宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

Toulouse が寒い

2007年08月21日 | フランス

僕の住むToulouse(トゥールーズ) が今寒い 。まだ8月の中旬だというのに長袖シャツ1枚では寒くて外に出られないくらいだ。南仏の陽気な太陽と爽やかな風はどこへ行ってしまったのだろうかと思う。

一方、日本では記録的な猛暑続きで、節電しないと必要な電力が賄えないくらいだと聞いている。どちらも世界的な異常気象の氷山の一角にすぎないのではないかと思う。誰の目にも見える形で異常気象が顕在化してきたことは、これからの僕達の暮らし方を考える上で、ある意味で良いシグナルになるのかも知れない。

今年のノーベル賞の受賞者候補に、アメリカ合衆国元副大統領のゴア氏がノミネートされているそうだ。もっとも、アカデミー賞とは違ってノーベル賞にはノミネートという制度はないので、現時点ではあくまで候補者として名前が挙がっているらしいという噂にすぎない。

ゴア氏が候補になっているのは、ノーベル平和賞だ。長年の地球環境問題への積極的な取り組みが評価されてのことらしい。これまでノーベル平和賞といえば、世界的な紛争解決への貢献や貧困の解消といった、どちらかというと政治経済的な分野での活躍が評価されることが多かった。地球温暖化という深刻な問題が、人類全体の問題として認識され始めた証拠だと僕は思う。

何から始めればよいのか良く分からないけど、僕もここトゥールーズで出来ることから始めていきたいと思う。それにしても、寒い。寒過ぎる。絶対に何かがおかしい!

(写真はチームマイナス6%より)

賞味期限切れ

2007年08月20日 | フランス
 
最近日本では内部告発によって企業の不祥事がどんどん明るみに出て、食の安全が危うくなりつつあるというニュースをよく聞く。しかし、僕に言わせればそんなのはまだ甘い。ここフランスで僕が食べている日本食なんて、賞味期限切れが当たり前だ。

写真を見てほしい。僕が昨日中国系のスーパーマーケットで購入した「そば屋のそば」という名前の乾麺式の日本そばだ。外部告発になってしまうのであえて製造メーカの名前は明かさないが、長野県で製造されている商品だ。ネーミングがストレートすぎ!というツッコミは置いておいて、昨日(2007年8月18日)購入したにもかかわらず、賞味期限は2007年5月と記載されている。僕は賞味期限を3ヶ月も経過した商品を買わされてしまったのだ。

賞味期限を確認せずに買った僕が悪い、というコメントを受けそうなのであえて説明すると、賞味期限と製造者を記載した部分には巧妙に輸入用の英語のシールが張ってあり、これらの情報をお店の中で確認することはできない仕組みになっている。つまり、不審者と間違えられることを覚悟してお店の中で強引にシールを剥がさないかぎり、商品を購入する前にこの商品の賞味期限を知ることは不可能なのだ。もちろん、このシールは外装にべったりと張り付い強力なタイプのシールなので、一度剥がしたら元に戻すことはできない。すなわち、買うしかない。

一番ひどいなあ~と思うのは、あらゆる商品でしっかりと同じような位置に輸入用のシールが張ってあることだ。これはもう賞味期限が切れていることを承知した上で、意図的にその情報を隠そうとしているとしか思えない。賞味期限が切れた食品のみを叩き売りで安く仕入れ、都合の悪い情報を隠して不当な利益をあげているのかもしれない。そうだとしたら、社会にとっては本当に困ったことだ。

もちろん、これは製造者の責任ではないのかもしれない。一度商品を流通に置いて後では、製造者が商品の流れをコントロールするのは容易ではない。日本国内で販売したものの売れ行きの良くなかった商品がどんどん転売され、最終的にここトゥールーズの中国系スーパーマーケットに行き着いたのだろう。そうならば、製造者に非はない。非があるとすれば、賞味期限が切れていることを知った上で販売しようとした販売業者のほうだ。

ただし、消費者の目から見れば、商品の評判を落としているのが製造業者なのか、それとも、販売業者なのかは全く関係ない。商品そのもの、そして、それを製造した業者そのものに悪いイメージを抱いてしまうのが普通だ。企業ブランドの維持という意味で、こんな事態をずっと放置しておくようではダメだと僕は思う。

