アドバンスカレッジ2005~目指せ!憧れのスポーツビジネス界~

スポーツビジネス&スポーツマネジメントを学ぶ学生に贈る。

球界のアンバランス

2010年04月28日 | Weblog
2010年度のプロ野球選手の平均年俸が選手会から発表されました。
その額3830万円。
80年の調査開始以降、最高額を記録。
リーマンショック以降、プロスポーツ界は親企業の業績不振や
スポンサー離れ、チケット売上の低下などのマイナス面も多くみられる中での報道。
毎日新聞

出来高分が含まれていないので、実際はもっと高い数値になるでしょう。
トップと下位との差は2.5倍ほど。
戦力格差が大きくなっているようです。

下位球団には2つの方法があります。
1つ目は「セイバーメトリクス」を用いた安くても勝てる選手の起用。
2つ目は「マーケティング」による売り上げの拡大。
特にスタジアムの集客率にはまだまだ改善の余地があります。
現場とフロントが目標をすり合わせ、互いに協力し、改革を推し進める必要があります。

しかし、各球団での努力に限界があるのも事実。
NPB全体として「野球の試合」という商品をどのように定義づけるのか―。
それに従ってどのようにリーグマネジメントのシステムをデザインするのか―。
これが大きな課題です。

アメリカプロスポーツはリーグを一つのブランド、商品と定義付けており、
自らを「エンターテイメントビジネス」に位置付けているものが多く見受けられます。
したがって、試合という商品価値を高めるためには
「拮抗した戦力」による「白熱した試合」が必須であるという認識が浸透しています。

これを達成するための仕組みとして、クローズ型のリーグシステムのもと、
1.サラリーキャップ
2.ウェーバー制ドラフト
3.リーグによる収益の吸い上げと分配
などがシステムとして存在し、機能しています(NFLやNBAが顕著ですね)。

一方、欧州のサッカーではオープン型のリーグシステムのもと、
各クラブの自由競争が繰り広げられています。
トップと下位の収入差は拡大し、現在は各国リーグのトップクラブによる
チャンピオンズリーグが人気を博しています。

つまり、リーグと各球団・クラブを運命共同体と捉え、
互いの繁栄に関する事務処理や意思決定を中央(コミッショナー)に預けているのがアメリカ。
リーグではなく、各クラブの裁量の幅が広いのが欧州。

NPBはアメリカのクローズ型リーグの下、
欧州型の自由競争が各球団で繰り広げられているという形になっています。

今後選手年俸が球団経営を圧迫し続ける中、
どのようにしてリーグ全体で売り上げを伸ばし、
それを各球団に分配するかが大きなポイントになりそうです。
実際にパリーグでは6球団合同の「パシフィックリーグマーケティング」が
ビジネスを行い、パ・リーグ全体の経営効率化や売上増加に向けて取り組んでいます。

要はNPBをどのような存在・商品として成立させ、世にアプローチしていき、
持続的な発展をシステム化させるかが問題です。
日本企業を取り巻く経営環境が激変して約20年。
各球団個別の経営改革は注目されるようになってきましたが、
根本的なリーグの理念やシステムを構築することが必要です。

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大坪 正則
朝日新聞社

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さすがオレ流!!

2010年04月28日 | Weblog
昨日の中日ー巨人戦でのこと。
落合監督が主審の体調不良を悟り、交代を促しました。
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2010/04/28/04.html

今月・巨人木村コーチが試合前に倒れ、
残念ながらそのまま帰らぬ人になってしまった事例が発生。
球界全体が選手・コーチの健康管理を重視している中、
マスクをかぶっている球審の様子にまで目配りした落合監督は流石です。
(もしくは他の中日選手やコーチが気が付いたのかもしれません)

木村コーチの悲しい事例を引き起こさぬよう、
早速球界では「教訓」が活かされています。
広い視野、関係者を想いやる気持ち、流石オレ流!!

サマランチ氏の逝去に思うこと

2010年04月21日 | Weblog
IOCで長らく会長を務めたサマランチ氏が逝去されました。
89歳、故郷バルセロナにて。

近代五輪誕生以降、70余年の長きに渡って世界のスポーツを縛り付けてきた
アマチュアという鎖は幾多の議論と闘争の末に打ち破られました。
「ミスターアマチュア」第5代ブランデージ氏の後任で、
スポーツにおけるプロ化を容認したキラニン卿の流れを引き継ぎ、
その後の「スポーツマーケティング」誕生の礎になったのがこのサマランチ氏。

1984年ロス五輪における「スポーツビジネス元年」では
ユベロス大会組織委員長が賞賛されることが多いのですが、
そもそもIOC会長がそうしたビジネス化への取り組みを容認しないと
生まれなかったことです。

サマランチ氏とユベロス氏の出会いは偶然か必然か-。
その答えは分かりませんが、ロス五輪での成功がなければ
今のスポーツ界はどうなっていたのでしょうか。

ひょっとしたらJリーグは生まれなかったかもしれないし、
欧米のプロスポーツも今日のような規模には発展していない可能性も。
大学にはスポーツマネジメント系の学部・学科は存在していない・・・。

