗せされたということらしいのです。

 カリフォルニアでは、トランプ氏勝利が決定した後、Brixitを捩ってCalexitなる”独立運動”が発生しましたが、独立の気風が強いのも、カリフォルニアとその他の州とでは歴史や人口構成等において違いがあるからなのでしょう。仮に、単一国家のように、得票数に大統領の正当性を求め、選挙制度を改革したとしますと、人口の多い州の意向が強く反映されることとなります。この点、国家連合であるEUの理事会の決定手続きでも、加盟国ごとに人口数に比例した票の配分がなされているものの、人口大国支配への警戒感は強く、採択基準に工夫を凝らすなど、中小加盟国への配慮が見られます。果たして、アメリカ国民は、人口大国ならぬ”人口大州”に有利な制度への変更を望むのでしょうか。そして、その行方は、アメリカの将来の国家像-合衆国か単一国家か-にも深くかかわってくると思うのです。

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キューバ革命は歴史の教訓ー騙しの時代の終焉へ

2016-11-27 16:08:39 | 国際政治
「反帝国主義に特別な貢献」=カストロ前議長を称賛―金正恩氏
 キューバ革命の指導者にして長らく同国に独裁体制を敷いてきたラウル・カストロ前議長が死去したとの報は、ある一つの時代の終焉を象徴してるのかもしれません。

 キューバ革命の背景には、資本主義の悪しき一面が問題として潜んでいたことは確かなことです。スペインからは独立したものの、キューバの主力産業である製糖事業はアメリカ資本の下にあり、経済面を見れば、”支配者”がスペインからアメリカに交代したに過ぎませんでした。当然に、水面下では一般のキューバ国民の不満は燻っており、その不満のはけ口となり、期待を寄せたのが、資本の国有化を訴える共産主義であったのです。革命家であったカストロやチェ・ゲバラ等は、親米派であったバティスタ政権に対して反政府組織を結成しゲリラ戦を仕掛け、革命政権を樹立するのです。

 時計の針をこの時点で止めることができるならば、あるいは、カストロにせよ、ゲバラにせよ、民衆を抑圧から救った英雄としての評価を歴史に残したかもしれません。しかしながら、時計の針を止めることはできるはずもなく、キューバ革命の実態が明るみに出るにつれ、革命への評価は低下の一途を辿ります。共産革命もまた、アメリカからソ連邦への”支配者”の交代に過ぎなかったのですから。ソ連邦の支援なくしてキューバ革命が実現するはずもなく、共産主義体制の成立後は、共産党が全ての権限と利権を独占しつつ、カストロ氏は世界有数の富豪の一人となりました。国民を抑圧から解放したはずの革命の英雄は、自らの目的を達成した途端に抑圧者に豹変したのです(もしかしますと、共産主義者の目的は、最初から別のところにあったのかもしれません)。

 キューバ革命は、様々な歴史の教訓を残しています。歴史には、”独立”や”革命”といった国民の耳に心地よく響く言葉は、得てして欺瞞に満ちており、国民をさらなる過酷な支配に追いやる結果を招くことも少なくありません。この現象はキューバ革命に限ったことではなく、今日、全世界的に観察される政治家に対する国民の根強い不信は、政治的スローガンやトリックに騙されてきた人々が、歴史の教訓に学んだ結果でもあります。そろそろ、人類は、真の意図を隠した偽りの言葉に騙されてきた時代に幕を降ろす日を迎えつつあるのではないでしょうか。

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歴史実証主義への転換点ーカナダ・ユダヤ人協会の慰安婦問題意見書に感謝

2016-11-26 15:13:28 | 国際政治
 慰安婦問題については、昨年末の日韓慰安婦合意も虚しく、韓国による違約に留まらず、国際社会では、共同申請の形式でユネスコの「世界の記憶」への登録が試みられております。事態が悪化を辿る中、日本国には、思わぬところから助け船が登場することとなりました。それは、カナダ・ユダヤ人協会の人々です。

 報道によりますと、ユネスコの「世界の記録」への登録審査に関連して、カナダ・ユダヤ人協会は、”申請者はホロコーストの意味を捻じ曲げている”との意見書を提出したそうです。当意見書には、”事実の裏付けがない”とする理由を付しており、契約の下で慰安婦には給与が支払われていたことなど、事実に基づく根拠を添えています。しかも、中国によるチベット虐殺や文化大革命の非人道性にも言及しており、申請者の不公平な態度まで批判しているのです。