(写真は証拠写真。頑張ってキレイにシールを剥がしてみた。)
 

Wedding Party

2007年08月19日 | フランス
 
今日はMBAのクラスメートであるHadrienの結婚披露パーティーの日。当然、クラスメートである僕達も招待されていて、彼らの新居があるというAribus社近くのMondonvilleという町へ向かった。そう、彼はAirbus社で働くエンジニアなのだ。そして、Aerospace MBAの中では、彼は僕のMCTPプロジェクトのチームメイトでもあった。

そんなHadrienは、実をいうとToulouse(トゥールーズ)出身ではない。Dijion(ディジョン)という、ちょうどフランスの中央部に位置する町の出身だ。ディジョンといえば、マスタードの生産地として世界的に有名だと思う。

結婚式自体はディジョンの町で既に行ったらしく、今回は結婚披露パーティーのみ自宅のあるトゥールーズで行うことにしたらしい。インターン勤務で忙しい僕達にとっても、そのほうが都合がよかったりする。ディジョンにも行ってみたいが、やはり少し遠い。車で行ったら10時間くらいかかると思う。

フランスの結婚披露パーティーは、基本的に手作りだ。日本のようにホテルの大広間を借り切って披露宴なんてことはほとんどしない。特に、自宅にプールと広い庭が付いているのが当たり前のトゥールーズでは、自宅に友人・知人を招いてのカジュアルパーティーを開催するのが一般的なようだ。

Hadrienの自宅もまた素晴らしい。広~い芝生の庭と結構大きなプールがついている。彼はまだ29歳で僕よりも若い。それでも、エアバス社でマネージャーとして勤務するクラスになると、この程度の家に住むのはごく普通なのだと他のクラスメートが言っていた。「NOBUもATR社に残ればこんな生活ができるよ」、なんて言われると、やはりちょっと羨ましくなる。

それは置いておいて、Hadrienの結婚披露パーティーはとても素晴らしかった。若い二人が皆をもてなすために一生懸命に協力して準備したんだろうなあ~、という感じが伝わってくる。パーティーの中で直接お祝いの言葉を述べた後、MCTPプロジェクトの最後の追い込み期間中はHadrienを夜遅くまで占領してしまってゴメンナサイ、と一応謝っておいた。自宅に一人残されてきっと寂しかったことだろう。

お金はほとんどかけていないのに、フランスの結婚披露パーティーは日本の結婚披露宴よりも格段にRichness(リッチネス)が高い。文化の違いとして済ませる前に、ここから何かを学んでもいいんじゃないかと思う。
  

SWOT分析

2007年08月18日 | MBA
 
今日は久々にMBAの基本中の基本に戻って、分析ツールの一つであるSWOT分析について。前にも何度かブログの中で紹介したと思うのだけど、「SWOT分析をやってみたけど、使い方がよく分かりません」というメールをいただいたので、僕なりのやり方を紹介したい。

まず、SWOT分析とは、経営分析に用いるツールの一つで、ある会社や製品がどんな強み(Strength)を持っているか、どんな弱み(Weekness)を持っているか、そして、どんな機会(Opportunity)に恵まれているか、さらには、どんな脅威(Threat)にさらされているかを、マトリックス形式で分析するというものだ。誰でも簡単にどんなものにも適用できるのが長所である反面、分析者の立場によっては主観的な結論に陥りやすいという短所もある。

その短所を補うために僕達がMBAで習ったのは、SWOT分析を用いるのではなく、TOWS分析を用いるべしという鉄則だ。ただ順番を逆にしただけなのだけど、まず脅威と機会という外部要因に着目することによって、可能なかぎり中立的な目で内部にある強みや弱みを見極めることができる。これは僕のアカデミック・スーパーバイザーでもあるSveinn教授から教わったテクニックだ。

ということで、僕はいつも外部要因としての「脅威は何か?」を分析することから始め、その後順番に「機会は何か?」、「弱みは何か?」、「強みは何か?」と続けてゆく。これが僕の中でのSWOT分析ならぬ、TOWS分析だ。

