手術室では、人工呼吸器のボォーンという音と、
生体モニターのピコッピコッという音が、周期的に響いていた、
親父の手を握ると温かかった。
少し、握り返して来たような感じもした。
医師の説明では、心拍数はあるもの、
心臓は組織としては止まっていて、
人工呼吸器によって、動いており
細胞がわずかに微動している状態だと説明があった。
時々、生体モニターの心拍数が「0」になって、
警報アラームが鳴りいよいよかと思うシーンがあったが、
再び、何も無かったかのように心拍数が上がってくる。
そんな事が繰り返えされた。
よく、テレビドラマで心拍数が0になって、
人が死ぬシーンがあるが、あれは嘘で、
心拍数が0になっても、その状態が15分ほど続き、
体の各細胞が反応しなくなるまで、人の死を確認することはできない、とう事を知った。
実際、親父も5回くらい、心拍数が0になった後に、
心拍数が上がってくる問い事を繰り返した。
俺はまだ生きてるぞ。元気だせ。
そんな、親父の声が聞こえるような気がした。
おかげで、この時間は、親父とお袋と、
ゆっくりと過ごすことができた。
そんな時間が2時間くらい続いただろうか?
親父の心拍数もとうとう戻らなくなった。
医師が、心臓の音や、瞳孔の反応が無いのを確認した。
11月12日 12時12分
「ご臨終です。」と医師から告げられた。
それでも、なお、親父の体は温かかった。