風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の弐拾

2010-03-12 15:05:00 | 大人の童話

六小のつぶやきめいた独り言を聞いた夢は、

「ふーん、六小さん、それでわたしを励ましているつもりなの。」

と、懐疑の眼を六小の方へむけました。

「う・ん。その・・・つもり・・・だけど。」

六小は”あ、聞こえてた”と、あわてて答えました。すかさず夢は、

「だったら、もうちょっと優しく励ましてよ。四小さんみたいに。」

と言い、さらに、’もう、がまんできない’というように、六小より四小の方がよかったと

あれこれ言い始めたのです。六小は、黙って夢の言うことを聞いていましたが、

やがて静かに言いました。

「夢ちゃん、落ち着いて。夢ちゃんが、わたしより四小さんの方がいいと思って

いることは、初めて会った時からわかっているから、わたし。でもね、わたしは

四小さんじゃない。いろいろ言ったりしたり、わたしはわたしのやり方でしか

できない。励まし方も、そうなの。そこんところ、わかってほしいの。出会ってから、

もう四年がたとうとしてるんだし。」

夢は、はっとしました。

”そうだった。六小さんは四小さんじゃないんだ。六小さんは、去年わたしが

いじめられてる時、一所懸命になって慰めてくれたり励ましてくれたりしてたのに。

それがとてもうれしかったのに、わたしったら何言ってんだろ。”

そして、ペコッと六小に頭を下げて謝りました。

「そうだった。六小さん、ごめんね。わたし、去年六小さんが励ましてくれて、とても

うれしかったのに。それを忘れて・・・ごめんね。」

「わかってくれればいいよ。それより、二十五メートル泳げなくてもいいよ。

ただし、練習してもできなかったらの話、だけどね。」

「うん。ありがと。」

「ふふ、夢ちゃんの本気で怒ったとこ始めて見た。なんか意外だったな。」

「やだ。はずかしい。」

「うふふ、じゃあね。バイバ~イ。」

六小はそう言うと、パァーッと一回、大きく光を放ち消えていきました。