SWOT分析が役に立たないと言っている人の多くは、ほとんどの場合が脅威や機会、そして、強みや弱みの要素を列挙するだけで終わってしまう人だ。いくらカテゴリー分けされているとはいえ、ただの事実を何時間眺めても経営戦略なんて頭に沸いてこない。ここで終わるくらいなら、最初からSWOT分析をしないほうがまだ賢いと思う。時間の節約になるからだ。

本当に大事なのはこの後だ。僕のいつものやり方は、図のように4つのマトリックスそれぞれで、意図的に頭の中の思考様式を変えながら戦略オプションを考えるというものだ。具体的には以下のとおりだ。

まず、「脅威」と「弱み」とが交差する部分では、Cooperative Approach(協力型アプローチ)を使って考える。つまり、いかにして協力関係を築きながら自分の弱みを克服し、脅威の到来に耐え抜くことができるかを考えるのだ。かなり保守的な守りの姿勢だけど、脅威に対して弱みしか持っていないのであれば、戦っても勝ち目はない。それ以上に状況を悪化させない策を練るのがベストだ。

逆に、「強み」と「脅威」が交差する部分では、Repulsive Approach(撃退型アプローチ)を使って考える。つまり、自分の中の強みを使っていかにして脅威を撃退できるかを考えるのだ。強みを有しているのだから逃げ腰になるのではなく、あえて攻めるべきだと僕は思う。

そして、「機会」と「弱み」が交差する部分では、Recovering Approach(回復型アプローチを使って考える。つまり、この機会を利用して弱みを克服できないかを考えるのだ。チャンスを目の前にしてついつい攻めてしまいたくなるのだけど、弱みがある状態で攻めても成果はたかが知れている。ここはじっくりと体力を充実させることに集中すべきだ。

最後に、「機会」と「強み」が交差する部分では、Creative Approach(創造型アプローチ)を使って考える。つまり、これまでになかったような新しい手段で新しいチャンスを一気に獲得できないか考えるのだ。自分の中に強みがある上に追い風まで吹いているのでついつい目の前の小さな玉を拾いたくなるかもしれないが、決してあせってはいけない。頭をひねっていいアイデアを捻り出し、最終的にごっそりとチャンスを掴むのだ。

こんな風に4つの異なる思考パターンでそれぞれに最も適した戦略オプションを考えていく。これが僕の中でのSWOT分析だ。

もっといい方法を知っている人がいたら、ぜひ共有させてください。

(写真は僕の中でのSWOT分析ならぬ、TOWS分析のマトリクス)
 

航空マーケット分析

2007年08月17日 | インターンシップ
 
つい先日のことなのだけど、長らく日韓の行政当局によって規制されてきた日韓間の航空ルートが、基本的に自由化されることが決まった。これまでに小さな動きはいくつかあったものの、1967年に大枠が決められて以来の一大規制緩和だ。

今回の自由化によって、基本的に日韓の航空会社は、両国のどの空港にも自由に乗り入れができるようになる。ただし、一部例外も設定されていて、日本の羽田空港と成田空港だけは、あまりにも混雑しすぎているという理由で対象外となったらしい。その他、韓国のソウルにある仁川国際空港や日本の成田空港では、週73便までという制限内で自由にフライトが設定できる。つまり、これ以外の空港なら、両国の航空会社は自由に何便でも日韓間の空を飛ぶことができるのだ。

日本と韓国は最短距離で数百キロしか離れていないにもかかわらず、ヨーロッパでは既に常識となっているOpen Sky(オープン・スカイ)政策が全く進んでこなかった。おそらく、歴史的な背景に加え、様々な政治的要因が絡んでオープン・スカイ政策の進展を阻害してきたのだろうけれど、これでようやく両国の空に自由がもたらされたことになる。とても素晴らしいことだと僕は思う。

こういった大きな動きは、航空機メーカーのMarketing(マーケティング)担当者として、決して見逃してはいけない貴重な情報だ。なぜなら、当該地域のマーケティング戦略に大きな影響を与えるからだ。影響というより大きなビジネスチャンスをもたらすと言ったほうがいいかもしれない。当然、ATR社の情報ネットワークでも第一報が流され、追加の情報を調査するように僕に要請が入ってくる。