スポーツのビジネス化は明るい部分だけではなく、
暗い一面もあることを忘れてはいけませんが、
我々が受けた「恩恵」は計り知れないものがあったと思います。

スポーツビジネスに携わる者として、
サマランチ氏以前と以後を押さえつつ、
今後我々が果たすべき貢献を考えるいい機会かもしれません。

ご冥福をお祈りします。

オリンピックはなぜ、世界最大のイベントに成長したのか
マイケル ペイン
グランドライン

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自分のキャリアまで壊す可能性―ベンチ破壊事件―

2010年04月16日 | Weblog

今月14日の試合に登板し、試合を作れず途中交代を言い渡された
ソフトバンク・神内投手が降板直後にベンチを破壊。
球団から同投手に対してベンチの補修費用7万円を自己負担することと合わせ、
厳重注意が告げられました。
ホークスプレスリリース

よほど悔しかったのでしょう。
商売道具のグラブまで投げつける始末。。。

スポーツマンとして、子ども達の見本としてあるまじき・・・云々という指摘が多数。
確かにその通りです。
これに加えて選手としてのキャリアまで破壊しかねない行為だったと私は思います。

降板直後の一連の行為は、
場合によっては「采配に対する不満」と受け取られる可能性だってあります。
そんな選手、監督は使いたくなくなりますよ。
現にJリーグでは「大宮―新潟―G大阪」間で昨年行われた移籍の結果
オレンジから青黒のユニホームを着ることとなった某外国人選手が
交代を告げられた直後の行動―着ていたユニホームを地面にたたきつけた―に
よって地球の裏側に「左遷」させられました。

幸い神内選手は厳重注意処分で済んだため、
同じユニホームを着て汚名返上するチャンスを与えられました。
謹慎期間中自らを省みて、
「自分も試合もコントロールできる選手」になってマウンドに帰ってきてほしいです。


組織における理念浸透の難しさ―プロスポーツクラブの場合―

2010年04月16日 | Weblog

本日の日経新聞朝刊スポーツ欄に興味深い記事が。
西武・楽天両球団で、選手・職員らの行動規範が文章化された「クレド」が
作成され、一人ひとりの振舞い方の基準が共有化されているという事例です。

他の業界では古くから導入されている方法です。
頻繁に紹介されるのが「ジョンソン・エンド・ジョンソン」の「我が信条」。
⇒http://www.jnj.co.jp/group/credo/index.html

要するに、企業が組織として
効率的かつ効果的に目標を達成するためには
経営資源を束ねる必要があり、
その中心となる「ヒト」の意識を統合することが重要であるということです。

「何のために」「何を基準をして」「どのように振舞うべきか」という部分で
「ブレない」ことで強い結束を生みだすのが狙いといえるでしょう。

では、何故今更プロスポーツクラブで「クレド」が必要になるのでしょうか?
それはプロスポーツクラブに求められていることや、
自らが目指すべき方向が多様化している点を指摘できます。

端的にいえば、
①勝つことは最も重要だが、それ以上の存在価値を求められるようになった。
②プロスポーツクラブにもビジネス志向が浸透してきた。
という2点に集約されると思います。

勝利は重要だが、地域社会や子どもたちにとってどういった存在であるべきか、
という部分に対する内外からの要求が高まったことが①の原因です。
つまり、「○○というチームが××という街にあってよかった!」という
勝利以外の部分での存在価値を高めなければいけなくなったということです。
(Jリーグ百年構想の影響が大きいと思います)

②に関しては親企業からの損失補てんに頼るビジネスモデルが限界を迎えており、
独り立ちに向けて自らのコンテンツ価値の源泉である「ファン」を重視する考え方が
浸透してきた結果といえます。
プロ野球界では先の球団再編問題以降、
「顧客の創造」に向けた動きが顕著になっています。
勝利以外にも試合のエンターテイメント性を高めたり、
地域でのスポーツ普及活動を行うことによって
自ら「新たなファン」を開拓しようとする動きが随所に見られるようになってきました。

上記の理由を果たすためには選手・社員の相互協力が必要です。
そのためにクラブ内の意思疎通を図り、
目指すべき方向を共有化する必要性が生じてきたのです。

しかし、プロスポーツクラブではこれが難しいのが現状。
A.選手・監督は基本的にパフォーマンス重視の単年度契約
⇒まずは自分の結果を出すことが重要。
  その他のことに対する意識が向きにくい。
  ※近年は選手の社会貢献に対する意識は確実に向上しています。
B.チームと事業部の距離の隔たり
⇒同じ球団・クラブでも「選手と社員が顔を合わせる」ことがほとんどないのが現状。
 社員が新聞やテレビで自分のチームの様子を知るということが日常なところも。

Bに関しては結構シビアな問題があります。
自分たちのコアである部分に関して情報が入ってこないのです。
選手の人となりやどういった気持で練習や試合に打ち込んでいるか、という
大切な部分に関してファンより無知になってしまうことも。

物理的に練習場がオフィスと離れているということもありますが、
クラブ・球団の職員でありながらチームとの心理的な距離が出来てしまうことが
往々にしてみられます。

クレドも重要ですが、プロスポーツクラブが組織として結合するためには
「現場と事業部が一緒にメシを食う」のが手っ取り早いと思います。

選手と社員の間で相互理解が深まれば、
互いに「何かできることがあったら手伝うよ」「この人のためにも頑張ろう」
という意識が芽生えます。

そんな単純なところから始めるのが、
実は一番手っ取り早くて効果的な「組織の統合」方法かもしれません。