 日本国とユダヤ人との関係については、これまで、必ずしも良好とは言えない状況にはありました。先の大戦にあっては、杉原千畝氏をはじめ、多くの日本人が迫害されていたユダヤ人を援けましたが、戦後は一貫して、ユダヤ人の人々は、日本国に対して冷淡どころか、敵対的でさえありました。慰安婦問題については、ユダヤ人協会は常に日本国に対して糾弾論調であり、中国や韓国との協力関係さえ疑われていたのです。ところが、今般、カナダ・ユダヤ人協会は、この問題について態度を180度転換させています。その背景には、今後、元慰安婦の証言ではなく、史料に基づいた厳密な検証が実施された場合、慰安婦の実像が明らかとなることは必至であり、ホロコーストが捏造された慰安婦問題と同一視されることを、ユダヤの人々が怖れたのではないか、とする憶測もあります。ホロコーストも捏造ではないか、と…。

 ユダヤ人の思惑がどこにあるにせよ、また、日本国のためというよりもユダヤ人のための方向転換であったとしても、窮地にあった日本国が、カナダ・ユダヤ人協会に援けられたことは疑い得ません。そして、カナダ・ユダヤ人協会の見解が、歴史問題において実証主義への転換を画するとしますと、国際社会における意義は決して小さくはないのではないかと思うのです。この意味において、カナダ・ユダヤ人協会には、深く感謝したいと思うのです。

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中国の一人勝ちは許されるのかーグローバリズムの幻想

2016-11-25 09:57:21 | 国際政治
TPP漂流、中国が攻勢=習主席、南米歴訪で布石
 グローバリズムを最大限に利用し、かつ、最大の利益を受けた国は、中国であると評されています。それでは、何故、グローバリズムは、中国にとって有利に働いたのでしょうか。そして、先進国諸国は、何を読み違えたのでしょうか。

 仮に、グローバリズムが存在しなければ、中国は、軍事、並びに、経済大国として台頭することはなかったことでしょう。今日の中国の大国としてのステータスは、決して自力で築き上げたのではなく、グローバリズムというシステムの利用によるものに過ぎません。本来であれば、13億もの人口を擁し、かつ、低い生活水準に甘んじている状態にあれば、まずは、外需よりも内需の発展に努めるのが筋というものです。否、自国に巨大、かつ、供給不足の市場を有しながら、日用品を含む消費財を海外諸国に大量に輸出すること自体が、一般の国家では、あり得ない政策なのです。しかしながら、グローバリズムは、外国資本・企業による’世界の工場化’によって、中国に対して安価な労働力と通貨安を武器に輸出大国化する道を開き、軍事大国化の基盤となる外貨を提供すると共に、雇用機会や先端技術をも提供することとなりました。

 一方、先進国諸国の企業も、中国の安価な労働力と通貨安を利用したことは確かなことです。中国という国家と先進国企業との間には、ウィン・ウィンの関係が成立しているように見えますが、より詳しく観察しますと、国民に対しては雇用機会の流出による雇用不安をもたらし、企業に対しても技術流出が競争上の優位性を奪っています。短期的には成立していたウィン・ウィン関係も、時間の経過と共にウィン・ルーズ関係へと変化してゆくのです。ところが、ウィン・ルーズ関係に転じても、企業には、13億市場は魅力に映ります。規模こそ全てとするグローバリズムの考え方に基づけば、中国市場はビジネスチャンスに溢れているように見えるのです。

 しかしながら、中国のグローバリズム便乗政策の本質が覇権主義である限り、中国が、今後、海外からの輸入を積極的に拡大させるとは思えません(巨額の外貨準備は経済支配の源泉…)。また、先進国から先端技術を吸収し尽くし、科学技術のレベルが追い付けば、海外企業の進出に対しても消極的な姿勢に転じることでしょう。否、先進諸国の企業は、資金力に優る中国系企業に買収され、その傘下に組み込まれる運命が待っています。既に、その兆候は見えております。そして、最後の総仕上げこそ人民元の国際基軸通貨化であり、遂に外貨準備も不要となるのです。

 ”一帯一路構想”に含まれる地域のみならず、グローバリズムの寵児として全世界を中国経済圏に変貌させようとすることでしょう。”グローバリズムに乗じてグローバリズムを乗っ取る”、これこそが中国の野望であるならば、このまま、現行のグローバリズムの路線を邁進することは、他の諸国にとりましては”自殺行為”ともなります。人口13億の市場に惑わされますと、ギリシャ神話のイーカロスのように、自らが溶かされて墜落することにもなりかねないのではないかと思うのです。

