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本棚の埃3 私を深く埋めて―角田喜久雄

2008年01月30日 | 本棚の埃
忘れかけられていそうな人ですが、この人の時代小説は面白いんですよ。
この人の時代小説には2つのパターンがあり、
1、江戸市中を舞台にした謎解き中心のもの
恋慕奉行、半九郎闇日記、盗っ人奉行、影丸極道帖等
2、江戸も含めた日本全国を舞台にした伝奇色の濃いもの
風雲将棋谷、妖棋伝、髑髏銭、花太郎呪文等

全体の代表作といえば「風雲将棋谷」「妖棋伝」「髑髏銭」あたりの【2】の流れでしょうし、【1】のほうの代表作はたぶん「影丸極道帖」「半九郎闇日記」あたりではないでしょうか。
物語の手綱を操る技が見事で、「影丸極道帖」「半九郎闇日記」ではラストの謎解きがミステリ小説と比べても見劣りしません。

ですが、個人的には「花太郎呪文」を推したいですね。ほらこの束の厚さ。

【2】の流れの作品ですが、一種の宗教法悦的なラストが他の作品と一線を画しています(あくまで私的な捉え方です)。

そのラストに向かうシチュエーションが「生き埋め」です。

角田喜久雄は「生き埋め」という設定がお好きだったらしく、よく出てきます。いわく「古井戸」「洞窟」「落とし穴」等、主役あるいはヒロインが生き埋めにされます。もちろん助かるのはお約束ですが、土に埋まるときの描写はときに息苦しくなるほどです。

「花太郎呪文」では「生き埋め」にされて、辛くも脱出した主人公が宗教的法悦を得て、己の生きる道を決めるというか、たんなる伝統的復讐劇で終わらない点が変わっています。

角田喜久雄は埋まっているものにも惹かれていたらしく、「東京埋蔵金考」【中公文庫 絶版】なんて本も書いています。
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2 コメント

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楽しい時間 (spin out)
2008-02-25 14:08:50
交渉している現場にはいましたけどね。
福島の、あの人がそのお店でどんな話を、どんな顔でしていたのか気になります。

意外に人気があったりして。

…絶望した!
返信する
お礼が遅くなりましてすみません。 (INUNEKO)
2008-01-31 00:06:23
先日はたいへん楽しい時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。
またこちらも更新されているので、ご無事にお帰りと推察安堵しております。
ところで、我々以外の人はあの後もっと楽しい時間を過ごされたようですよ…絶望した!(使い方も知らずに使ってみました)
次回はそのへんリベンジさせていただきましょう。
ではまた。
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