日本語での情報検索ならインターネットを使っていくらでもできるのだけど、問題は韓国側の情報をどうやって調査するかだ。僕は大学時代に中国語を勉強したものの、韓国語については全く分からない。日本側だけの情報では、一方に偏った判断をしてしまいかねない。それはとても危険なことだ。

僕は迷わずMBAのクラスメートである韓国人のJin-Wookに協力を求めた。こういうときに大きな力を発揮するのが、Aerospace MBAの国際ネットワークだ。ある人は、MBAへの投資の大部分は人的ネットワークへの投資だと言っていた。卒業後にどれほど役に立つかという基準でみた場合、ある意味当たっていると思う。

並行して僕も自分なりに分析を行い、ビジネスチャンスがあるかないかを見極めようとしている。そして、いろいろな分析を経て分かったことは、韓国のプサンから日本へのフライトが、現時点では成田、関空、名古屋、札幌のわずか4空港に限られていることが分かった。

プサンといえば、韓国第2の都市だ。その大都市プサンから日本へフライトするルートが、実際4ルートしかない。しかも、このプサンから400マイル以内の距離には、日本でも一定規模の人口を誇る中核都市がいくつも存在している。本当に現状の航空サービスで需要は100%満たされているのだろうか。僕にはそうは思えない。

それに、400マイル以内の距離といえば、Turboprop(ターボプロップ)機であるATR機が、その経済性において大きな威力を発揮するフィールドだ。スピードではジェット機に勝てないものの、この程度の距離であれば全体としてのフライト時間の違いは10分から20分程度でしかない。スピードが大きな違いを生む水平飛行の時間が、長距離フライトに比べて極めて少ないためだ。その一方で、燃料費をはじめとしたDirect Operating Cost(直接運行費)がジェット機よりも格段に安くて済むのだから、この程度の距離にターボプロップ機を使わない手はない。

こんなことを考えながら、データを精査して分析を行い、説得力のある結論を導き、最終的に航空機販売戦略という目に見える形にしていくのが、今の僕の仕事だ。

少しでも僕の仕事のイメージが伝わったなら嬉しいです。

(写真は分析の一部をビジュアル化したもの。プサンから日本へのフライトルート)
 

Creativityの源泉

2007年08月16日 | インターンシップ
 
最近のブログでは僕のATR社での勤務を反映してか、フランスだけではなくイタリアに関連した内容の記事も多い。会社自体はフランスにあってフランス人のほうが多いと思うのだけど、僕のボスはほとんどがイタリア人だということもあって、僕はどちらかというとイタリア人のマネジメント観を叩き込まれている気がする。日本とは全く異なる異質な考え方に直接触れることができて、イタリア人独特のセンスに感銘を受けっぱなしの毎日だ。

彼らが極めてCreative(創造的)に仕事を進めていることは前にも書いたのだけど、そのCreativeなスタイルが効果に結びつく要素として、僕はATR社内のある重要な特徴に気付いた。それは、計画されたミーティングが極めて少なく、かつ、突発的なミーティングが非常に多いのだ。

計画されたミーティングというのは、部門内の定例会議のほか、あらかじめ何月何日の何時からどこに集合して何について話し合うかが決まっているような会議のことをいう。いわば、自分の手帳に予定として書き込まれているミーティングのことだ。

それに対して突発的なミーティングというのは、全くスケジュールに入っていなかったにも拘らず、急に社内の誰かから呼び出しを受け、指定された部屋で特定のテーマに的を絞って意見を出し合うスタイルのミーティングだ。僕もアジア太平洋地域に関するテーマが上がっているときには、急に呼び出されることがある。

こういう突発的にスタートするミーティングというのは、当然僕としても資料も何も用意していないのだけど、その分過去の事例や業界のトレンドに縛られることなく、想像力の翼をいっぱいに伸ばして自由に発言することができる。その結果、出てくるアイデアも自然とDifferentiation(差別化)の方向にベクトルが働き、今まで思いつかなかったような斬新な戦略が頭に浮かんでくるのだ。

