
エアバスA380の組立工場に見学に行ってきたので今日はその紹介を少し。
前に少しだけ書いたように、A380はエアバス社が誇る最新鋭の巨大旅客機だ。すべての座席をエコノミークラスにすると一度に800人以上もの乗客を乗せることができる。ただし、現時点における航空会社からの注文の中で最多なのはエミレーツ航空(アラブ首長国連邦)の650席で、ほとんどの航空会社では3クラス仕様(ファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラス)の550席とするのが平均だそうだ。
総2階建ての旅客機だけあって、とにかく予想以上に大きい。こんなものが本当に空を飛ぶのかと思ってしまうほどだ。(写真参照:本当に飛んでます!)
今回訪問したトゥールーズの組立工場は、A380のためだけに特別に建てられたものだ。とにかく飛行機だけでなく、工場もデカイ!サッカーコートだと20面にも相当する広さだ。
さらには、最新の理論に基づいた合理的なデザインがなされていて、全ての作業者が基本的に10歩以内で作業が完了するように各ラインが構成されている。とにかく、大きくて広くてスマートな工場なのだ。
そしてここにはヨーロッパ中からA380の部品が運ばれてくる。主翼はイギリスから、胴体はドイツから、尾翼はスペインからといいった具合だ。
特に翼は巨大なので、イギリスの工場から船に乗せてボルドーの近くまで海上輸送したあと、今度はトゥールーズへ向けてガロンヌ川を川上輸送する。そして最後は特殊な巨大トレーラーを使ってトゥールーズの組立工場まで陸上輸送するのだそうだ。
驚くべきことに、フランス政府はこのA380の主翼を陸上輸送するためだけに新しい道路まで作ってしまった。このプロジェクトに対するフランス政府の力の入れようが伺える。
僕が組立工場を訪問したこの日も着々とA380の組立は進んでいた。報道では製造計画の遅れによりエアバス社は経営危機に陥っているといった見方もあったが、僕が見た限りでは悲壮感に溢れて作業しているような様子はなかった。
まだ組立途中のA380の機体の上で、すでに受注済のシンガポール航空、カンタス航空、エミレーツ航空などのエンブレムが誇らしげに輝いていた。
この巨大な飛行機が商業フライトとしてデビューするのは、2006年末の予定だ。その最初の航空会社となるのは、シンガポール航空らしい。
その来るべき日に向けて、今日もトゥールーズ上空をテストフライトで旋回するA380なのでした。
日本でも見られる日がくるのかな。乗ってみたいです。
コメントありがとうございます。
エアバス社については今度CEOにお会いできることになったので、いろいろ聞いてみようと思っています。
しかし、日本で半官半民というと第3セクターを思い出してしまいますが、エアバス社が政府出資を受けて事業を展開しながらもアメリカのボーイング社を凌ぐまでに成長した秘訣を、僕はさぐってみたいと思っています。
宇宙航空分野の開発事業に対する政府の補助は、一体どの程度であれば最も効果的かつ効率的となるのか。僕がこのヨーロッパ(特にエアバス社)から学んで帰りたいと考えているテーマのひとつです。
「プロジェクトを進めていって問題が発生したときにそれをどういうプロセスで前段階に立ち戻ってやり直すのか」と言うことです。つまり設計、製造、試験が進んでいく中で審査をしつつ進めていくのでしょうが、審査結果OKだった設計を実際に製造&試験してみたら問題が発生したときにはどういう手続きを取るんでしょうね。
フルデジタルエンジニアリングで試作初号機=完成機で大量受注済み、というA380が今置かれている状況を生んだ理由の謎が少しは理解できるのかと。
正直に言って電気系統の製造性の問題だけなら正式リリースを遅らすのはどう考えても変ですし、任天堂DSを見習って欲しいもんです
このところToulouseではA380の更なる製造遅延が問題になってますね。これが3度目の遅延であること、新たなコストカットと製造(過程?計画?)の見直しなどを考えているようだと報じているメディアもありました。
大型機需要に応えるためのA380ですが、技術的ハードルを事前にどのように見積もり、実際の製造時にどのような問題が生じ、それをどのように解決しようとしているのか、僕も興味があります。ぜひCEOに鋭い質問をぶつけて、聞き出してきてください!
コメントありがとうございます。
エアバスCEOに会った時に時間があれば質問してみますね。ただ、CEOはエンジニア出身かどうか定かではない(たぶんセールス系だったような)ので、システムエンジニアリング的な回答があるかどうかは分かりません。
A380は巨大旅客機であるがために機体内部が広いことがウリなのですが、その反面、顧客はこの広い内部を使って独自のサービスを展開しようといろいろな注文をつけてくるのだそうです。そんな予想外(?)の顧客の要望に対応するための納期遅延だとエアバス社は言っていますが、それも含めて最初から“顧客の真の要求とは何か?”を読みきるのが本物のシステムズエンジニアリングのプロですよね。
>Twinsまあ さん
コメントありがとうございます。
技術的ハードルを見積もる前に“顧客のハードル”をしっかり見積もることが出来なかったことが今回のトラブルの原因ではないかと僕は思っています。
しかし発生してしまったものはもう仕方ないので、これからどうやってCEOが状況を打開するのか、本当に見物ですよね!
僕もまたエアバス社の工場に行ってみようと思っています。でも、“遅れを取り戻すために必死に働くフランス人労働者”なんて100%いないでしょうね。日本人なら24時間フル稼働で頑張るところですが。