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合間の博物館旅日記

博物館を回りながら日本各地を旅をする過程の壮絶な日記。(2005.4-9月)
旅終了後は適当に随時更新の予定。

包帯男≠南方仁説

2011-06-24 01:29:14 | Weblog
いよいよテレビドラマの「JIN-仁-」も次回二時間スペシャルで最終回である。
私はこの作品については以前からことあるごとに触れてきたから、今回も書かねばなるまい。

ところで、漫画の最終巻を読んでいて驚くべきセリフに出会った。
とそれを書く前に、漫画の最終巻がどんな展開かを整理しておこう。

仁たち一行は龍馬を暗殺から救うべく京都に赴くが、結局助けることができず失意の内に江戸へ戻ってくる。薩摩と長州、土佐は官軍として討幕のため江戸へ向かう。
上野戦争の砲火が響く中、仁は咲に求婚。会津へ向かう仲間たちを尻目に、恭太郎は外国へ留学する道を選択する。

この頃、仁を原因不明の頭痛と吐き気が襲う。自分が現代で手術した身元不明の男(ドラマでいう「包帯男」)が自分自身であると考える仁は、自分の脳内に胎児型腫瘍があり、それが頭痛を引き起こしていると確信する。この時代、誰も彼の脳内の腫瘍を取り出すことはできない。

一方、仁に恨みを持ち、彼がいなくなれば新政府下の医学界を一気に牛耳れると画策する医師・三隅は、仁友堂に出入りして恭太郎に短銃を手渡した後、仁らを襲わせる。銃は暴発し恭太郎は死亡。咲も巻き添えを食って傷を負う。

咲の傷を負った腕は緑濃菌に感染する。これは龍馬を髄膜炎にしたのと同じ菌で、ペニシリンが効かない。
咲の容態は悪化し、また仁の頭痛や吐き気、錯視の状態も酷くなる。まさに八方塞がりだ。
そんな中、三隅の罠にはまった仁を三人の暗殺専門の武士が襲う。絶体絶命。頭部に一撃を浴びる仁。その時暗殺者たちが仲間割れを始める。何とそのうちの一人は、龍馬を斬ったあと行方をくらましていた東修介だったのだ。東に斬られる三隅。
が、その直後、龍馬の声に導かれ、崖から転げ落ちる仁。そして現代へタイムスリップ。

気が付くと病院のベッドに寝ている仁。彼は胎児型腫瘍の標本と医療キット、そして緑濃菌に効くホスミシンという薬を持ち出し、非常階段へと向かう。
もみ合う二人の仁。そして……見事幕末へ戻った仁は、ホスミシンを手に咲の治療へと向かう。



ここまでが最終巻の途中までの大まかな流れだ。脳内の腫瘍を摘出し、咲の治療に必要な薬を入手するという奇跡のウルトラCを成し遂げるわけである。

ところで冒頭に記した凄いセリフとは、緑濃菌に冒され病床に伏している咲のセリフである。

「私、頑張ります。人は死ぬまで一生懸命に生きるのが仕事ですものね」

こんなセリフをサラッと書いてしまう村上もとかは凄い!
ここで言う「仕事」とは、勿論我らが日常的に使う仕事ではない。敢えて訳すなら、つとめ、使命、責務とでもいったところか。
死ぬまで一生懸命に生きる。
死ぬことは分かっている。避けられない。しかしその時まで、あがきながら、ジタバタしながらも、その時その時を一生懸命に生きることこそ、人間が取るべき行動なのだとこの作者は言うのである。



さて。閑話休題。
よく誤解されているのは、仁が二人に分裂した、と思われていることだ。現代の仁は、一人は文久三年の江戸へ。もう一人は現代に残っている。仁という名前はにんべんに二だから、二人に分かれることをそもそも暗示しているんじゃないかと……。
違う。分裂などしていないのだ。
それはタイムスリップに、あの胎児型腫瘍が必要だと考えれば理解できる。
最初の身元不明の患者、すなわち包帯男は、脳内に腫瘍があったから、幕末からタイムスリップした。
その標本を手にして現代の仁がタイムスリップ。
数年後、龍馬の血液や脳髄液を浴びて成長した脳内腫瘍を持った仁が現代にタイムスリップ。
そして彼が、その標本を手に再び幕末へと戻る。
胎児と共にタイムスリップできるのは一人だから、最後現代の仁が現代に取り残されるのは当たり前なのである。
すなわち一巻のシーンと最終巻のシーンは、よく似ているが別の次元、別の世界の話なのである。
お初ちゃんという子どもの手術の際に、お初ちゃんが死なず仁が存在しない世界がある、ということが暗示されていた。つまり、様々な可能性を持つ無数のパラレルワールドの存在を漫画は投げ掛けている。
だから最初のタイムスリップと二度目のタイムスリップは別の世界でそれぞれ起こっているのだ。
その証拠に、一巻の包帯男は階段からダイブせず、踊り場の壁にもたれかかっている。最終巻の包帯男(すなわち江戸から来た仁)は、現代の仁より先に標本へ手を伸し階段からダイブしている。
同じことが繰り返されたわけではないのだ。


さて、そうすると、最初の包帯男は一体どこからやって来たのか、という疑問が起こってくる。パラレルワールドは無数にあるから、また別の世界の仁だったのか? ではその世界の最初の包帯男は?
考えるとキリがなさそうだ。


そこで私は、包帯男は実は仁ではなかったのだ、という新説を唱えてみたい。漫画の中で、仁本人が認めていることを、敢えて本人の思い違いだったと仮定してみたいのだ。

仮にあれを仁本人だったとしよう。そうするといろいろ無理が生じる。
包帯男は身元不明で、そのために手術を執刀した仁のとこにまで刑事が聞き込みに来ているくらいだ。ところが、あれが江戸から来た仁だとすると、着物を着ている上に紋付や袴なども着用している。およそ現代人の服装ではない。そのことに刑事が全く触れてないのは何故だろう。実は普通の洋服を着てたのではないか?
手術を担当した仁は服など見てないだろうが、もし患者が江戸から来た仁なら、右肩甲骨のあたりに刀で斬られて縫合した傷を見ている筈である。これは身元を割りだすのに相当有力な証拠である。しかし仁はそれを刑事らに語っていない。何故か? それはつまり、傷なんかなかったからだ。
結論を記そう。最初の包帯男は、仁とは縁もゆかりもない単なる浮浪者か何かで、たまたま手術後に胎児の標本や医療器具なんかを持ち出した頭のおかしい人だった。
それを江戸へタイムスリップした仁が自分だと思い込み、そしたら本当に脳内に胎児型腫瘍ができて、あまつさえ現代の自分に手術されてしまった。同じような行動をとったのは、たまたま最初の包帯男がした行為をなぞったためだった…。

この説なら、最初の包帯男の仁がどこから来たかという矛盾については解決しているように思うのだが……。


いずれにしろ、ドラマは漫画とは違うラストになるという話なので、ドラマの最終回を楽しみに待つしかあるまい。

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