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電力自由化で原発はどうなる 竹森 俊平

2012-01-14 09:19:08 | ちょっと 『気になる』 はなし

http://allatanys.jp/B001/UGC020007420120110COK00981.html

『日本の電力業と原子力政策の行方を決める方針を、このところ政府は矢継ぎ早に発表しているが、発表された個々の政策の意味、さらにはそれらの政策が総合的に持つ意味について国民の間に十分伝わっているかどうか疑わしい。新聞の分析には、朝日、日経、読売三社のいずれをとっても踏み込み不足があり、「これが何を意味するのか」が一般国民に分かるように、端的に指摘できていないのだ。
 その点を解説する前に、基本的な事実を確認すると、「東電の実質国有化」は既成事実になったと見て良いようだ。さらに、政府は電力業の自由化を本格的に進める計画のようで、当面は電力会社の送電網に他の事業者の発電を載せやすくすることを目標とした自由化だが、将来的には「発送配電」の完全分離も視野に入れる模様である。さらに、1月6日の読売によれば、政府は「原発の公的運営」も検討しているようだ。
 これらの方針が全体として何を意味するのか。まず、電力の自由化は競争を通じて国際的にも高い日本の電気料金を引き下げ、同時に消費者により幅広い電気利用の選択を提供する狙いがある。そこまでは誰でも分かることだ。より分かりにくいのは、この方針が、政府の「脱原発」へのさらなる踏み込みをも体現していることだ。一言でいって、自由化された電力市場では、原発の推進は難しいのである。
 たとえばアメリカでは現在100基以上の老朽化した原発が稼働しているが、1979年のスリーマイル島の原発事故以来、30年以上にわたって原発の新設は一基もない。これは反核の動きのためではなく、自由化されているアメリカの電力市場においては、原発があまりに高コストで、しかもビジネス上のリスクが高い発電形態だからである。
 スリーマイル島でも事故を起こした1号機は稼働をやめたが、その隣の2号機は稼働を続けている。また、ニューヨーク・シティーからわずか40キロの近郊にインディアン・ポイントという原発の施設がある。70年代初めの米エネルギー庁の研究では、ここで事故が起こった場合、最悪のケースでは200万人の退避が必要だということである。そのような危険な場所でも老朽化した原発が稼働しているという事実は、反核の政治的な動きが原発の新設を停めている理由ではないという事実を明らかにする。
それではなぜ、原発の新設が滞るのか。反核ではなくても、安全性のチェックは原発の場合、重要な課題になるのは間違いない。それで自治体の許可がなかなか下りなければ、原発建設のコストは嵩む。原発は設備投資費の高い発電形態だから、稼働までの時間が延びれば延びるほど、金利負担が過大に掛かってくるのである。加えて、どこの国も事業者には保険の義務を課しているが、スリーマイル島の事故で保険料は大幅に上昇した。今度の福島の事故で、アメリカでも保険料はますます高騰し、一時はアメリカでの原発再開の動きが起こるかとも思われたが、その見通しは消えたのではないか。
 電力自由化はこうした判断と密接につながっている。つまり日本のように電力事業の地域独占が成立し、電気料金については総括原価主義(つまり電気を生み出すコストに適正な利潤を上乗せした額を電気料金とする)を採用している国では、自治体の反対で原発について予想の費用を超えるコストオーバーランが起こっても、あるいは保険料の値上がりが起こっても、その額を電気料金に上乗せすれば良いのだから、電力事業者は原発という発電形態の抱える経済リスクをさほど気にしなくても済む。
 これに対して電力事業が自由化され、送電網に流される電気の卸売価格が、その時点の需給条件や競争条件によって左右されるアメリカのような市場においては、原発の場合、深刻なコストオーバーランを電気料金に上乗せできる保証はないので、電力事業者はコストオーバーランによって投資額を回収できなくなる危険に晒されている。それゆえ、民間の電力事業者は原発のようなリスクが大きく、設備投資費も嵩む発電形態を避け、よりリスクも、設備投資費も少ない、石炭や天然ガスのような火力発電を選択する。
日本の電力業も自由化が進んだ場合、同じ展開を迎えるだろう。それが望ましいかどうかについては、とてもこのスペースで論じられるものではない。ここで取り上げたいことは、いくつかの新聞において、日本で電力自由化を進めることは望ましいという論調と、原発はあくまでも推進するべきだという論調が併記されていることだ。それが一番顕著なのは日経だが、最近は読売にも同様の傾向が見られる。もちろん、原発の公的運営という報道で、読売はバランスをとっているのかもしれないが。
 これまで筆者は、東電の責任を問うのならば、解体して新会社を作るしかないと述べてきた。電気の回復にはどのような発電形態にしろ、ともかく大々的な投資が必要だからだ。原発事故から10ヵ月が経過し、政府はようやく一貫性のある方針を取り始めた。』

電力料金が本当に自由化されたら、日本の電気料金は米国並みに下がるのだろうか?原発の稼働を支えているのが「総括原価主義」と言われる制度というのも納得できる。


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