六小のつぶやきめいた独り言を聞いた夢は、
「ふーん、六小さん、それでわたしを励ましているつもりなの。」
と、懐疑の眼を六小の方へむけました。
「う・ん。その・・・つもり・・・だけど。」
六小は”あ、聞こえてた”と、あわてて答えました。すかさず夢は、
「だったら、もうちょっと優しく励ましてよ。四小さんみたいに。」
と言い、さらに、’もう、がまんできない’というように、六小より四小の方がよかったと
あれこれ言い始めたのです。六小は、黙って夢の言うことを聞いていましたが、
やがて静かに言いました。
「夢ちゃん、落ち着いて。夢ちゃんが、わたしより四小さんの方がいいと思って
いることは、初めて会った時からわかっているから、わたし。でもね、わたしは
四小さんじゃない。いろいろ言ったりしたり、わたしはわたしのやり方でしか
できない。励まし方も、そうなの。そこんところ、わかってほしいの。出会ってから、
もう四年がたとうとしてるんだし。」
夢は、はっとしました。
”そうだった。六小さんは四小さんじゃないんだ。六小さんは、去年わたしが
いじめられてる時、一所懸命になって慰めてくれたり励ましてくれたりしてたのに。
それがとてもうれしかったのに、わたしったら何言ってんだろ。”
そして、ペコッと六小に頭を下げて謝りました。
「そうだった。六小さん、ごめんね。わたし、去年六小さんが励ましてくれて、とても
うれしかったのに。それを忘れて・・・ごめんね。」
「わかってくれればいいよ。それより、二十五メートル泳げなくてもいいよ。
ただし、練習してもできなかったらの話、だけどね。」
「うん。ありがと。」
「ふふ、夢ちゃんの本気で怒ったとこ始めて見た。なんか意外だったな。」
「やだ。はずかしい。」
「うふふ、じゃあね。バイバ~イ。」
六小はそう言うと、パァーッと一回、大きく光を放ち消えていきました。