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チラシの裏

四つの凶器 その2

2019年12月29日 | JDカー
■そして、旧訳者には申し訳ないけれど、
「四つの凶器ってこんなに面白かったのか」と改めて見直すほど、
訳文の力が大きいことを教えられたね。

★旧訳だと、会話の途中でときどき誰が誰だかわからなくなるときが……

■カーの原著でも、もしかしたらちゃんと書き分けていない可能性もあるし、
筋とキャラを読み込んだうえでの描き方がカーと以心伝心じゃないかと思えるほど。
成り上がりの莫連娼婦、お転婆娘と脳筋男のカップル、
過去に訳ありで苦労人の支配人、名探偵気取りの勘違い新聞記者などなど。
今作はド・ロートレックがキーパーソンで、
かれをどれだけ厭らしいキャラに描くことができるか、がポイントかな。

★貴族の出身だけど金欠でケチ、
短気で尊大だけど射撃の腕前はなかなかのもの、という、
おあつらえむきの悪役ですね。
バンコランでさえピストルの決闘は遠慮したい、とまで言わせてました。

■後年の歴史ものならば、クライマックスで主人公と一騎打ちするようなキャラクターだね。

★カーの諸作で、「ド・なんとか」みたいな名前のキャラクターが出てきたら
注意せよ、ということですか。

■しかし、ミステリとしては、バンコランの謎解き(言い訳)が長すぎる。

★「一角獣の殺人」でのHM卿なみの長さでしたから。

■プロットが複雑すぎて物語の中で伏線を回収しきれずに、
バンコランの憶測と長広舌で説明するしかない。
これがカーの残念なところだな。

★バンコランがこれ以降起用されないのも残念ですね。おもしろかったのに。

■バンコランものは、複雑なプロットを持つべき、とカーが考えていたのではないか。
「三つの棺」も最初はバンコランものとして構想され、
実際に途中まで書かれていたそうだし。
「蝋人形館の殺人」「四つの凶器」も良し悪しはともかく、
複雑なプロットを持っている。
しかし、カーの作風がちょうどこのあたりから、
シンプルなプロットでいかに読者を欺くか、に変わりつつあったので、
起用が見送られたのではなかろうか。

★またもや、路線変更の犠牲になったわけですか。
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