もちろん、計画された定例会議などに臨むときはしっかりと準備をして、どんな質問にも答えられるようにしておくのが当たり前だ。しかし、それでは過去の自分の常識のレベルを決して超えることができない。もう一ランク上の新しい考えに辿り着きたかったら、決して準備をしてはいけないのだ。自分の潜在的な才能と異質なものに触れることで発生する新たなChemistry(ケミストリー)を信じ、誰にも何にも縛られることなく、思いきって自由な発想の世界へと飛び込んでいく必要がある。

僕がヨーロッパ宇宙航空の中心地Toulouse(トゥールーズ)にやって来た目的の一つは、これまでにない宇宙航空の新しい用い方を発見し、日本の宇宙航空ビジネスに新しいドライバーをもたらすことにあった。そのための鍵が、今少しづつ見えてきている気がする。
 

お盆休み

2007年08月15日 | MBA
 
今日本はちょうどお盆休みの真っ最中だと思う。オフィスで勤務する一部の人を除き、日本中がほっと一休みする瞬間だ。こちらフランスでも8月15日は祝日になっていて、オフィスやお店は全てお休みとなる。当然ATR社での僕のインターンもお休みだ。

お盆といえば、僕はやはりお墓参りを思い出す。父方の祖父は日本人には珍しくとてもクリエイティブな人で、広島のある山の中を自分で切り開き、そこに自分のサンクチュアリ(聖域)を作ってしまった人だ。そして、そこからの眺めが大のお気に入りだった祖父は、さらに自分のお墓までそこに作ってしまった。ということで、僕の一族は毎年お盆やお彼岸を迎える度に、その祖父のサンクチュアリが存在する山の中へと分け入り、お墓参りをするのが習慣になっていた。それが僕の中でのお墓参りだ。

お墓参りをする意義というのは、もちろん故人を偲ぶということに加え、核家族化が進行する現代の世の中において、バラバラになった家族や親族が再び一堂に会する機会であるともいえる。そのためには、当然直接足を運んでお墓参りをしなければならないのだけど、僕のようにフランスに在住している者にとっては、それはちょっと難しい話だ。

そこで、宇宙を使ってお墓参りができないかどうか考えてみた。宇宙を使うとはいっても、別にロケットを使って遺灰を打ち上げる宇宙葬という意味ではない。光学観測型の人工衛星を使い、ある地点に存在するお墓をピンポイントに撮影し、お墓参りの代わりとすることができないかというものだ。

最新の衛星技術では、10cmの分解能を有する人工衛星を開発することも可能だ。これは、地上に引かれた10cm間隔の線を宇宙から識別できるということを意味する。ならば、宇宙から人工衛星を使い、縦横約2メートルのお墓を識別することくらい極めて簡単なことのはずだ。

さらに人工衛星に搭載されたセンサーの種類によっては、斜めの角度から地上の様子を撮影できるセンサーも存在する。ということは、うまく撮影すれば墓標に刻まれた『○○家の墓』という文字も確認できそうな気がする。ただし、エンジニアリング的な観点で本当に実現可能かどうかの確証はない。今後衛星エンジニアを仲間に入れて検討することが必要だ。

倫理的な問題として、宇宙から撮影した映像だけでお墓参りを済ませてしまうことへの是非はあると思う。しかし、既に日本ではインターネットを使ったバーチャルお墓参りシステムや、葬儀のインタネットライブ中継を提供するビジネスが存在している。ならば、お墓参りの需要をターゲットとした新衛星ビジネスとして『Obon-Sat』(オボン・サット)があってもいいのではないかと僕は思う。

ただし、このシステムではお供え物ができない。そこが弱点かもしれない。

(写真はピレネーの山奥の一風景。僕の祖父のサンクチュアリはこんなもんじゃない。)
 

祝 ブログ開設1周年!

