アドバンスカレッジ2005~目指せ!憧れのスポーツビジネス界~

スポーツビジネス&スポーツマネジメントを学ぶ学生に贈る。

競技もビジネスも基本が大事ー現象・結果・原因の客観的把握ー

2014年10月31日 | Weblog

 

近年、プロ野球では「企業スポーツ的体質」からの脱却が急激に進んでいるように思います。

ここでいう「企業スポーツ的体質」というのは、

チーム運営に関するコスト意識や売上拡大意欲の希薄さを意味し、

いわゆる「スポーツだけやってりゃいいんでしょ」的ビジネス軽視文化を指します。

 

きっかけは2004年のプロ野球再編問題(とその背後にある親会社の業績悪化やもの言う株主からの要求、会計制度の変更などもありますが)です。

これを機に、一部の既存球団と新規参入球団が「球団の独立採算に向けたビジネス強化」に真剣に取り組むようになりました。

 

念のため、それ以前のプロ野球運営について簡単に説明します。

1936年から開始した日本職業野球連盟(現NPB)ですが、

元々各球団は親会社の販売促進の意味合いを強く持った形で生まれました(新聞社と電鉄会社のマーケティング客体と言っていいでしょう)

そもそも企業スポーツ的体質が組み込まれたいたわけです(これも一概に悪い事とは言えません。むしろ当時この仕組みに気づいたセンスが凄い)。
 

戦後の混乱や度重なる危機もあり、昭和29年には各球団に対し国税庁通達が出されました。

これは球団の赤字を親会社が広告宣伝費として期末に補填する事を国税局として認めるというものです。

これによって、赤字を前提とする球団運営のあり方が定着してきました。

(まあ、この制度がなければ今のプロ野球はとうの昔に消えていたので、一概に悪しき制度とは言えません。)

 

この通達が球団単体の独立採算に向けた意識を著しく低下させた事は間違いありません。

端的に言えば、「どうせ赤字を出しても親会社が補填してくれるんだから、とりあえず競技だけ頑張っとけ」的文化が形成され、

ビジネス軽視(というより無視?)の親企業依存型企業スポーツ的体質が定着したということです。

 

事実、1960年代には、当時のプロ野球運営がビジネスの体をなしていない事が球団内外から指摘されています。

例えば、共同通信運動部記者であった鈴木陽一氏は1961年発行の中央公論76(1)において

グランド・パパの初笑い--プロ野球という「赤字」の企業」という記事を発表しています。

(この他にもプロ野球の球団経営に関する鋭いツッコミ記事がいくつかあるのでCiNiiで検索してみてください)

また、東映球団のオーナーであった大川博氏も、1964年発行の中央公論79(2)掲載の「プロ野球経営学」という記事において

赤字ありきの球団運営の幼稚さや、親会社への依存ムードが球界内に万円していることを指摘しています。

 ※プロ野球運営のあり方に関する歴史的背景と考察は、
   拙稿「わが国のプロ野球におけるマネジメントの特徴とその成立要因の研究」(立命館経営学49(6), pp.135-159, 2011)をご参照下さい。

 

この頃から時が流れ早50年以上。

やっとプロ野球の独立採算化に向けたビジネス体制の強化が浸透してきた事に

「長すぎだよ・・・(絶句)」と思うと同時に、

「お、来たきた、来たよ~~~~!」とテンションも上がります。

事実、観客動員の向上に向けたアプローチは活発になっていますし、結果も出ています。

プロ野球観客動員数、広島とオリックスが大幅増(日経新聞2014年8月22日付) 

 

で、更に最近はパリーグ球団やDeNAの具体的取り組みに関する記事がネット上で紹介されています。

オリックス・バファローズはいかにファン会員データを“宝の山”に変えたか」(ITmedia, 2014年9月26日)

仕事をしたら“ファン”が増えた:過去3年で42%増! 横浜DeNAベイスターズのファンが増えている理由」(BusinessMeadia誠,2014年10月22日)

なぜDeNAの観客数は3年で30%伸びたのか 横浜DeNAベイスターズ・池田純社長に聞く」(東洋経済ONLINE,2014年10月31日)

 

