(1999/フォ・ジェンチイ監督/トン・ルーチュン、リィウ・イエ、ジャオ・シィウリ/93分)
これは、出来ればチャン・イーモウで観たかった。
中国湖南省の山間部で郵便配達をする男性が重労働ゆえに膝を痛め、その息子に仕事を引き継ぐという話。山水画に着色したような映像が美しい。冒頭に、これは1980年代初頭の話であるとスーパーが流れる。
一度家を出ると2泊3日の行程で、約220キロを歩く。映画ではそんなにハードには描かれていなかったが、一日70キロ以上というとんでもない計算になる。バスもなく、自転車さえも使えない、そんな山道を重い郵便物を担いで奥地の村々に届け、受け取っていく旅だ。
初めて息子が配達に出かける朝から映画は始まり、折々に彼のナレーションが入る。父親は必要な引継はしたので自分は行かないつもりだったが、いつも配達について行く愛犬が息子について行こうとしないので、仕方なく父親も出かけることになる。親父(おやじ)と息子と愛犬という初めての旅。この犬は次男坊と呼ばれていた。
これもロード・ムーヴィーですな。
留守がちな親父(おやじ)に恐いイメージを持っていた息子は、父親を“お父さん”と呼んだことがない。怒られたことはないが、何故か親しみを感じたことがなかった。そんな親子が、旅を通じて心を通わすようになる。
息子は郵便配達の仕事を理解することによって親父(おやじ)を理解し、初めて3日間息子と生活を共にして父親は知らなかった息子の素顔を、また息子の話によって妻の苦労を知ることになる。
それらのエピソードが旅の途中に小出しにされ、更には父親と母親との馴れ初めの話だとか、旅先の村で息子が年頃の娘と婚礼祭りで知り合ったりという話が入ってくる。
膝が痛いという父親を負ぶって息子が川を渡る。親父(おやじ)は息子が小さい時の肩車を思い出し、息子の逞しさと優しさに涙ぐむ。
死んだ娘の代わりに苦労して育てた孫を都会の大学に出し、一人寂しく山で暮らす盲目のお祖母ちゃん。郵便配達のオヤジは、孫からの現金封筒を渡し、そこには入っていないお祖母ちゃんを気遣う手紙を孫に代わって読み上げる。『配達員がなんでそこまでしなくちゃいけないの?』と息子は言う。『いくら偉そうなことを言っても、問題はやれるかどうかだ。』
こんな具合に話はとても良いんですが、ドキュメンタリー的な部分とドラマチックに見せようとしている部分とが変な具合に混在していて、興がそがれるシーンが無きにしもあらずでした。感傷的な表現にも、天の邪鬼な私はちょっぴり拒否反応も。
もう一度書きますが、これは“出来ればチャン・イーモウで観たかった”。“しあわせの三部作”の頃のイーモウのさりげない描き方で作って欲しかった。
感覚の問題ですからねぇ。『これで良い!』という方もいらっしゃるでしょう。私には文部省推薦的な描き方もちょいと気になりました。天の邪鬼なオヤジです。(笑)
尚、1999年の中国アカデミー賞で最優秀作品賞と最優秀主演男優賞を受賞したそうです。
これは、出来ればチャン・イーモウで観たかった。
中国湖南省の山間部で郵便配達をする男性が重労働ゆえに膝を痛め、その息子に仕事を引き継ぐという話。山水画に着色したような映像が美しい。冒頭に、これは1980年代初頭の話であるとスーパーが流れる。
一度家を出ると2泊3日の行程で、約220キロを歩く。映画ではそんなにハードには描かれていなかったが、一日70キロ以上というとんでもない計算になる。バスもなく、自転車さえも使えない、そんな山道を重い郵便物を担いで奥地の村々に届け、受け取っていく旅だ。
初めて息子が配達に出かける朝から映画は始まり、折々に彼のナレーションが入る。父親は必要な引継はしたので自分は行かないつもりだったが、いつも配達について行く愛犬が息子について行こうとしないので、仕方なく父親も出かけることになる。親父(おやじ)と息子と愛犬という初めての旅。この犬は次男坊と呼ばれていた。
これもロード・ムーヴィーですな。
留守がちな親父(おやじ)に恐いイメージを持っていた息子は、父親を“お父さん”と呼んだことがない。怒られたことはないが、何故か親しみを感じたことがなかった。そんな親子が、旅を通じて心を通わすようになる。
息子は郵便配達の仕事を理解することによって親父(おやじ)を理解し、初めて3日間息子と生活を共にして父親は知らなかった息子の素顔を、また息子の話によって妻の苦労を知ることになる。
それらのエピソードが旅の途中に小出しにされ、更には父親と母親との馴れ初めの話だとか、旅先の村で息子が年頃の娘と婚礼祭りで知り合ったりという話が入ってくる。
膝が痛いという父親を負ぶって息子が川を渡る。親父(おやじ)は息子が小さい時の肩車を思い出し、息子の逞しさと優しさに涙ぐむ。
死んだ娘の代わりに苦労して育てた孫を都会の大学に出し、一人寂しく山で暮らす盲目のお祖母ちゃん。郵便配達のオヤジは、孫からの現金封筒を渡し、そこには入っていないお祖母ちゃんを気遣う手紙を孫に代わって読み上げる。『配達員がなんでそこまでしなくちゃいけないの?』と息子は言う。『いくら偉そうなことを言っても、問題はやれるかどうかだ。』
こんな具合に話はとても良いんですが、ドキュメンタリー的な部分とドラマチックに見せようとしている部分とが変な具合に混在していて、興がそがれるシーンが無きにしもあらずでした。感傷的な表現にも、天の邪鬼な私はちょっぴり拒否反応も。
もう一度書きますが、これは“出来ればチャン・イーモウで観たかった”。“しあわせの三部作”の頃のイーモウのさりげない描き方で作って欲しかった。
感覚の問題ですからねぇ。『これで良い!』という方もいらっしゃるでしょう。私には文部省推薦的な描き方もちょいと気になりました。天の邪鬼なオヤジです。(笑)
尚、1999年の中国アカデミー賞で最優秀作品賞と最優秀主演男優賞を受賞したそうです。
・お薦め度【★★★=一見の価値有り】
私は犬猫、動物系には何にも増して溜飲・感涙人間なもので・・・・。
思いっきり作り手の策略にハマってしまいました。(笑)
そっと差し出すTBケラレた拙記事↓です。
ご笑覧を。
http://blog.livedoor.jp/vivajiji/archives/50669043.html
特にお祖母ちゃんのエピソードはラストショットにウルッときそうになりました。
先日、「インテリア」が2度目のTBで届いたんですよ。こちらも出来るかな?
息子が口ずさんでいたのは当時の流行歌なんでしょうかね。
お祖母ちゃんのエピソードの、郵便配達の親子を見送るラストショットにウルッとしてしまいましたよ。
チャン・イーモウは最近の作品と、「至福のとき」「初恋のきた道」くらいしか見たことがありません。そんなに印象に残ってないけれど、やっぱり感覚の違いということでしょうか。
年代によってかなり作風の変わる人のようですが、上記の作品の頃のイーモウのタッチが好きなんです。