暇つぶしに、夜トライショ-に乗ってキャバレ-というか、バ-というかそういう店に行った。赤茶けたトタンぶきの家。オ-ドブルと称してスイカが出たが、それはこの店のトイレ横で、お店のお兄さんの真っ黒な手のひらに乗っけてきってきたものだ。ビ-ルは氷割りで、氷が菌だらけで一番危ない。裸電球の店では顔もうっすらしか判らぬ若い女の子たちと乾杯で失礼したが、勘定はボリボリで5千円。5百円あれば、一家族1年分の米代だという。これは写真のチャンパ寺院遺跡を訪れた時、近くの小さな兄弟にせがまれて何気なく渡した小遣いの額。渡した紙幣をにらみと何回となく管理人の顔を見て、家に向かってひたすら走り去った。それを見たサイゴンから同行しきた大学教授が、金額の大きさと明日から起こる兄弟の悲劇を説明してくれた。もう、水汲みの手伝いはなく、遺跡を訪れた異国人には執拗にせびる更に厳しい仕事の毎日となろう。
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悲惨な敗戦で子供は米兵にチョコレートをせがみ、飢えた女は身を売ったのはついこの前のこと。
人間は記憶は忘れるように出来ているとか聞くが、忘れるから歴史から学べないのかも知れない。
戦争もまた繰り返されるのか。
とはいうものの小遣い貰った彼らはその日の糧にも困っている状態だったかもしれない。とりあえずは、餓死しないで済むということも言える。
もっともらしくいう大学教授の言は正しいかもしれないが、理屈や言葉だけでは多くの場合は人を救うことにはならない。今水におぼれようとしている人が居れば助けるのが人の道なんだろう。