これらの記事を読んで思う事。

それは、

「ビジネス上特別の事をやっている訳でなく、大学の講義で習うような基本中の基本をしっかりやっている」

っちゅう事です。

考え方として、

「赤字はダメだよね」

「そうなると自力で稼ぐためにはチケットを売っていかないとダメだよね」

「じゃあ、どんな人がチケット買って観に来てくれているんだろうか?」

「あ、データがないや!!(これで今までやってきたのがある意味衝撃的w)」

「じゃあ、データ取って分析してみようか!」

「あ、こんな人達が多いんだ!ここに焦点あてて何かやってみっか!?」

「上手く行った!けど、上手く行かなかったのもある。だから反省してもう一回トライしようぜ!」

って事がグルグル回っているだけですよね。

 

そう、単に黒字を出す為に現状把握をし、マーケティング上のPDCAサイクル回しているだけです。

データ分析の技術やイベントのアイディア云々はそうした土台の上にある訳で、

大事なのはやっぱり基本。

 

一流選手が基本を毎日繰り返しチェックするように、

ビジネスも成功する為には基本の確認が必要なんですね!

 


プロスポーツの非競技的価値訴求ーアルビレックス新潟後援会との協働プロジェクトー

2014年10月30日 | Weblog

スポーツビジネスに対する注目が高まっている事から、

近年ではプロスポーツの単なる競技的価値のみならず、経済的価値にスポットライトが当てられています。

例えば、世界的な会計企業であるデロイト社が毎年発表する「Football Money League」なんかがその代表で、

調査結果は世界中を駆け巡ります。 

Deloitte Football Money League 2014 - All to play for  

最近だとブンデスリーグの堅実経営に基づくビジネスの拡大なんかが成功事例として知られているところです。

 

確かにスポーツマーケティングやスポーツビジネスを学ぶ人間としては、

この経済的価値に注目するとともに、競技的価値との相関などにも注意を払わねばなりません。

(シマンスキーなどが示したように、クラブの成績と売上との間には強い相関があります)

 

しかし、しかしですよ。

単に「強くて儲かっているか」に注目するだけでは無味乾燥ですよね。

何故かって?

それは「強さ」と「儲け」の二つを支える存在にこそ、プロスポーツの持つもう一つの価値が含まれているからです。

 

プロスポーツクラブの「強さ」と「儲け」の源泉たる存在とはなんでしょう?

皆さんご存知の通り、答えは「ファン」であり、「コミュニティ」です。

 

そもそも生活必需品とは言えないスポーツを熱狂的に支持するファンやコミュニティがなければ

クラブは存在はもちろん、発展する事はできませんよね。
(スポンサーも重要ですが、それはファンやコミュニティの支援があるからこそです。) 

 

じゃあ、クラブや研究者が取り組む問題解決の方向性として、次のものが重要になるのではないでしょうか?

「なぜファンやコミュニティはプロスポーツクラブを支持するのか?」

「彼ら彼女らの人生や、地域の文化の中に、プロスポーツはどのように組み込まれているのか?」

 

これらの問いを探求しつつ、マーケティング的には

「クラブがある豊かな人生」

「クラブと地域のとの有機的な繋がり」

こんなものを訴求した方がいいのではないでしょうか?

 

「勝敗によらないクラブとファン、コミュニティとの絆作り」。

これが「スポーツで、もっと、幸せな国へ。」というJリーグ百年構想の土台になるのではないでしょうか?

 

そこで私たち新潟経営大学福田ゼミは、アルビレックス新潟後援会様と協働でこんな映像作品を作ってみました。

 みんなでつなぐ「アイシテルニイガタ」作戦!映像第1弾!

 

恥ずかしがり(新潟弁で「しょしがり」というそうです)の新潟県民がこんなに堂々と人前で「アイシテル」だなんて。。。。

なんて素晴らしいんだろう!

これがアルビレックス新潟の力なんでしょうね。

皆さん、いい表情で表現されています。

 

この他にも、アルビレックス新潟ではクラブを支える後援会をフックとして、

ファン・サポーターとクラブとの絆作りを展開しています。

アルビレックス新潟後援会~ホームゲームイベントの1日~  

 

クラブが街に存在する事で人生が楽しくなり、その輪が地域に広く伝わる。結果、街全体が元気になっていくー。

そんな好循環を生み出す土台になる事。

これがプロスポーツクラブの真の存在価値だと私は思います。

 

きっとそれが上手く行ったとき、クラブは社会的価値を土台に経済的価値と競技的価値をも手にするのではないでしょうか。

小さな一歩ですが、プロスポーツが持つ社会的価値の記録と配信を活動の中心にすえ、今後も我がゼミは頑張っていきます!