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宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

経験曲線

2007年03月31日 | MBA
 
技術のコスト見積りついて、Airbus(エアバス)社の航空機開発を例に取りながら2日間にわたって紹介してきたのだけど、最後に長期的なコスト予測に関して重要なコンセプトをもう一つだけ紹介したい。Experience Curve(エクスペリエンス・カーブ:経験曲線)と呼ばれるコンセプトだ。

これは、時間の経過とともに事業経験が蓄積され、結果として事業の遂行に必要なコストは次第に減少するという考え方だ。例えば、航空機の製造でいえば、100機目の航空機を製造するのに必要なコストは、1機目を製造するのに必要なコストよりもはるかに安くなるということだ。

これは基本的にどんなビジネスにも当てはまる。1回きりの単発ビジネスは例外として、たいていのビジネスを成功に導くためには、この経験によるコスト削減効果を最初から見越したPricing Strategy(価格戦略)を練ることが大切だ。かかったコストの全てを価格に反映させていたのでは、特にビジネスの最初の段階では、顧客の関心を引き付けることさえできないだろう。

最初の1機目、2機目の販売時点では、コストが売上を上回って損失が発生してもいい。100機目、200機目、300機目を販売した時点において、トータルにProfit(利益)が確保されていれば、それでビジネスとしては十分成功なのだ。

このように、あえて実際のコストよりも低い価格をつけて顧客への浸透を図る戦略のことを、Marketing(マーケティング)専門用語でPenetration Price(浸透価格)と呼んでいる。長期的な観点でビジネスを成功に導くためには、どうしてもそのメカニズムを理解しておくべきコンセプトだ。

すなわち、Cost(コスト)=Price(価格)ではない。Value(価値)=Price(価格)なのだ。

新技術を使った新ビジネスでは、決してこの判断を誤ってはいけない。

(写真は航空機製造における経験曲線の例)
 


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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Experience Curveかぁ・・・ (ひつじ)
2007-04-02 14:33:21
Experience Curve(エクスペリエンス・カーブ:経験曲線)と呼ばれるコンセプト。
すごく大事なことだなと思いました。

製品と言う形で目に見えるものはもちろん、目に見えない業務をこなしているときでも、その「人」のExperience Curveと言うものも有るんじゃないのかなと思いました。自分自身も漫然と働くのではなく、
Experience Curveを描きながら仕事をしたいし、
人生経験、と言う意味でもExperience Curveがえがけたらいいなぁ~と思いました。
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Experience (AerospaceMBA)
2007-04-02 21:00:29
>ひつじ さん
コメントありがとうございます。
目に見えるものはTangible Asset(有形資産)として評価しやすいのですが、目に見えないIntangible Asset(無形資産)は価値評価が難しいですよね。
それと、経験は時に正しい判断のジャマをすることがある。MBAに来て、経験豊富な年上の生徒ほど過去の経験に縛られて柔軟な意思決定ができない傾向があることに気付きました。経験を重ねるに従って、ちゃんと自覚して気をつけていきたいですね。
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