五、「教会とわたしたち」(355)
5.近代から現代へ(宗教改革とその後)
ハンス・キュンク氏の著「キリスト教思想の形成者たち」などを参考にしながら聖書の使徒パウロから始まった歴史を辿ることにする。「パウロから始まった」といっても、その名のつく手紙という形で聖書に残され十三通は、宣教目的によって書かれたものであって、歴史的目的を持って書かれたものでない。しかし、わたしどものこの稿で採用されないが、ハンス・キュンク氏のその書き出しは、「最初のキリスト教著作家であり神学者であったユダヤ人パウロは、キリキヤ(今日のトルコ)の町タルソスの生まれである。」という書き方で始まる。まさに歴史書としての考察であり、聖書は、使徒言行録9章11節から採られた。聖書にはその種の時代考証的な部分がかなり含まれているので、適切な編集作業を伴わせるなら、そのまま初代教会の歴史書の価値を有するとするのが大方の研究者の評価である。さて、初代教会の(ここまで前回)
オリゲネスが生まれた紀元185年頃、キリスト教はローマ帝国においては、まだ、ごく小さな勢力に過ぎなかったと一般にいわれている。従って、当時のだれもが、その後たった約150年経って、すなわちキリスト教が、313年、ローマ帝国に公認される宗教になっていると予想する人いなかった。ローマ帝国のキリスト教迫害が激しく、その勝利者は帝国側であることを疑う者は、その2~3世紀の社会的.動向の中ではほとんどいなかった。さらには、前代未聞の驚愕的知らせが、帝国全土を駆け巡った大事件が起こった。(つづく)