2007年08月14日 | MBA
 
『宇宙航空MBAブログ』をご覧いただいている皆様、今日8月14日をもって当ブログはめでたく開設1周年を迎えることができました。パチパチパチ!これも日頃から『宇宙航空MBAブログ』に暖かい応援のメッセージを書き込んでくださる皆さんのおかげだと、心から感謝しています。どうもありがとうございます。そして、Aerospace MBAが日本に帰国するまであと2ヶ月半、最後の最後まで『宇宙航空MBAブログ』をどうぞよろしくお願いします。

さて、ブログ開設1周年記念ということで、昨年の8月14日に掲げた当初目標を達成できているかどうか、ここで少しだけ自己評価してみたいと思います。昨年の今日、このブログの第1号の記事として掲げた目的は以下の3つでした。

 目標①:ヨーロッパ宇宙航空ビジネスの最善線をレポートする
 目標②:AerospaceMBAコースの最前線をレポートする
 目標③:フランス生活のリアリティをレポートする

客観的にQuantitive(定量的)な分析をしてみると、この1年間に書いた365の記事のうち、①の『ヨーロッパ宇宙航空ビジネスの最前線』の記事が54、②の『Aerospace MBAコースの最前線』の記事が201、③の『フランス生活のリアリティ』の記事が63という状況です。もちろん、最多記事数を誇るMBAというカテゴリーの中にも、ヨーロッパ宇宙航空ビジネスに的を絞った記事やフランス独特のマネジメント観などについて述べた記事もあったと思うので、単純に記事数だけでこのブログの評価することはできないと思います。

その他、僕の食事の好みに関するあまり意味のない記事もいくつかありました。最近始まった「インターンシップ」というカテゴリーでは、僕のATR社での日々の勤務をリポートしています。とにかく、僕のフランスでのMBA留学体験を日本の皆さんと共有できるよう、リアルタイムな情報発信を一番に心掛けてきました。

あとは皆さんがこの『宇宙航空MBAブログ』を読んで3つの目標が少しでも達成されていると感じていただけたならば、僕としてはこれ以上の励みになることはありません。品質とは常に顧客からのフィードバックによって向上させられるものなので、ぜひコメント欄に皆さんの率直な感想を書いていただければ幸いです。

皆さんからの意見を真摯に受け止め、今後とも『宇宙航空MBAブログ』の価値を最大限に高められるよう、僕としてできる限りの努力していきたいと思います。

最後に、この1年間で見つかった『宇宙航空MBAブログ』の新たな目的を、一つだけ自信を持って付け加えたいと思います。

目標④:一人でも多くの人をこのAerospace MBAコースへと導くこと

この1年間本当にどうもありがとうございました。あと2ヵ月半、どうぞよろしくお願いします。

2007年8月14日
Aerospace MBA

(写真は今年のパリ航空ショーのレセプションで気付いたら撮られていた一枚)
 

パーク・アンド・ライド

2007年08月13日 | フランス
初めてトゥールーズのMetro(地下鉄)に乗ってみた。ヨーロッパの一部の国では既に主流になりつつあるPark&Ride(パーク・アンド・ライド)というコンセプトを体験してみようと思ったのだ。

パーク・アンド・ライドというのは、市内中心部まで車で乗り入れるのではなく、まず郊外にある駅まで車で行き、駅にある駐車場に車を停めて、そこからは公共交通機関を利用して市内中心部へ足を踏み入れる新しい移動の仕方だ。簡単に言えば、自家用車と公共交通機関のハイブリッド型移動手段ということになる。

このパーク・アンド・ライドのメリットは、①環境への負荷の軽減と②市内中心部の混雑緩和の2点にあると言われている。メトロ(地下鉄)やトラム(路面電車)というのは、乗客一人当たりを運ぶのに必要なエネルギー量や二酸化炭素の排出量が、自家用車に比べて格段に低い。ガラガラで走るどこかの国の地方公共交通は別として、多くの人がメトロやトラムを利用すればするほど、その社会は地球にやさしい社会だということになる。

加えて、市内中心部を走る車の数そのものを減らすことで交通渋滞を緩和し、歩行者にとって歩きやすい町を実現することもできる。さらには、渋滞時のアイドリングで発生するムダなエネルギー消費さえも削減してくれる、一粒で何度もおいしい政策なのだ。

環境先進国と言われているドイツやオランダでは、すでにパーク・アンド・ライドが法制化されている市や町もあるらしい。これらの場所では、原則自家用車で市内中心部に乗り入れることができず、町中が歩行者天国のようになっているのだ。もちろん、環境に負荷を与えない自転車での乗り入れはOKだ。