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仮想通貨保険の吉凶

2016-11-24 15:27:43 | 国際経済
 ビットコインとは、難問の解読という作業によって無から有を生み出す奇妙な仕組みの通貨です。いわば、他の一般的な法定通貨とは違い、政府による法的保障がないことから、一種の”偽造通貨”とも言うべき存在ですが、この”いかがわしい通貨”への不安を解消するためか、仮想通貨保険なる新たなビジネスも登場したようです。

 本日の日経新聞の一面に、三井住友海上が、仮想通貨の盗難補償という新たな保険サービスを開始するとする記事が掲載されていました。同保険の主たるターゲットは取引所の事業者ですが、取引所のみならず、口座を設けている利用者の被害をも補償の対象に含めるそうです。しかしながら、この仮想通貨保険、狙い通り、仮想通貨の普及を促すのでしょうか。確かに、保険サービスの登場によって、取引所を含めて仮想通貨を使用している人々にとりましては、安心感が広がるかもしれません。保険がない状態では、サイバー攻撃等によって盗難にあったり消滅したら最後、泣き寝入りするしかなかったからです。しかしながら、その一方で、保険サービスの登場は、リスクの裏返しでもあります。

 ビットコインは、そのマイニングの仕組みには疑問が呈される一方で、フィンテックの側面においては、所有者を正確に記録して把握できる点において、ブロック・チェーンの仕組みは大手金融機関が参考にするほどの評価を受けています。ところが、保険サービスの開始は、ブロック・チェーン方式を以ってしても、盗難や消滅があり得ることを示しています。

 また、一般の法定通貨では、為替取引の事業者や預金者が盗難や消滅に備えて保険会社に保険料を支払うことは殆どありません。この違いは、仮想通貨は、他の法定通貨と比較してコストが嵩むことを意味します。盗難・消滅リスクに比例して保険料も高くなりますので、保険料負担は、仮想通貨普及へのブレーキにもなるのです。利用者も、保険料の負担を求められるかもしれません。

 さらに最悪の場合には、保険サービスを提供する保険会社が甚大な損害を被るケースも想定されます。仮想通貨が生息するコンピューターの世界では、常にハッカーとそれを防ぐ側との”いたちごっこ”が続いています。仮に、高度なサイバー・テクニックを有するハッカーと取引所等が密かに結託し、大規模な仮想通貨の盗難・消滅捏造事件を起こすことに成功すれば、”保険金詐欺”と同様の被害が発生します。コンピューター上の操作に過ぎませんので、巨額の被害を偽装することも簡単です。


 このようなリスクを考慮すれば、仮想通貨保険サービスは、普及に一役買うよりも、仮想通貨、特に、ビットコインのリスクを改めて印象付けることになるのではないでしょうか。

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北方領土へのロシアのミサイル配備ー日ロ経済協力はストップでは?

2016-11-23 14:04:26 | 国際政治
北方領土に最新鋭ミサイル=軍事化が一層鮮明―ロシア報道
 プーチン大統領の訪日を前にして、北方領土をめぐる動きも慌ただしくなってきました。こうした矢先、インタファクス通信の情報として、ロシアが択捉島と国後島の両頭に最新鋭ミサイルを配備したとする報道がありました。

 日本国内のマスコミの説明では、ロシアの狙いは北方領土の実効支配の強化にあるというものです。しかしながら、この見解、ロシア側のミサイルの使用目的を考慮しますと、あまりに表層的なように思えます。配備されたのは対艦ミサイルとされていますが、海上自衛隊を想定しての措置であることは一目瞭然です。実際に、APEC首脳会議が開催されたペルーのリマにおいて、プーチン大統領は北方領土全島のロシア帰属について明言し、経済協力を表明してきた日本国側の期待を裏切っております。北方領土については、ロシアの態度はむしろ硬化しているのです。しかも、北方領土がミサイル基地化するとしますと、近い将来、日本列島全域を射程距離に含める中距離核ミサイル、あるいは、大陸間弾道ミサイルが配備される可能性さえあります(それとも、ロシアは、今や、新自由主義の残された砦と化している日本国政府に対して圧力をかけているのでしょうか…)。ロシアによる実効支配の強化とは、アジア、否、全世界の軍事的パワー・バランスさえ崩しかねないのです。

 ロシアによる急速な北方領土の軍事基地化に対して、日本国政府の動きはあまりに鈍く、殆ど無反応です。アメリカのトランプ次期大統領が親ロ的であることから、対ロ関係については楽観視しているのかもしれませんが、最新鋭ミサイルの配備については、予定されている日ロ経済協力のプランの凍結や停止をも検討し、ロシアに対して抗議の意思を示すべきなのではないでしょうか。

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