僕の住むフランスのToulouse(トゥールーズ)では、このパーク・アンド・ライドはまだメジャーにはなっていない。そもそも、フランスという国は環境意識の高いヨーロッパにありながら、原子力発電の無限のエネルギーに頼りきっていて、環境にやさしい行動をしよう!という意識が低いと僕は思う。ゴミの分別にしたって日本よりはるかに大雑把で“ラク”だ。ヨーロッパの人は皆環境にやさしい、と考えている人がいたら、それは間違いだと思ったほうがよい。ドイツやオランダや北欧諸国での話だと思ってほしい。

僕は今日パーク・アンド・ライドというコンセプトを実践してみて、これは本当に素晴らしい社会システムだと実感した。あらゆる地域に公共交通網を張り巡らせるには莫大なコストがかかるし、社会資本のムダ使いだと思う。しかし、地域の核となる郊外の町の駅に大規模な駐車場を作り、皆がその駅から市内中心部まではメトロやトラムを使ってアクセスすることにすれば、路線数は少なく、かつ、安定した大量のトラフィックが発生する社会交通システムを作りあげることができる。これは、現在は赤字覚悟でメトロやトラムを運営することを強いられている地方自治体にとって非常に魅力的な話だと思う。経営が安定するのだ。

皆さんも一度パーク・アンド・ライドを実行してみてください。不便さとラクさが絶妙にミックスされていて、とてもいい感じです。

(写真はトゥールーズに新しく開通したメトロのホーム)

モンペリエ

2007年08月12日 | フランス
 
週末を利用してMontpellier(モンペリエ)という町へ行ってきた。トゥールーズから地中海に向けて車を走らせること約3時間、海からちょっとだけ内陸に入った町だ。地中海沿いの町というイメージがあるモンペリエだけど、直接モンペリエの町からは地中海を眺めることはできない。

モンペリエに来たのは、ATR社で同じくインターンとして勤務しているドイツ人の学生から、とても穏やかで美しい町だという話を聞いていたからだ。彼女はモンペリエビジネススクールで学び、MBA取得のための最後の総仕上げとして、今僕と同じようにインターンシップをしている。

なお、本社の3階にあるMarketing(マーケティング)部門で勤務している僕と違い、彼女は2階のFinance(ファイナンス)部門で勤務している。仕事上の直接繋がりはあまりないものの、カフェ休憩の時間に親しくなって互いによく話をするようになった。元ドイツ銀行に勤務していただけあって、ファイナンスの知識はすごい。話をしていてとても勉強になる。

話をモンペリエに戻すと、確かにこの町は整然としていて美しいのだけど、町の中には見るものがあまりない、というのが僕の正直な感想。町の中はトゥールーズ以上に一方通行が多く、中心街にある観光案内所に到着するまでに、僕はモンペリエの町をグルグルと3周も回ってしまった。

僕の車にはGPS搭載のカーナビゲーションが付いている。フランスに来て3日目に購入したので、それ以降でフランスの道に迷った記憶はあまりない。なので、カーナビ搭載にも拘らず僕を迷わせてしまうモンペリエの町のすごさが分かってもらえると思う。

モンペリエの町で迷っている最中に考えたのは、今ヨーロッパはアメリカのGPSシステムに対抗してGalileo(ガリレオ)計画という独自の衛星測位システムを構築しようとしているのだけど、GPSより精度の高いシステムを目指したところであまり意味はないのではないか、ということだ。少なくともカーナビ利用に関する限りは、少しくらい位置情報の精度が高くなったところで、この一方通行だらけの迷路のようなヨーロッパの町で迷わないわけがない。

そんなことを考えながら観光案内所に到着すると、目の前を信じられないくらいカラフルな電車が通った。ビックリして思わず写真をとってしまったのだけど、なんとこれは市内を走るTram(トラム:路面電車)なのだそうだ。これが芸術の国フランスのセンスなのか!とちょっと感心。

広告たっぷりの日本の路面電車との品格の違いを感じた瞬間だった。『国家の品格』というのは、こういうところに表れるのかもしれない。

(写真はモンペリエの町を走るトラム)